乾癬の治療方法は、外用薬、光線療法、内服療法、生物学的製剤の4種類です。そして、これらの中から患者さんの症状などに合った治療を選択していきます。
今回は、横須賀共済病院皮膚科部長、神奈川乾癬癖患者会相談医などを歴任し、うちだ皮膚科クリニック 院長を務められる内田敬久先生に、乾癬の治療法について詳しくお話を伺いました。
乾癬の治療には、元旭川医科大学教授の飯塚一先生が提唱した“乾癬の治療ピラミッド計画”というものがあります。このピラミッドを参考にしながら症状などに応じて患者さんに合った治療を決定します。
乾癬の外用薬は2018年1月現在、副腎皮質ステロイドと活性型ビタミンD3の2種類が使用されています。ステロイドは皮膚の炎症を鎮める働きがあります。活性型ビタミンD3は、皮膚の過剰な角化を正常に戻し鱗屑を元の状態に戻す働きをします。この2つの成分があらかじめ配合された外用薬もあります。
なお、皮膚が乾燥していると湿疹が生じやすく、また鱗屑が厚い部位では外用薬がしっかりと皮膚に浸透していきません。そのため、保湿剤を併用することをお勧めします。
基本的に外用薬単独での治療であまり効果がみられなかった場合は、光線療法を実施します。外用薬と併用することもあります。光線療法の種類は、ナローバンドUVB療法、PUVA療法、エキシマライトなどがあります。ターゲット型ナローバンドUVBが登場し、皮疹部のみの光線照射が可能になりました。
これまで、保険収載されている乾癬の内服薬は、免疫抑制剤とビタミンA誘導体でした。ビタミンA誘導体は高齢の方者や、がん患者さん、感染症の懸念がある患者さんにも使用しやすい飲み薬です。しかし、動物実験の際に胎児に奇形が起こるリスクが示唆されたため、女性は2年間、男性は半年間ほど避妊しなければならず、将来的にお子さんを希望される患者さんには使用できません。
2017年3月1日に副作用の少ないPDE4阻害剤という内服薬が発売されました。PDE4阻害剤の副作用としては、下痢、頭痛などが挙げられます。しかし、下痢や頭痛は初期症状であり、対症療法にて通常1か月、長くても2か月程度で軽減されます。
内服薬や光線療法による症状の改善がなかった場合は、生物学的製剤の使用を検討します。生物学的製剤とは、化合物(化学的に合成された物質)とは異なり、生物のたんぱく質などを元に作ったものです。乾癬で用いる生物学的製剤は、疾患の原因となるサイトカインを抑制する役割をします。皮下注射や点滴で投与します。
詳しい乾癬の原因については、記事2『乾癬の原因は免疫の異常』をご参照ください。
乾癬の治療で使用する生物学的製剤とは、乾癬の原因となるサイトカインの抗体であり、抗TNF-α抗体 2種類、抗IL-12/23p40抗体 1種類、抗IL-17A抗体 2種類、抗IL-17受容体抗体 1種類の6種類があります。乾癬治療薬として認可された生物学的製剤は、日本皮膚科学会により承認された施設でのみ投与することが可能です。
生物学的製剤は種類により費用や投与方法、副作用、治療効果、通院日数が異なります。そのため、主治医と話し合いながら、適した薬を決定します。
以上の治療法をいつどのタイミングで選択するのかは、皮疹の重症度や関節痛の有無・重症度、日常生活の満足度、社会的な条件などにより異なっており、患者さん1人1人に合ったオーダーメイドな治療が必要です。
乾癬の発症には、高カロリー食の摂取など食生活も関係しています。そのため、肉類や糖質などの過剰摂取は避けましょう。そして、魚、豆類、野菜などの和食中心の食生活を心掛けてください。また喫煙も関与しますので、禁煙外来などを利用して禁煙できるよう努力するようにしてください。
乾癬には、地域ごとに患者会があります。乾癬は患者さんのQOL(生活の質)とも深くかかわり、精神的な苦痛も発生しやすい病気です。そのため、1人で悩みを抱え込むのではなく、同じ経験をしている患者さんと交流することが大切だと私は考えます。そうすることで、治療を頑張る原動力となります。
患者会では、医師の講演や患者さんの体験談、少人数の患者さんと医師を交えたお菓子を囲んでの座談会などを実施しています。是非、ご自分がお住まいの地域の患者会を調べて参加してみてください。
乾癬は完治することが難しいとされる病気です。そのため、長期的に付き合っていく必要があります。しかし、適正な治療をすれば、皮疹や関節痛をコントロールできる疾患です。満足した日常生活を送られている方も多くいらっしゃいます。
今では、乾癬の治療にはさまざまな選択肢があります。主治医と相談しながら、決して諦めずにご自身の症状や生活に適した治療をみつけて継続してください。
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