乾癬は、「皮膚がポロポロ落ちる」という症状から周囲の理解が得られにくい病気で、合併症としてうつ病を併発することも少なくありません。そのため乾癬においての治療は、病気を治すだけでなく患者さんのQOL向上のために非常に重要な役割を持ちます。関西医科大学附属病院皮膚科の山崎文和先生に乾癬の治療についてうかがいます。
症状は良くなったり悪くなったりを繰り返していくため、決まった治療方針はなく、症状に応じて患者さんの状況を見ながら治療法を決定していきます。以下の治療法は同時期に2つ以上を組み合わせたり、時期をずらしたり、患者さんの状況によって変えていきます。
通常は外用薬(塗り薬)からスタートします。外用薬としては、ステロイド外用薬・活性型ビタミンD3外用薬が主に使われます。ただし、活性型ビタミンD3外用薬は効果が出るまでに2~3ヶ月かかるため、根気よく治療していく必要があります。内服薬(飲み薬)としては、レチノイド・シクロスポリン・メトトレキサートが主な薬です。
そしてこの他に紫外線を全身に照射する、紫外線療法(PUVA療法)があります。紫外線療法は、薬を外用(または内服)後、波長の長い紫外線をあてる治療法です。近年では311 nm付近の紫外線(ナローバンドUVB)が乾癬に有効であることが示されています。ナローバンドUVBの照射が可能になってからは薬外用(内服)も必要なく、照射時間も短くなり、現在はこのナローバンドUVB照射が急速に普及しています。また、難治の部位にはターゲット型のエキシマライトなどによる照射を行うことにより全身の総紫外線照射量を減らすことができるようになってきています。
また、2010年からはこれらの治療法で効果が得らえない場合や合併症により内服薬が使えない場合に、モノクローナル抗体(生物学的製剤)を用いた抗体療法という新しい治療が使えるようになりました。モノクローナル抗体は乾癬の原因となる物質に直接的に作用するために、ほとんどの患者さんにおいて効果がみられます。最近ではアダリムマブ・インフリキシマブ・ウステキヌマブ・セクキヌマブといったモノクローナル抗体による治療が行われています。
これらの抗体製剤は、肝臓代謝や腎でのろ過を必要としないため、肝硬変、透析中でも使用でき、時期は選びますが妊婦でも使用可能と考えられています。また、今まで難治性であった膿疱性乾癬、関節症性乾癬、乾癬性紅皮症にも十分効果があり、治療満足度は高いとされています。
ただし、抗体療法は安全に行うために定期的な検査が必要となっており、治療開始時には日本皮膚科学会が定める医療機関を受診する必要があります。
現在のところ難病指定である膿疱性乾癬にのみ適応ですが、膿疱性乾癬の原因細胞の1つである顆粒球を体外循環装置にて選別・除去する方法です。比較的安全性が高く、妊婦でも使用可能という利点がありますが、装置の有する施設が必要であり、体外循環装置をつなぐ血管がしっかりしていないと施行できないのが欠点です。
ただし、具体的な費用は社会保険、国民健康保険等で異なるため、個々に対応が必要です。
区分1ヶ月あたりの上限直近12ヶ月に該当月が3回あった人の4回目以降の上限
健保:標準報酬月額83万円以上(国保:年収1,160万円以上)
252,600円+(医療費-842,000円)×1%140,100円
健保:標準報酬月額53~79万円(国保:年収約770~1,160万円)167,400円+(医療費-558,000円)×1%93,000円
健保:標準報酬月額28~50万円(国保:年収約370~770万円)81,000円+(医療費-267,000円)×1%44,000円
健保:標準報酬月額26万円以下(国保:年収約370万円)57,600円44,000円
低所得者(住民税非課税)35,400円24,600円
※山崎先生監修「知っておきたい医療費助成制度」冊子より引用
レチノイドは胎児に影響を与えるリスクがあり、妊婦さんには使用することができません。また服用中や服用中止後は、一定期間の避妊が必要となっています。またシクロスポリンは、免疫作用を抑える薬剤ですが、副作用として血圧が上がったり、腎機能障害を引き起こしたりすることがあります。そのため定期的な通院が必要で、血圧測定や血液検査も行います。
