のうほうせいかんせん

膿疱性乾癬

最終更新日
2021年04月12日
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2021/04/12
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

皮膚の表面が炎症を起こすことで生じる慢性の角化性病変を乾癬(かんせん)と呼びます。乾癬は、症状に応じていくつかのタイプに分かれますが、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)はまれなタイプの乾癬であるといわれています。

膿疱性乾癬では、乾癬特有の皮膚症状に加えて、中にを持つ水ぶくれ(膿疱(のうほう))が現れます。膿疱が全身に現れる(汎発型)こともあれば、体の一部分に限局する(限局型)こともあります。

膿疱性乾癬を発症すると、発熱とともに全身に赤い皮疹(紅斑)と膿疱(膿がたまった水疱(すいほう))が多発します。また、全身のむくみや関節の痛み、目の炎症が見られることもあります。まれですが、症状が長く続くと呼吸不全などの命に関わる状態になることもあります。

膿疱性乾癬は難病指定を受けており、一般的な乾癬に比べて症状が重いため、多くの患者さんでは入院での治療が必要でした。しかし、生物学的製剤の登場により入院せずに治療を行える患者さんも増えてきました。

原因

膿疱性乾癬の原因には、遺伝子的・体質的な素因が関係しているといわれています。膿疱性乾癬では、炎症を適切に制御する役割を担うIL36RN遺伝子と関連性が深いことが知られています。このIL36RN遺伝子に異常が生じると、うまく炎症を抑制することができなくなり、膿疱性乾癬の発症につながると推定されています。

膿疱性乾癬では、遺伝的な要因に加えて環境的な因子も重要です。膿疱性乾癬の症状は、徐々にではなく急に現れるケースが多く、感染症、ストレス、薬剤、妊娠などをきっかけとして症状が出現します。中でも多く見られる原因は感染症です。たとえば、喉の痛みや風邪が引き金となり膿疱性乾癬の症状が現れます。さらに症状が軽快・改善されても、こうした要因によって再度発症・悪化するケースもあります。

症状

急性期

膿疱性乾癬は発症すると最初に灼熱感とともに全身に赤い発疹(ほっしん)(紅斑)が生じます。多くは悪寒と急激な発熱を伴い、全身の紅斑のうえに膿疱がたまったもの)が多発するのが特徴です。膿疱は3~5mmの大きさのもので場合によっては膿疱がつながって“膿海(のうかい)”と呼ばれる大きな膿疱が形成されます。

膿疱性乾癬は膿疱が発生する範囲に応じて分類され、体全体に広く分布する“汎発型”と一部に限局する“限局型”があります。特に汎発型では、全身に生じた膿疱が破れることで皮膚のバリア機能が低下し、発熱や脱水などの全身疾患につながるリスクが高くなります。そのほかにも関節の痛み、手足のむくみなども認めるようになります。膿疱性乾癬を含む乾癬は皮膚症状以外にも、関節炎や目の炎症(結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎)を併発します。まれですが、呼吸器不全、循環不全、腎不全といった重篤な状態に陥ることもあります。

慢性期

急性期の症状が落ち着くと正常の皮膚に戻ることもありますが、一般的な乾癬で見られる紅斑に銀白色の角質(鱗屑)を伴う皮膚症状に変化したり、手足に膿疱が繰り返し生じたりするなどのさまざまな症状が続くことがあります。

検査・診断

膿疱性乾癬の診断では、皮膚の臨床症状を見ていくことが重要です。皮膚の状態から、乾癬の症状に加えて、膿疱の状態を詳細に評価していきます。

また、膿疱性乾癬では皮膚生検や血液検査なども行われます。皮膚生検では、採取された検体を顕微鏡で詳細に確認し、膿疱性乾癬に合致するかを確認します。血液検査では、全身状態の反応に関連して炎症反応の上昇が確認できますし、合併症としての糖尿病や高脂血症などの評価も可能となります。

治療

膿疱性乾癬は症状が重く多くの場合で入院での治療が必要となります。主な治療法は薬物療法、紫外線療法、顆粒球・単球吸着除去療法などです。年齢や妊娠状況を考慮しながら治療法が選択されます。

全身の炎症を抑えるために主にエトレチナート・シクロスポリン・メトトレキサート・ステロイドといった薬剤を使用します。特に近年では、“生物学的製剤”が使用できるようになったことで、外来で治療できる患者さんも増えてきました。皮膚症状には皮膚のバリア機能を保つために外用薬(塗り薬)が用いられます。ときに皮膚に人工的に紫外線を当てる紫外線療法を行うこともあります。

さらに、膿疱性乾癬では顆粒球・単球吸着除去療法と呼ばれる治療法が選択されることもあります。顆粒球・単球吸着除去療法とは、炎症を起こす原因となる血液中の活性化しすぎた好中球や単球を除去することで、症状を改善させる治療法です。

膿疱性乾癬では皮膚症状、循環器呼吸器系の症状、関節症状など生じている症状に応じて、これらの治療法が組み合わせて行われます。

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