インタビュー

目や唇がかゆい―肌荒れの原因は化粧品でないことが意外に多い

目や唇がかゆい―肌荒れの原因は化粧品でないことが意外に多い
関東 裕美 先生

稲田堤ひふ科クリニック

関東 裕美 先生

この記事の最終更新は2016年03月10日です。

肌荒れを起こすと、化粧品を疑う方は多いでしょう。しかし、肌荒れの7~8割の原因は乾燥によるものであり、季節だけでなく、私たちがふだん意識せずに使用している洗顔料や歯磨き粉など、身近なものによって引き起こされている可能性があります。私たちが繰り返し悩まされる肌荒れの症状とその原因について、東邦大学医療センター大森病院皮膚科教授関東裕美先生にお話をうかがいます。

多くの女性が下記のような症状を訴えて受診します。

・唇や目まわり、顔全体のかゆみ

・唇や目まわりの浮腫性の紅斑(赤く腫れてひと回り大きくなってしまう)

・唇や目まわり、顔全体のカサカサ

・唇のまわりのブツブツ、水泡

脂腺は、乾燥に対し皮脂分泌が亢進して皮膚を守ろうとします。この生体防御反応が、黄色っぽいブツブツ【老人性脂腺増殖症】や白いブツブツ【フォアダイス状態】【白色面皰】の原因です。つまり、年齢や季節を考えて自分の皮膚をよく観察して過剰な乾燥を避けるように心がけます。自分の皮脂分泌状況に応じた洗顔を工夫し、適切な保湿ができればトラブルのない美しい肌を保つことができるのです。こういった肌荒れの多くは、乾燥によるものです。さらにその乾燥は、シャンプー、ボディーシャンプー、歯磨き粉や洗顔料で引き起こされていることがほとんどです。唇に出る痛くて赤いブツブツ(水疱)といえば口唇ヘルペスが一番有名ですが、「唇全体」にパラパラと小さい白いブツブツができる場合、独立脂腺の過剰分泌反応(フォアダイス状態)の可能性があります。

目周囲と唇のかさつきに加えて、瞼が赤く腫れぼったくなったり、唇も辺縁が腫れて一回り大きくなり、かゆみも出てきて、「化粧品かぶれでしょうか?」と受診される方がいらっしゃいます。眼周囲口周囲の淡意赤みと腫れぼったさ、粉っぽい感じのかさつきといった特徴的な顔貌を診ると、特別な検査をせずに洗浄指導をするだけで軽快してくる患者様が冬季乾燥時期にはとても多いのです。冬季乾燥時期に夏季と同じような洗浄方法を続ければ肌荒れが起きるのは当たり前です。年齢を日々重ねていくこと、皮膚防御能力も毎日違うことを皆さんが学習する必要があります。多くの原因が「洗いすぎ」で皮膚バリア機能が損なわれ、それが引き金となって化粧品の刺激感を助長して刺激性のかぶれを発生してしまうのです。当科を受診された患者様には「1週間ダブル洗顔をやめてオイル【メイク落とし】だけで洗ってください」と指導すると、それだけで症状がおさまってしまう方が半分以上いらっしゃいます。

ただし、稀にアレルギー性化粧品皮膚炎の方もいらっしゃいますので、臨床経過と皮膚症状を見極めて検査治療を考えております。治療でよくなるけれどやめると再発してしまうのは何か日常生活に原因が潜んでいる証拠です。注意深い問診、診察、経過観察を踏まえて確認するにはアレルギーの活動性を調べるのに血液検査、接触アレルギーの確認に皮膚検査【パッチテスト】を行います。皮膚検査でサンスクリーンや美容液や美白剤、口紅やマスカラなど化粧品アレルギーを起こした原因を突き止めることができます。

たとえばアイメイクをする場合、アイクリームやアイシャドウ、美容液などマスカラ以外にもさまざまなものを使用します。これらを重ねて使用して化学物質の配合変化を起こすことがあるかもしれません。加えてビューラーなど美容機器使用では金属アレルギー、ゴムアレルギーなどで加味される症状も考える必要があります。またマスカラを落とす際には、「こする」という摩擦刺激が発生しますから、かぶれを誘発する可能性が高くなってしまいます。刺激かぶれの症状は、皮膚が薄い目のまわりや唇のまわりに最も多く出ます。

化粧品関連の講演や雑誌取材の機会があるたびに、化粧品による皮膚障害は洗浄しすぎず、自分に適した化粧方法を知っていれば防げることが多いことを指導しているつもりです。残念なことに未だに自分の皮膚コンディションはいつも同じと思っている方が多いのか、季節や年齢、皮膚コンディションを観察しながら毎日のスキンケアを工夫しようと思ってくださる方はあまり多くないのです。特に冬季乾燥時期には健康皮膚でも40才を過ぎると30代まで継続していた洗顔方法に何らかの支障が出てくるのは当然のことと、多くの皆さんが感じてくださると良いのだろうと思います。

これは、メラニン産生機能の違いによるものです。白色人種よりも有色人種のメラノサイトのほうがメラニンの含有量が多く、炎症が起こると有色人種メラノサイトはよりメラニン産生が高まり、メラニンを放出しやすい状態になって真皮に滴落してしまうため黒くなってしまうのです。ただし紫外線暴露後に有色人種である日本人のほうが白人種より黒くなってしまうのは、メラノサイトが紫外線ダメージに対する防御効果を発揮した結果ともいえます。つまり有色人種メラノサイトは、紫外線による皮膚細胞の核異常を食い止める力が強い、癌化を防御する力が強いので、白人種より皮膚癌にはなりにくいということになります。

一方、軽微な炎症に対する反応によって能力を発揮しやすいメラノサイトの機能は欠点につながることもあって、有色人種メラノサイトはこすれるという刺激が加わったところに黒味が出てしまいます。ナイロンタオルでこすって黒くなってしまう摩擦黒皮症や、接触皮膚炎の特殊系である色素沈着型接触皮膚炎の報告も有色人種に多く見られるものです。古い角層をこすって、剥いて再生するスピードを高めるピーリングなどはメラニンの含有量が少ない白色人種の皮膚のほうが向いているのかもしれません。白色人種と同じ濃度で日本人にピーリングを行うと刺激反応を起こしてしまいましたが、日本人に適したピーリング剤の安全性が検討され現在ではかぶれないような施術が医師の管理のもと行われているようです。

角層は水分保持に欠かせない大切な場所ですから、無理にこすって剥いてしまうと乾燥しすぎて皮膚トラブルを起こしてしまうこともあります。こすりすぎて刺激を起こしてしまうと、むしろくすみの原因になってしまうことがあるかもしれません。多種の化粧品を使って何度も塗り重ねることは、皮膚の上で色々な反応が起こっていることも心配です。洗浄する時に何回も何回も皮膚を擦り取って洗いすぎると、無意識にピーリングを行っているに等しい行為です。特に、乾燥した冬場の皮膚はバリア膜がいつもより弱い状態になりますから刺激を受けやすいのです。できる限りこすらない、つまり洗う回数(こする回数)を減らすことは乾燥皮膚を悪化させない秘訣なのです。

乾燥やブツブツ以外にも、口唇の腫れや味覚異常を訴えて受診した方を検査すると、金属アレルギーが見つかることがあります。また、春先の花粉が飛散する時期は、スギ花粉が目や顎に触れてスギ花粉皮膚炎を起こしてしまう方がいらっしゃいます。ですから、「肌荒れを化粧品による皮膚炎だと思っている方が多いけれど、その皮膚炎の中にはさまざまな原因が混じっている」というのが正しい診断です。

 

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