概要
老人性脂腺増殖症とは、高齢者の額部や頬、鼻などに、ニキビのように盛り上がった皮膚病変を生じる疾患です。年齢を重ねるにつれて生じる皮膚病変です。お母さんからのホルモンの影響により赤ちゃんにも同じような皮膚変化を見ることがあります。
老人性脂腺増殖症は、基本的には整容的な問題を引き起こすこと以外に健康被害を生じることがないため、必ずしも治療の必要はありません。
原因
老人性脂腺増殖症は、皮脂を分泌する役割を持つ「脂腺」と呼ばれる腺が異常に増殖することを原因として発症します。皮膚の表面からやや深い部分には「真皮」と呼ばれる部位がありますが、同部位において脂腺が異常に増えます。
老人性脂腺増殖症を発症するリスクは加齢とともに高まりますが、男性ホルモンとの関連性が指摘されています。そのため、老人性脂腺増殖症は男性においてみられることが多いです。
また、赤ちゃんはお母さんのホルモンの影響を受けます。そのため、お母さんから赤ちゃんへと移行した男性ホルモンを原因として、赤ちゃんにおいても同様の皮膚変化を見ることがあります。
さらに、老人性脂腺増殖症で見られる皮膚変化は、移植後など免疫抑制状態にある場合により生じやすいです。また、まれではありますが、Muir-Torre症候群という疾患と関連して老人性脂腺増殖症で見るような皮膚変化が生じることもあります。
症状
老人性脂腺増殖症では、額部や鼻周り、頬など脂の分泌が多い場所を中心として皮膚に盛り上がりを見ることになります。その他にも胸や乳房、陰茎や陰嚢などにも見ることがあります。
皮膚の盛り上がりの大きさは1~3mm大であることが多く、中心部に毛が生える部位が観察されます。全体的に柔らかく、黄色の色調を伴います。ときに血管が観察されることもあります。加齢とともに数が増えることが多く、無治療では基本的には自然に消えることはありません。
老人性脂腺増殖症では、見た目の変化を示す以外には特別な症状を伴うことはありません。なお、Muir-Torre症候群に関連した皮膚変化の場合、消化器などの内臓にがんの発生を合併することもあるため注意が必要です。
検査・診断
老人性脂腺増殖症は、ダーモスコピーと呼ばれる特別な拡大鏡を用いて皮膚症状を詳細に観察することから診断されます。典型的なものの場合、特別な検査を追加することなく診断することが可能です。
見た目の変化から基底細胞がんなどの悪性腫瘍との鑑別が必要になることもあります。その際には皮膚組織の一部採取して病理組織検査を行うこともあります。
また、Muir-Torre症候群の合併が疑われる場合には、悪性疾患の存在を検討するためにも血液検査や便潜血検査、消化管内視鏡検査などの検査が検討されます。
治療
老人性脂腺増殖症は、基本的には整容的な問題を引き起こすこと以外に健康被害を生じることがないため、通常、無治療で経過観察します。しかし、整容的に気になる場合には、手術や炭酸ガスレーザー治療などを行うことになります。
治療法の選択の際には、病変部位の状態に加えて保険診療の適応の有無などさまざまな要素が考慮されます。そのため、治療を行うかどうかを含めて、専門の医療機関を受診して相談することが大切です。
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