
一般的に乾燥肌と呼ばれる肌の乾燥のことを正式には“乾皮症”または“皮脂欠乏症”といいます。
乾皮症は、皮膚の乾燥、角質の剥がれ、かゆみなどの症状が特徴で、進行すると、ひび割れや赤み、湿疹が見られることもあります。また、皮膚をかいたりこすったりすると傷口から細菌が侵入して感染症につながることもあるため、乾皮症の症状が強い場合には、皮膚科を受診するのが適切とされています。
ここでは、皮膚科で処方される乾皮症の薬の詳細や、自宅でできるセルフケア方法について詳しく解説します。
皮膚の乾燥やかゆみが強い、長引く場合には皮膚科を受診するとよいでしょう。皮膚科で行われる治療の基本は、保湿剤を塗って皮膚に潤いを与えることです。症状によってはステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を用いることもあります。
乾皮症の場合、症状の程度に関わらず保湿剤を塗ることが治療の基本です。保湿剤の種類には、ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤、ワセリンの主に3種類があり、それぞれ少しずつ効果が異なるため、医師の判断のもと適切なものが処方されます。
主に処方されるヘパリン類似物質含有製剤と尿素製剤には角層の水分を保持する作用があります。また、ワセリンには油分が皮膚を覆うことで皮膚の水分の蒸発を防ぐ作用があるとされています。形状も軟膏、クリーム、ローション、フォーム、スプレーなどさまざまで患者の皮膚の状態によって使い分けます。
このような保湿剤は朝晩2回塗るとよいとされています。特に皮膚が清潔な状態とされるお風呂上りの直後に塗るとよく浸透するため効果的といわれていますが、いずれも医師の指示を守って正しく使用することが大切です。
乾皮症の症状の程度にかかわらず、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されることがあります。抗ヒスタミン薬は、かゆみを引き起こす物質の1つであるヒスタミンに作用しかゆみを抑える効果が期待できる薬です。
かゆいからといってかいてしまうと症状がひどくなったり、感染症につながったりすることもあるため、薬でかゆみを和らげることは非常に大切です。
乾皮症が進行すると皮脂欠乏性湿疹と呼ばれる湿疹が見られることがあります。この場合は、炎症を抑える目的でステロイド外用薬が処方されることがあります。また、皮脂欠乏性湿疹の症状の程度により、ミディアム、ストロング、ベリーストロングなど、ステロイド外用薬の強さを変えていきます。
当帰飲子などの漢方が用いられることもあります。当帰飲子はかゆみのある湿疹や皮膚炎などに用いられる漢方薬で、中でも高齢者のかゆみを抑えるために使われることが多いとされています。
漢方医学では皮膚の乾燥は“血虚*”の代表的な症状と考えられており、当帰飲子には血虚を改善する四物湯という漢方の成分が含まれています。四物湯は乾燥した皮膚に潤いを与える作用があり、皮膚が乾燥している場合の治療に用いられることが一般的です。
*血虚:漢方医学の概念で、血が不足しているために栄養が行き届いていない状態のこと
かゆみを抑える薬はドラッグストアや薬局などで手軽に購入することができますが、このような市販の薬にはリスクもあります。
一般的に市販の薬は病院で処方される薬よりも作用が弱く、そのぶん副作用のリスクが低いと考えられることがあります。しかし、実際にはそうとも言えません。なぜなら市販薬の場合はアレルギー症状を起こす頻度などのデータがないため、そもそもリスクの度合いを知ることができません。このことからも、市販の薬が原因でアレルギー反応を起こし薬疹(薬による湿疹)が引き起こされる可能性もあるため、まずは皮膚科の受診を検討し処方された薬を使用した方がよいでしょう。
処方された薬を使用すると同時に、日常生活でもセルフケアを行うことが大切です。
セルフケアでは加湿器などで湿度を保ち、乾燥を予防しましょう。また、皮膚内部にある水分の蒸発を防いでいる皮膚外部の脂分が少なくなることで乾皮症を引き起こすことがあります。この脂分を保つためにも、入浴時はぬるま湯を使う、何度も入浴しない、洗浄力の強いせっけんや洗剤を使わない、洗うときに強くこすらないなどの心がけが必要です。
さらに、皮膚への刺激も乾皮症を悪化させることがあります。そのため、かゆくてもかかない、木綿などの刺激の少ない肌着を着る、アルコールや辛いものなどを取りすぎないといったことに気をつけるとよいでしょう。
乾皮症の場合、皮膚科では保湿剤を用いて治療を行うことが基本です。進行して皮脂欠乏性湿疹が見られる場合はステロイド薬が、かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。その他、漢方や市販薬も存在していますが、市販薬の場合は薬疹などのリスクもあるためできるだけ皮膚科の受診を検討したほうがよいでしょう。
聖マリアンナ医科大学 皮膚科 教授
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