
一般的に“乾燥肌”と呼ばれる状態は人によってさまざまな概念があり、皮膚科では“乾皮症”や“乾燥症”と診断されることもあります。乾燥肌の治療では主に保湿をする塗り薬が処方されますが、これ以外にも普段の生活の中で乾燥肌に対する対策を講じることは非常に大切です。そこで本記事では乾燥肌の原因や生活の中でできる対策、皮膚科での治療について詳しく解説します。
乾燥肌の主な原因は、皮膚の一番外側にある皮脂が失われてしまうことです。この皮脂は皮膚の内側に存在する水分の蒸発を抑える役割をしていますが、失われると水分が蒸発して肌が乾燥してしまいます。また、水分が蒸発すると同時に肌のバリア機能(外の刺激から皮膚を守る機能)も低下するため、乾燥肌をはじめとする皮膚トラブルを引き起こしやすくなります。
このように乾燥肌を引き起こす具体的な要因には、空気の乾燥や加齢、ビタミン不足など多岐にわたりますが、普段の生活が乾燥肌を引き起こしている可能性もあるため生活を見直して対策を講じることも大切です。
普段の生活のなかでできる乾燥肌対策は数多くあります。以下では乾燥肌の具体的な対策法を解説します
エアコンやファンヒーターの設定温度が高いほど肌が乾燥しやすくなります。これは、室内の湿度がそのままであるのに対し、室内の温度だけがエアコンやファンヒーターによって高温になることで、部屋のなかの相対湿度が下がってしまうからです。
そのため、エアコンやファンヒーターを利用する際は温度を低めに設定するほか、加湿器などを使用するようにしましょう。加湿器がない場合は、室内に洗濯物を干すことで少なからず乾燥を防ぐことが可能です。
空気中の湿度が低くなり空気が乾燥すると肌にある脂分が失われやすくなり、乾燥やかゆみが生じることがあります。室内が乾燥しているときは、加湿器などを用いて室内を加湿するとよいでしょう。ただし、加湿器から不衛生な状態で水分が放出されると、過敏性肺炎などの原因になるとの指摘もあります。加湿器の定期的な清掃などを心がけることも大切です。
また、ミスト(帯電微細水分粒子=帯電したミスト)搭載の空気清浄機やエアコンは、ミストが肌に吸着・浸透することで角質細胞の間を埋める“細胞間脂質”が増加し、乾燥肌の改善効果がみられたという実験結果があります。皮膚には、細胞間脂質(セラミドや皮脂など)と呼ばれる物質が存在しますが、これが外部からの刺激や皮膚の水分の蒸発を防いでいます。しかし、空気が乾燥すると細胞間脂質が減少して乾燥肌の原因となります。
お風呂で熱いお湯を使う、洗浄力の高いせっけんを使うことは、汚れとともに肌に必要な油分まで取り除いてしまうため、乾燥肌の原因になるといわれています。また、肌を洗う際に強くこすると肌に摩擦が生じることでダメージが加わるため、乾燥肌の原因になります。特にナイロンタオルで強くこすることはやめましょう。
お湯の温度は40℃程度が適温です。保湿効果が期待できる入浴剤を使うとよりよいでしょう。ただし、自分の肌質に合うものを選択してください。せっけんはよく泡立たせて、泡でなでるように洗うと刺激が抑えられます。また、タオルで拭く際もこすることはせず、おさえて水分を吸い取るようなイメージで行います。さらに、洗う順番は最初に頭、次に体とすると、シャンプーやコンディショナーのすすぎ残しによる肌トラブルを防ぐことができます。
食べ物で対策ビタミン不足も乾燥肌の原因となることがあります。乾燥肌によいといわれるビタミン(A、B₂、B₆、C、Eなど)を多く含む食べ物を積極的に食べるとよいでしょう。具体的な効果や食材は以下のとおりです。
衣服の素材によっては、着ることによって皮膚に刺激を与え、かゆみを増幅させることによって乾燥肌がひどくなることがあります。
そのため、できるだけ肌に優しい衣服を身につけるのがよいでしょう。木綿などは肌への刺激が少ないとされています。
かゆみが強い、カサつきが気になるなどの場合には、皮膚科への受診を検討するとよいでしょう。
乾燥肌だと思っていたものが、他の病気である可能性もあります。たとえば頭の乾燥とフケが多くて受診した場合には、脂漏性皮膚炎や乾癬であった例や、乾燥の程度がひどくて受診した場合には、生まれつきの角化の機能異常による魚鱗癬であった例もあります。
乾燥肌の治療では、主に保湿をする塗り薬が処方されます。また、かゆみや湿疹がある場合には、それらを抑える塗り薬や飲み薬が処方されることもあります。
代表的な保湿剤の成分は、ヘパリン類似物質、尿素、ワセリンが挙げられます。ヘパリン類似物質は吸湿して角層に水分を与え、持続的な保湿効果が期待できます。また、血行促進効果も期待できるため、血行障害による痛みや腫れがある場合にも用いられます。尿素製剤も角層に水分を与えますが、角質融解作用があるため刺激を感じることがあります。また、ワセリンは油分で皮膚を覆うことで水分蒸散を防いでくれます。
塗り薬は朝晩2回程度、特にお風呂上がりに塗るとよいとされています。しかし、いずれも処方された際は医師の指示にしたがって使用しましょう。
まずは暖房の設定温度を低めにする、加湿器やミストで加湿する、入浴方法の見直し、ビタミンを取り入れるなど、乾燥肌対策として普段の生活の中でできることは数多くあります。しかし、乾燥肌だと思っていたものも、病気が原因で生じている可能性もあります。そのため、かゆみが強い、カサつきが気になるなど、気になる症状がある場合は皮膚科を受診して医師に相談するとよいでしょう。
東海大学医学部専門診療学系皮膚科学 准教授、東海大学医学部付属病院 乾癬・アトピーセンター センター長
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
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