概要
脂漏性皮膚炎とは、頭皮、顔、腋などの皮脂分泌が盛んな部位に生じる湿疹で、患部の赤みと鱗屑(皮が剥けてカサカサとした状態)を特徴とする皮膚の病気です。脂漏性湿疹と呼ばれることもあります。
かゆみはないか、あっても軽度であることがほとんどです。皮膚に常在するマラセチア菌と呼ばれる真菌が関わり、皮脂が分解された成分が皮膚に刺激を与えることで発症すると考えられています。
脂漏性皮膚炎は、乳児期に発症する(乳児型)または思春期以降のタイミングでみられる(成人型)ことが多く、乳児型と成人型では病気の経過が異なります。一般的に、乳児型は生後2~4週頃に発症し生後8~12か月は自然によくなることが多いですが、成人型は慢性化しやすく、特に中年以降に生じたものはその傾向が強くなります。
原因
脂漏性皮膚炎の主な原因は、皮脂中のトリグリセリド(中性脂肪)がマラセチア菌などの皮膚の常在菌により分解され、その結果発生した物質が刺激となって発生すると考えられています。
また、何らかの原因で皮脂の成分・分泌が変化したり、発汗、ビタミンB2、B6などのビタミン代謝が変化したりすることも発症に関わっていることが知られています。
症状
脂漏性皮膚炎の症状は頭皮、髪の生え際、耳の後ろ、耳の中(外耳道)、眉、鼻の周り、胸、腋の下、背中の上部などの皮脂分泌が盛んな部位や、こすれて刺激が加わる部位に現れます。鱗屑と呼ばれる皮が剥けてカサカサとした病変と赤みが特徴で、フケのようにぼろぼろと落ちることもあります。
乳児と成人では異なる特徴がみられ、乳児型では生後2~4週頃から生え際や眉毛、おでこを中心に黄味がかったかさぶたや赤い吹き出物のような病変がみられることもあります。一方、成人型では頭部のフケが多くなり、場合によっては牡蠣の殻のような形状の固いかさぶたが頭部全体にみられることもあります。
脂漏性皮膚炎そのものは脱毛の原因となりませんが、悪化すると頭皮の環境が悪くなることで薄毛や脱毛につながることもあります。
検査・診断
脂漏性皮膚炎の診断は、症状の様子と症状が現れている部位に基づいて行われます。脂漏性皮膚炎に似た病気として、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、カンジダ症、ジベルバラ色粃糠疹、局面状類乾癬などの皮膚疾患があるため、これらの症状との鑑別が重要です。
特に乳児の場合は、頻度の高いアトピー性皮膚炎との鑑別が重要となります。一般的に、脂漏性皮膚炎は頭部や顔面などの皮脂分泌が多い部位にみられるため、体幹部分や手足に湿疹や乾燥がみられる場合は、アトピー性皮膚炎の可能性が出てきます。
また、脂漏性皮膚炎ではかゆみがないか弱いことが多いため、乳児がかゆみのために顔をこすりつけてくる、体をかくような動作が見られる、かきむしったような跡が見られる場合は、アトピー性皮膚炎などの別の皮膚の病気が疑われることがあります。
治療
脂漏性皮膚炎の治療は、生活習慣の改善と薬物療法があります。
生活習慣の改善
洗顔や洗髪で患部を清潔に保つことが基本です。
精神的ストレスや身体的ストレスが脂漏性皮膚炎を悪化させる可能性が指摘されていることから、生活リズムを整えて十分な睡眠を取り、ストレスを減らすことも大切です。また、脂質の代謝を助けるビタミンB群を含む食品(牛乳、レバー、ほうれん草、大豆など)を取ることも有効です。
思春期以降の脂漏性皮膚炎ではマラセチア菌の影響がより強くなるため、抗真菌薬を含んだシャンプーが使用されることもあります。
薬物療法
乳児期の脂漏性皮膚炎は症状が軽いことが多く、丁寧に洗顔を続けることで改善することがほとんどです。じゅくじゅくとした浸出液がみられる場合は弱めのステロイドの塗り薬が使用されることもあります。
成人型の脂漏性皮膚炎は慢性化しやすく、生活習慣の改善に加えて病院で適切な治療を受ける必要があります。外用剤による治療が中心で、炎症を抑えるステロイド外用剤や、マラセチア菌を抑える抗真菌剤の外用剤が用いられます。また、かゆみが強いときは抗ヒスタミン剤の内服薬が用いられることもあります。
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