提供:健栄製薬株式会社
乾皮症とはいわゆる乾燥肌のことで、特に冬場は症状がひどくなる方が多くいます。「普段からしっかりとスキンケアしているのに乾燥してしまう」、「市販の保湿剤はどれを選べばよいのか分からない」とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は乾皮症やセルフケアなどについて、東邦大学医学部皮膚科学講座客員教授の関東 裕美先生にお話を伺いました。
乾皮症は皮脂欠乏症とも呼ばれる病気で、いわゆる“乾燥肌”を指します。肌の表面にある角質層を守るための物質が自分では作りにくい状態になり、肌の水分や皮脂が減少します。このため肌が乾燥してカサカサになったり、場合によっては強いかゆみを伴ったりする場合があります。
肌の潤いは、角質層に含まれる“皮脂” “天然保湿因子”“細胞間脂質”の3つの成分によって保たれています。
皮脂は毛穴の中にある皮脂腺から分泌され、汗と交わって皮膚膜を形成して水分の蒸発を防ぎます。天然保湿因子はアミノ酸や尿素からできており、水分を保持する役割があります。細胞間脂質は化粧品の成分としてよく使われているセラミドや脂肪酸といった脂質で、角質細胞と呼ばれる細胞同士の隙間を埋める役割を果たしています。
これら3つの役割が正常にはたらくことで“皮膚バリア機能”となり、肌を乾燥や刺激から守ってくれるのです。しかしさまざまな原因からこの皮膚バリア機能が損なわれると、乾皮症をはじめとした肌トラブルが起こります。
乾皮症の主な原因として、以下のようなものがあります。
乾皮症を招く原因として多いのが、肌の“洗いすぎ”と“摩擦”による乾燥です。
肌は年齢により状態が変わります。たとえば加齢とともにホルモン分泌量が減ってくると皮脂量も減少し、乾燥しがちになります。しかしそれを考慮せず若い頃と同じような洗い方をすると“洗いすぎ”となり、必要な皮脂まで洗い流してしまい乾燥を招きます。
またナイロン製のボディタオルなどは肌への刺激が強いため、ゴシゴシ洗ってしまうと摩擦によって肌を守っている皮膚バリア機能を低下させてしまいます。
乾皮症は空気が乾燥する秋から冬にかけて症状が悪化します。気温が低いと空気中に含まれる水分量が少なくなるため、冬場は角質細胞の水分が急激に失われてしまい、皮膚の表面を覆っていた皮脂の量も著しく低下します。その結果、細胞間脂質や天然保湿因子などの保湿成分も失われ、かゆみを伴う乾皮症を招きます。
また、夏場はあまり症状が現れない方もいますが、エアコンによる乾燥で乾皮症を起こしているケースもあります。
女性は30歳代後半から40歳代以降、男性は50歳代にホルモンの分泌量が減少し、皮脂の分泌量も少なくなります。これが肌の乾燥を招き、乾皮症につながってしまいます。特に男性の場合、脛の辺りから乾燥するケースが多くなります。
乾皮症の主な症状として、肌のかさつき、かゆみ、赤み、痛みなどがあります。また、肌の表面に白い粉がふいてはがれ落ちる症状(落屑)が出る方もいます。
乾皮症の中でも肌の表面に白い粉がふいている状態は「皮脂欠乏症」と呼ばれます。白い粉は“鱗屑”と呼ばれる角質が皮膚表面に蓄積しているもので、これがはがれ落ちる現象を“落屑”といいます。
これらの症状が出ているということは、すでに皮膚のバリア機能が低下していることを意味しています。そのまま放置したり間違ったスキンケアを続けたり、かゆいからといって引っかいたりしてしまうと、症状がさらに悪化してしまう恐れがあります。
乾皮症(皮脂欠乏症)が悪化する要因は、いくつかあります。
先述のとおり、女性は30歳代後半から40歳代、男性は50歳を過ぎた頃から皮脂の分泌量が減って乾燥を招きます。ここで問題なのが、乾燥によりかゆみの症状が現れてかいてしまうと、皮膚のバリア機能が損なわれてさらにかゆみが増すという悪循環が生じること。しかも、普段から何気なくしている行動が悪循環を助長している場合があります。
たとえばお風呂でタオルを使ってゴシゴシと洗うことは一見普通ですが、実は肌は傷つけられて洗浄剤が吸収されてしまいますから、入浴後によりかゆみが増してしまうことがあります。
また、衣類による肌への刺激も悪化の原因になります。洋服や下着などは常に身につけているものですから、どうしても肌と擦れて小さな傷を作ってしまいます。本来はその傷を治すべきですが、かゆみがあると清潔にしようと思い念入りに洗ってしまいます。すると傷口から洗浄剤の成分である界面活性剤などが入り込み、さらにかゆみの症状を進行させる場合があります。衣類はなるべく肌当たりが優しい素材を選ぶようにしましょう。汗や寒さ対策として機能性下着が流通するようになり、下着によるかぶれが起こることもあるようです。
