概要
薬疹とは、薬が原因で発症する発疹のことです。一般的には、薬の成分に対するアレルギー症状であるアレルギー性薬疹を指します。
よくある症状は体や手足など全身の皮膚、口の中、目などの赤い発疹で、高熱やかゆみが出ることもあります。これらの症状は、原因となる薬を使用開始してから数日以上経ってから発症することが多いです。
発疹のタイプによっては、使用直後から症状が出る場合もあります。どのような薬でも薬疹の原因となることがあり、薬の作用の強さと薬疹の出やすさは必ずしも比例しません。
薬疹は、原因と考えられる薬を中止すれば、数日で改善することが多いです。ただし、ごくまれに中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群といった重症の薬疹がみられることがあり、命に関わることもあるため早急な対処が必要になります。
原因
薬疹の原因は薬です。
どのような薬でも薬疹を引き起こす可能性はあり、病院で処方される医療用医薬品、処方箋なしで買える一般医薬品をはじめとして、民間薬、漢方薬、サプリメント、栄養ドリンク、検査で用いられる造影剤などあらゆる薬が候補となりえます。
症状
薬疹の主な症状は全身の皮膚、口の中、目などに生じる赤い発疹です。高熱やかゆみがみられることもあり、赤いポツポツや斑点が体の一部に出始め、少しずつ全身に広がっていきます。発疹の性状や程度は人によって異なりますが、左右対称に生じることが多いです。
重症になると、口や目、陰部などの粘膜に症状が出ることもあり、注意が必要です。この場合、多くは痛みを伴います。
薬疹の中でも重症なものとしては、中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群、薬剤性過敏症症候群があります。
中毒性表皮壊死症
薬疹の中でももっとも重症で、全身の皮膚の10%以上が壊死し、擦るだけで皮膚が剥がれるようになります。この病気を発症した人の20~30%が死に至るといわれています。
スティーブンス・ジョンソン症候群
症状の特徴は中毒性表皮壊死症と似ていますが、中毒性表皮壊死症よりも症状の範囲が狭く、全身の10%未満であるものをスティーブンス・ジョンソン症候群と呼びます。
目や口唇、陰部などの粘膜の症状が強いことが特徴で、目に後遺症が残ることもあります。
薬剤性過敏症症候群
薬がきっかけで体内に潜伏感染していたウイルス(ヒトヘルペスウイルス6〈HHV-6〉ほか)が再活性化することで起こる薬疹で、抗けいれん薬など特定の薬剤が原因となることがほとんどです。
薬を飲み始めてしばらく経ってから(平均4週間程度)発熱やかゆみを伴う紅斑がみられるようになり、肝臓や腎臓などのさまざまな臓器に症状が広がることもあります。
検査・診断
全身性の発疹が出た際、その原因になりそうな何らかの薬剤を使用していた場合に疑います。その薬の種類、使い始めた時期、発疹が出始めた時期などの関係が重要です。
たとえば、何らかの薬を飲み始めて数日後(多くは数日~10日程度)に薬疹を考えるような発疹が現れ、その薬を中止することで症状が改善すれば、薬疹の可能性が高いと考えることができます。
一方で、ウイルス感染などでも薬疹と似たような症状がみられることがあり、その治療のために薬を使用していれば、どちらが原因なのか区別がつきにくいこともあります。
薬疹とより正確に診断するためには検査を行う必要があります。発疹のタイプや重症度によって、パッチテストなどの皮膚テストや、血液を使って薬剤に対する反応をみる検査などを行います。場合によっては、疑わしい薬剤を少量から摂取して発疹がでるか調べる誘発試験を行うこともあります。
治療
薬疹の治療でもっとも重要なことは、原因と考えられる薬を速やかに中止することです。
通常の薬疹は薬を中止することで徐々に症状が改善することが多いです。
症状によっては、外用薬に追加して、抗アレルギー薬やステロイド内服薬などによる薬物治療を行うこともあります。
中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群などの重症の薬疹の場合でも、原因となる薬の中止が大切なのは同様です。
しかし、薬剤を中止しただけでは症状は改善せず、早期から大量のステロイドを投与する治療が必要になります。重症で大量のステロイドを使用しても抑えきれない場合は、血漿交換療法や大量ガンマグロブリン療法などの追加治療を行います。全ての病院で受けられる治療ではないため、重度の薬疹が疑われたら、皮膚科の専門医による適切な治療が可能な施設に紹介されることもあります。
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