紫外線を照射するため、副作用としては日焼けや色素沈着がみられることがあります。また、病院内での治療になるため、1週間に3回程度の通院が必要です。
時々のどの痛みや寒気など、風邪のような症状がでることや、結核、B型肝炎の既往歴のある方は注意が必要です。
乾癬の治療で重要なことは症状を抑えることと同時に、患者さんのQOLの改善を目指しているといことです。
患者さんのライフスタイルに合わせて各治療法のメリットデメリットを考えながら治療法を選択するために、患者さんごとに治療が異なっています。例えば、妊婦さんや妊娠を希望するカップルの場合、内服薬のレチノイドは処方できません。また内服薬のシクロスポリンは高血圧や腎機能障害がある患者さんにはあまり勧められません。
皮膚症状が強い人はもちろんですが、たとえ軽症でも耳の中に皮疹がでてカサカサいって夜安眠できないとか、人に手を見せる職業なのに爪に乾癬が出て困るとか、陰部の皮疹が治らなくて恋愛に積極的になれないなど、軽症でも深刻に悩んでおられる方が多いので、今の治療に満足できない時や困っていることがあれば遠慮なく話してもらい、一人一人のニーズに合わせたオーダーメイドな治療を心がけています。
避ける場合としては、生物学的製剤による治療を望まれても、非結核性抗酸菌などに罹患されている場合は別の治療を選択してもらったり、長年の紫外線暴露により皮膚のダメージが生じている方が紫外線療法を継続希望されても別の治療法を選択してもらったりすることはあります。
乾癬を悪化させる要因として、睡眠不足などの不規則な生活や不規則な食習慣やカロリーの過剰摂取があげられています。
そのため、規則正しい生活やバランスのよい食事を摂ることを心がけましょう。アルコールやタバコも悪化要因のため、なるべく控えてください。またストレスも皮疹の悪化を招きますので、環境を整え、ストレスを抱え込まない工夫をしてください。風邪や扁桃腺炎、喉頭炎などの感染症でも再発することがあります。特に乾燥しやすく悪化しやすい冬は、感染予防にも気を配りましょう。
一方、紫外線を浴びることで症状が改善することが多いため、日中は日光浴をお勧めしています。ただし、紫外線を浴びすぎると逆効果で悪化することもあるため適度な日光浴にしましょう。
もともと乾癬は食生活により悪化することが知られており、脂っこい食事を摂り過ぎたりや野菜の摂取が少ないと悪化するといわれています。日本や韓国、台湾など食生活が欧米化してきて乾癬の患者数は増加したとされています。逆に赤道直下の魚や野菜中心の食事を摂る国では乾癬の罹患数は少ないです。
乾癬は長期間付き合っていかなければいけない病気で発疹が繰り返し発症しますが、治療によって30~70%の患者さんは完全に発疹がみられなくなります。
完全に治らない場合でも、長期にわたって発疹が出なくなったり自然に消えたりする患者さんもいらっしゃいます。症状が良くなってきたら、不規則な食生活やストレスなどを避け、乾癬を悪化させる環境的な要因を取り除くことで、再発を防ぐように生活習慣を改善していきましょう。
また、抗体療法では、全員ではありませんが、難治性であった方でも1年以上無治療の患者さんや、半年1回程度の投与で皮疹が出現しない方もおられます。
どんな皮膚科を選べば乾癬の治療がうまくいくか、という質問にお答えするのは非常に難しいと思います。
最近では、整形外科や内科から乾癬を疑われて専門医としてご紹介いただき、そこで初めて皮膚科へいらっしゃるという患者さんも増えてきました。このようなホームページを見て選択することもひとつの方法だと思いますし、今かかりつけのドクターにアドバイスをもらうことも有効かもしれません。
東海大学医学部専門診療学系皮膚科学 准教授
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