また皮脂欠乏症とも呼ばれる乾皮症は、さらに悪化すると“皮脂欠乏性湿疹=皮膚炎”を引き起こします。かゆみ・赤み、かさつきや、それを引っかいてジュクジュクし、かさぶたになってくることが皮脂欠乏性湿疹の特徴で、これらがみられたらいったん自分の生活習慣を中断し、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。かゆみや赤みは“炎症”であり、炎症の治療には保湿剤ではなくステロイド外用治療が必要となってきます。その方の症状を見ながら医師がステロイド外用薬の種類や量を判断する必要があるので、重症化しないためには皮膚科を受診して適切な治療を受けていただきたいと思います。
乾皮症は多くの場合、日常のセルフケアによって悪化を防ぐことができます。皮膚炎になるまで悪化させないために、
といった対策に取り組みましょう。
乾燥対策のスキンケア方法としてもっともおすすめできるのは、市販薬を使うことです。
ただ、ドラッグストアなどの店頭では、最近CMをよく見かけるヘパリン類似物質が配合されたものをはじめ、白色ワセリン、尿素、セラミド、ステロイドなどさまざまな成分が配合された市販薬が並んでいて、どれを買うべきか迷ってしまうこともあるでしょう。
しかし、保湿をうたっているものであれば基本的にどれを選んでいただいても問題ありません。以下、それぞれの成分の特徴について説明するので、ご自分が気に入ったものを使ってみてください。
ヘパリン類似物質は乾皮症の治療薬に配合される成分として使われており、“保湿” “血行促進” “抗炎症”の3つの作用が知られています。肝臓で生成される“ヘパリン”と似た成分でできており、これが角質層まで浸透して水分保持を促し、正常な皮膚バリア機能を取り戻すはたらきがあります。
ヘパリン類似物質は昔から使われている薬です。使用した人から評価されてきたからこそ今でも使われていると言えますし、実際に小さな子どもからご年配の方まで幅広く使えます。
白色ワセリン系は油脂性のためべたつき感が強い保湿剤で、皮膚に膜を作り、乾燥や刺激物から守る役割を持っています。肌への刺激やかぶれ、アレルギーなどの心配が少なく、敏感肌の方や赤ちゃんにも使えるのが特徴です。
尿素系は皮膚を柔らかくするとともに高い保湿性があり、べたつき感が少ないのが特徴です。
セラミドは保湿成分、“細胞間脂質”の主な成分で、角質を守りつつ細胞の間に入り高い保湿力を発揮します。
市販薬に配合されているセラミドは人工的に作られたものですが、成分としてはかなり近いものになっています。
ステロイドはかゆみを抑える成分で、できれば皮膚炎の治療薬として皮膚科で処方を受けるべきです。長い期間使い続けると肌に赤みや膿などが現れる酒さ様皮膚炎(ステロイド皮膚症)を招く恐れがあります。効果の高いステロイド外用薬は独自で判断せずに薬剤師に相談して使用すべきです。治りが悪ければ専門医を受診して適切な治療を受けましょう。
市販薬を使用する際のポイントは3つです。まず、自分が気に入ったものを使用すること。気分よくお手入れできることはとても重要です。
次に、1つだけを使い続けるのではなく、白色ワセリン製品とほかの市販薬を“組み合わせ使い”することで皮膚表面からの水分蒸発を防ぐことができる場合もあります。白色ワセリンは肌に膜を作ってくれる成分なので、たとえば最初にヘパリン類似物質で保湿をしてから白色ワセリンでフタをするという、それぞれの特性を生かした使い方ができます。
最後に、使用した際にピリピリするといった刺激を感じた場合はすぐに中止すること。刺激を感じる場合は肌に合っていない可能性があります。使用を中止しても肌に違和感が続くときは早めに皮膚科を受診して専門医に相談しましょう。
乾皮症対策として手軽に取り組めるのは、化粧水や乳液、保湿クリームなど、さまざまな化粧品を上手に使ったスキンケアではないでしょうか。
特に冬は気温が下がり空気中に含まれる水分量が少なくなるため、肌が乾燥しやすくなります。肌の乾燥を防ぐ成分が入った化粧品を使うなどの対策をしましょう。
さっぱりしたタイプの乳液は夏場には問題なく使えていても、冬になると乾燥に抗えない場合があります。普段使っているものが冬になって乾燥しやすいと感じたらオイルリッチの冬用化粧品に変えてみるのもよいでしょう。
