アトピー性皮膚炎の特徴として、皮膚を守るバリア機能が正常でないことがあります。症状を悪化させないためにも、皮膚に対する刺激を極力減らすことが重要といわれています。ではアトピー性皮膚炎ではどのようなことが刺激となるのでしょうか。
アトピー性皮膚炎とはどのような病気なのか、何が刺激となるのか、日常生活での刺激対策について、東邦大学医療センター大森病院皮膚科 臨床教授の関東裕美先生にお話を伺いました。
アトピー性皮膚炎とは、「アトピー素因を基盤として皮膚のバリア機能障害をもとに、季節によって増悪・軽快を繰り返し、年齢によって特徴的な臨床症状を呈する、慢性の経過をたどる皮膚炎」と定義されています。ここでは少し噛み砕いた説明をしましょう。
アトピー素因とは、アトピー性皮膚炎を起こしやすい要素のことです。患者さんやご家族が、Ⅰ型アレルギーと呼ばれる気管支喘息、アレルギー性鼻炎などと診断されたことがあるか、IgE抗体を作りやすい体質かどうかを指します。
皮膚のバリア機能とは、外界からの刺激を体内へ侵入させないため体に備わっている防御機能です。健康な肌は皮脂と角層で守られていますが、乾燥、皮脂量低下などの要因によって皮膚のバリア機能が低下する場合があります。アトピー性皮膚炎の患者さんの肌は、セラミドと天然保湿因子が不足していることから、見た目は健康そうでも外界からの刺激に反応しやすい状態です。
つまりアトピー性皮膚炎とは、「アトピーになりやすい条件を持っている方の肌のバリア機能が低下して、季節による寒暖差などの影響を受けることで、よくなったり悪くなったりを繰り返す、年齢によって症状の特徴が異なる、治るまでに時間がかかる皮膚の病気」といえます。
アトピー性皮膚炎の肌にとって刺激となるものは非常に多いようです。何に反応しているかは人それぞれで、複数の原因が隠れていることもあります。そのため、アトピー性皮膚炎では何が病状を悪化させているのか把握しようと、積極的に検査を行います。
ここではアトピー性皮膚炎の刺激要因を大まかに、
の3種類に分けて、それぞれご説明します。
まず環境的な要因ですが、主に空気の乾燥とその方にとって不適当な室温・湿度、ほこり・ダニ・汚れといったハウスダスト、花粉あるいは食物に含まれるアレルゲンなどがあります。
アトピー性皮膚炎では、皮膚粘膜が空気そのものの変化や空気中に飛んでいる花粉や化学物質に反応して症状が出ることもあるようです。また、赤ちゃんが母乳に含まれていた卵の成分に反応して皮膚症状を繰り返していたケースや、温泉や入浴剤に含まれる硫黄で症状が悪化したケースもみられたそうです。
次に精神的な要因やストレスについて、掻く行為は気持ちがよくストレス解消にもなることから、不安や心配事を抱えている方が気持ちを紛らわすために皮膚を掻き壊してしまうことがあります。
小学生や思春期の子どもにもよくみられ、妹弟が生まれ両親の関心が自分からそれたことで、自分に注目してもらいたくて無意識のうちに掻いてしまっていたお子さんもいたそうです。
子どものアトピー性皮膚炎では、母親が生活と治療を管理していることが多く、母児分離が難しいといわれます。自己管理能力と自分で考え対処する術を身に着けないまま大人になった方が、掻いてストレス解消し続けた結果、症状を悪化させてしまったケースもあったと伺いました。
最後に物理的な刺激ですが、塗り薬を適切に使用しなかったり化粧品などで肌をガードせずにいたりすると、外界からの刺激をダイレクトに受けて肌がかぶれたようになることがあるようです。また、アトピー性皮膚炎の患者さんは洗浄剤を使って念入りに洗いがちで、ますます皮膚のバリア機能を低下させてしまう傾向があるとも伺いました。
物理的な刺激の例として他にも、肌に合わない成分が配合されたパックで顔がやけどをしたような状態になった方、ファンデーションを塗るスポンジが合わずにかぶれた方などもいらしたそうです。
アトピー性皮膚炎の特徴的な皮膚症状が出やすい部位は、子どもと大人で異なります。
2歳未満の乳児期では、はじめに頭や顔に症状が出てきます。グジュグジュした赤みを伴う湿疹が口元から頬にかけてでき、やがて胴体部分、両手足、肘や膝へと広がっていきます。
4歳から12歳頃までの幼少期では、首と肘と膝の内側、手首、足首などに左右対称に確認することが多いです。米ぬかのようにポロポロした角質層と膨らみを伴った発疹(ほっしん)や紅斑(こうはん)がみられ、特に胴体ではアトピー性皮膚と呼ばれる独特の皮膚症状が確認できます。
思春期以降になると、発疹は上半身と特に顔に集中して出現します。顔以外では手に職業性手湿疹を起こす方もいます。顔や手などに症状が限られるのは、大人のアトピー性皮膚炎の特徴ともいえます。男性の場合、陰部にのみ症状が出現する方もいます。
アトピー性皮膚炎では、症状を悪化させないためにも皮膚に対する刺激対策が重要です。特に子どもの場合、皮膚を傷つけないことは食物アレルギーの発症やその後のアトピー性皮膚炎の悪化予防にもつながることが明らかになっています。
最後に、アトピー性皮膚炎の刺激対策として日常生活で気をつけるべきポイントについて解説します。
衣類を選ぶときは皮膚への刺激を避けるため、肌着は裏返しで着用するか縫い目のないものを選びましょう。服のタグも刺激になりますから取ってしまいましょう。
入浴時の合言葉は、「こすらない・洗いすぎない」です。皮膚の状態、性別、季節などの条件からその方にあった適切な洗浄方法を実践することが、洗浄による刺激を減らす秘訣です。顔や体を洗うときは泡でなでるように洗ってください。固形石鹸を泡立てるのを繰り返していると手湿疹が悪化する場合もあるため、ポンプ式製品の使用がよいかもしれません。症状がひどいときには泡洗浄をお休みすることも選択肢のひとつです。汗をかくと痒くなるためシャワーで済ませる方もいますが、汗をかくことで皮膚の正常な状態と感覚を身につけるためにも、可能な範囲でぬるめの湯船につかってじっくり汗をかくようにしましょう。
入浴後はタオルで軽く抑えるようにして水気を拭き取り、自分の肌にあった保湿剤を使用してください。
アトピー性皮膚炎の方は病気のことを過剰に認識するのでなく、弱い皮膚であることを認識して、化粧やおしゃれも積極的に取り入れることが大切です。冬季の乾燥時期に向かって洗浄と保湿の注意を理解して、心にゆとりのある生活をおくるようにしましょう。
稲田堤ひふ科クリニック
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