インタビュー

肌荒れの原因

肌荒れの原因
関東 裕美 先生

稲田堤ひふ科クリニック

関東 裕美 先生

この記事の最終更新は2016年03月11日です。

肌荒れの多くは乾燥による炎症ですが、見逃してはいけない重大な病気のサインが隠れている場合もあります。迷わず病院を受診したほうが良い症状や、改善しない症状の見分け方を東邦大学医療センター大森病院皮膚科教授関東裕美先生にうかがいます。

化粧品による肌荒れを疑って受診する方の多くは乾燥で肌荒れを起こしている、とご説明しましたが、もちろんそれ以外にもさまざまな原因によって皮膚症状を起こすことがあります。

肌に触れるとかゆみや紅斑を引き起こします。その刺激によって掻いたりこすったりするので、さらに皮膚が乾燥しがちになります。

スギやヒノキで反応する方が圧倒的に多いのですが、初夏にはカモガヤ、イネ、オオアワガエリ、夏の終わりにはキリンソウ、ブタクサ、ヨモギ、冬に向かってキンモクセイ、シラカバ、ハンノキなど花粉は1年中飛んでいます。揮発性の化学物質は、芳香剤、防腐剤、壁に塗る塗料などに含まれています。これは、私たちが日常生活している空気環境に浮いているアレルゲンですから、まったく触れずに過ごすことは事実上不可能です。

皮膚炎を治すのに抗アレルギー剤の内服やステロイド外用薬、免疫抑制外用薬が必要です。年齢や皮膚炎の部位により医師は適切な強さのものを選んで適切に内服・外用を指示します。皮膚炎の状況により臨機応変に内服・外用の調整が必要なこともありますから主治医にきちんと相談しましょう。外用しすぎると種々の副作用が心配されます。

たとえば、皮脂分泌の強い年齢ではステロイド外用薬でステロイドニキビができることがありますし、高齢者皮膚では外用しすぎると皮膚萎縮や皮下出血を起こしやすくなってしまうこともあります。

思春期でない大人の治らないニキビ、繰り返すニキビ、ニキビ用の化粧品を使っても治らないニキビの背景に金属アレルギーが潜んでいることがあります。

私たちの体を維持するのに食餌から生体内金属のバランスを調整します。ワインやナッツ、香辛料、たばこやチョコレートなど金属を多く含む食品のとりすぎは、金属アレルギーを助長してしまうことがあります。治らないニキビは食餌調節からといっても過言ではないくらいですから、バランス良く食物を摂取し、消化を促進する良い運動をして便秘をしない、質の良い睡眠をとることなどに気をつけていれば「いつもニキビがある」状態を脱却できるかもしれません。

目まわり・唇まわりのかゆみや乾燥は洗浄剤や化粧品による刺激が多く、稀にアレルギーの可能性もあります。冬季乾燥時期には石鹸や歯磨き粉の影響で皮膚乾燥は助長します。口唇炎口内炎を繰り返す場合は金属アレルギーの関与が考えられ、ごく稀ですが口紅のアレルギーの場合もあります。

口唇を囲むように、一見「ニキビかな?」と思えるような白いブツブツが見えます。かゆみなどはあまり感じません。

これは「フォワダイス状態」といい、病的な状態ではなく生理的な反応です。乾燥によって脂腺が「がんばりすぎている」状態です。ブツブツが少し目立つ程度ならば、保湿をしてあげるだけで脂腺の過剰な反応が抑えられ、目立たなくるでしょう。保湿はワセリンを使用する程度で十分です。

目まわりの紅斑、ニキビなどの症状が出ます。

肝臓の機能が低下することによるニキビ(ヘパティックアクネ)、副腎系の分泌状態が悪いことによるニキビ、高脂血症や脂質代謝異常によるニキビなどがあります。

また、中高年、癌年齢になって目が盛り上がるように腫れて「なんとなく紫外線に弱いな」と感じるようになり目の縁のところに対照に出血性の紅斑(ヘリオトロープ疹)が出た場合、内臓癌のサインのことがあります。筋肉の痛さやだるさを伴うと皮膚筋炎膠原病のひとつ)が心配です。他にも内臓病変と関係して出る皮膚症状はたくさんあります。「ふつうと違う」「いつもと違う」皮膚症状だと感じたら注意が必要です。

金属アレルギーでは口唇炎口内炎、歯肉の腫脹、味覚異常などが起こります。東邦大学医療センター大森病院のような、接触皮膚炎を疑ってパッチテストをする患者さんが年間200例以上ある病院でも、金属アレルギーがあるから歯科金属をとりなさいと指導するのは年間1~2例です。生命維持に金属は欠かさないので長年食餌から補充することで知らない間に金属アレルギーが成立していることが多いのです。また、医療で生体内に金属挿入の機会が増えて、中には発症してしまうことがあるようです。

世界的にも最も多い金属アレルギーはニッケルアレルギーで、私たちが日常で使用する家庭用調理器や装飾具、貨幣や食べ物など多くのものに含まれています。ただし、アレルギーの原因になりうるとはいえニッケルは鉄欠乏性貧血を起こさないように応援している成分でもあり、金属は生体維持に必要不可欠ですから適切な量を摂取する必要があります。

金属が触れた部分が局所的にかぶれかゆみ、赤み、腫れを引き起こします。

皮膚に触れることの多いもの
皮膚に触れることの多いもの

汗や皮脂の出た部分にかゆみを引き起こします。体内でニッケルが増えすぎると、その1割程度が汗や唾液、皮脂などに溶け出てきて粘膜を荒らすことがあります。

ニッケルを多く含む経口品
ニッケルを多く含む経口品
食品の可食部100gあたりの金属含有量(µg)
食品の可食部100gあたりの金属含有量(µg)

摂取した1割くらいが汗に排出され発汗部を中心にかゆい皮疹が広がってしまうのが全身型金属アレルギーで、特定の食物に体の免疫が反応する食物アレルギーとは異なります。発汗時期にかゆい皮疹を発汗部位に繰り返す場合は一時期金属を多く含むチョコレートなどの摂取制限をしてみてかゆみや皮疹との関係を観察することもすすめています。

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