たとえば普段から体をゴシゴシと洗う習慣がある方は、タオルを使用せず、泡立てたせっけんと手で優しく洗うようにすることで肌への負担が減らせます。どうしてもしっかり洗いたいという場合は、季節に合わせて洗い方を調整しましょう。夏場は10回擦っているならば、冬場は半分の5回に抑えるようなイメージです。
肌への負担という観点ではシャワーにも注意が必要です。シャワーの水圧が強すぎてしまうと、皮膚を引っかいているのと同じようなダメージを与えてしまうことがあるからです。
またせっけんには強い洗浄力があるため、肌の保湿成分を落としすぎてしまいます。特に冬季の乾燥時期は、洗浄剤を使って体を洗う頻度は年齢とともに減らしていくべきです。毎日湯船につかってやさしく垢を落とす習慣を身につけて過ごすようにすれば、皮膚の乾燥も悪化しないで済みます。せっけんなどの洗浄剤使用は週に1~2回程度で十分かもしれません。どうしても体臭が気になるという場合には、好みの香りがついた入浴剤を利用するのもよいでしょう。
洗顔も同様に、肌の状態に合わせた洗い方が必要です。ダブル洗顔をしている方はその分だけ肌への負担が大きくなるため、年齢や季節に応じて洗顔料や洗い方を見直すことが大切です。
つまり、“肌を擦る(摩擦)”という行為は肌を乾燥から守ってくれる皮膚バリア機能を弱めてしまい、乾皮症を招く可能性があるのです。保湿成分の入った化粧品やスキンケアも大切ですが、まずはかゆみを招く恐れがある“摩擦”を避けることから始めましょう。
寝不足や偏った食生活が続いた結果、肌トラブルが起こってしまった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。逆にいえば、食事・睡眠といった生活習慣を見直すことで皮膚バリア機能を維持し、乾皮症対策をすることができます。
なかでも睡眠は重要です。男性も女性も、更年期以降はホルモンの分泌量が低下することで肌の乾燥を招いてしまいます。ホルモンは睡眠中に多く分泌されるため、それぞれのライフスタイルに合わせた適切な睡眠を取り、できるだけホルモンの分泌量が多い状態を維持するようにしましょう。
食事面では、アレルギーがあるものを避けましょう。アレルギー反応が出てしまうとどうしても乾皮症につながりやすくなります。下痢をしないように気を付けることも大切です。腸の調子が悪いとビタミン類をはじめとした栄養素の吸収が悪くなり、皮膚のバリア機能低下を招いてしまいます。
飲酒、入浴、急な運動にも注意しましょう。
アルコールを摂取すると血管が広がり、かゆみの原因となるヒスタミンという物質が体内で放出されやすくなります。運動や入浴も同様に血管を広げてヒスタミンが過剰分泌されます。その結果、かゆみが増してつい皮膚をかいてしまい、乾皮症につながる悪循環に陥りかねません。かゆみがある間はなるべく飲酒を避ける、入浴や運動では急に体温が上がらないようにする、といった対応が必要です。
また花粉症や蕁麻疹といったアレルギー症状を持っている方では、ヒスタミンの過剰な分泌によってより強い症状を引き起こしてしまう場合があります。これらの症状をお持ちの方は特に気を付けることが重要です。
なお、ご自身でケアを行っても改善されないときは皮膚以外の病気やストレスなどが原因となっている可能性もあります。適切な治療につなげるためにも早めに医療機関の受診を検討しましょう。
乾皮症対策のセルフケアで困ったら、ぜひ皮膚科の医師を頼ってください。
保湿に使う市販薬や化粧品、入浴剤が決められない、生活習慣で気になっているものがある、といったお悩みに対して、医師は患者さんの肌の状態を確認し、的確に判断してくれます。
また繰り返しとなりますが、セルフケアがうまく行かない場合は、 “洗いすぎ”や“摩擦”が原因で乾皮症が悪化しているケースも考えられます。医師は患者さんから普段の生活の様子を聞いて具体的な指導ができるので、セルフケアで困ったことがあればやはり皮膚科の医師に相談してみることをおすすめします。
乾皮症を招く大きな原因として、間違ったセルフケアを行っているケースが多くあります。かゆみがあるからといって逆に洗いすぎてしまう、季節や肌の状態に合わせた洗い方をしていない、適切な保湿剤を選んでいないなど、さまざまな要因により症状の悪化を招いてしまいます。
乾皮症は正しいセルフケアを行うことで改善を目指せる病気ですので、まずは普段のセルフケアを見直してみましょう。
稲田堤ひふ科クリニック
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