概要
中毒性表皮壊死症とは、38度以上の発熱に加え、やけどの際に見られるような水ぶくれ、発赤、発疹などの症状が、全身の皮膚や粘膜(口や粘膜)に現れる病気を指します。同じような症状を呈する病気にスティーブンス・ジョンソン症候群がありますが、皮膚病変の広さによって両者は区別され、中毒性表皮壊死症はより重症な病気です。
中毒性表皮壊死症は薬剤に関連して発症することが多く、スティーブンス・ジョンソン症候群から移行することもまれではありません。
中毒性表皮壊死症の治療では、薬剤が原因の場合には誘因となった薬剤の中止、ステロイドや免疫グロブリン療法、免疫抑制剤の使用、血漿交換療法などの集学的な治療が必要となります。しかし、こうした治療を行った場合であっても救命率が充分であるとは言い難く、死亡率は20~40%にも昇るとの報告があります。また、急性期の治療を乗り越えた後も、ドライアイや視力障害などの慢性的な障害を残す可能性もある病気です。
原因
中毒性表皮壊死症は、多くの場合は医薬品を原因として発症します。原因薬剤としては広範囲に渡りますが、頻度が高いものとしては抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬などがあります。薬剤以外にも原因となることがあり、マイコプラズマ感染症やウイルス感染などがきっかけとなることもあります。
中毒性表皮壊死症と同じような症状を呈する病気にスティーブンス・ジョンソン症候群がありますが、両者を合わせて「重症多形滲出性紅斑」と呼ばれる一つの疾患群を構成しています。誘因となる原因に重複する部分は多く、事実、中毒性表皮壊死症は、スティーブンス・ジョンソン症候群から進展して発症することが多いです。
症状
中毒性表皮壊死症は、薬剤や感染症などの誘因をきっかけとして症状が発症します。基本的にはスティーブンス・ジョンソン症候群と同じような症状(全身症状、全身の発疹、水疱の出現など)があらわれますが、両者の区別は障害を受けた皮膚の面積によって区別されます。
中毒性表皮壊死症では、全身の皮膚が炎症を起こして真っ赤になり、かすかに表皮に触れただけでも皮膚が大きく剥がれてしまい、体表の30%以上の皮膚がむけてしまいます。脱毛や爪の剥脱も生じます。中毒性表皮壊死症は重症のやけどと類似しており、表皮がなくなってむき出しになった真皮部分から体液や塩成分が浸出します。そのため、全身状態が悪化し、その部分からの感染症も非常に起こりやすくなります。肝臓、腎臓、肺、消化管などの内臓の障害を伴うことも多く、感染症と臓器障害を併発します。
検査・診断
中毒性表皮壊死症の診断では、臨床所見が非常に重要となります。すなわち、眼や唇、陰部など、皮膚と粘膜が境を形成する部位において粘膜病変を確認することが重要です。身体の中でどれだけの面積が障害を受けているのかを確認することも含めて、詳細に皮膚症状を観察することも必須です。日本では、水疱などで皮膚が剝けた状態が体表面積の10%未満の場合をスティーブンス・ジョンソン症候群、10%以上の場合を中毒性表皮壊死症と診断します。
また、似たような症状を見る病気に、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、トキシックショック症候群、伝染性膿痂疹などもあるため、これらを除外することも大切です。皮膚病変を用いて顕微鏡検査を行い、皮膚の特徴的変化を確認することもあります。
眼科病変は、急性期のみならず後遺症を残すこともあるため、初期の段階から継続して評価を行うことが重要です。中毒性表皮壊死症は角膜病変が主体であるため、フルオレセイン染色を用いて詳細に角膜を評価することが求められます。
また、中毒性表皮壊死症はマイコプラズマやウイルスが原因となることもあるため、感染症の有無を評価する検査も必要となります。
治療
中毒性表皮壊死症はスティーブンス・ジョンソン症候群から大多数が移行し、薬剤が原因になっていることがあるため、誘因となっている誘因となった薬剤の中止が求められます。さらに症状を抑えるため、ステロイドや免疫グロブリン療法、免疫抑制剤の使用、血漿交換療法などの集学的な治療が適宜検討されます。
ステロイドの使用方法としては 大量のステロイドを投与する「ステロイドパルス療法」も加味して決定します。病状を抑え込むことができたら、症状の再燃がないことを確認しながら徐々に用量を減量することになります。ステロイド治療中には、感染症にかかりやすい状態にもなるため、抗生物質の使用も適宜考慮します。ステロイド薬による治療効果が不十分な場合は、免疫グロブリン製剤静注療法や血漿交換療法を併用します。
中毒性表皮壊死症では、皮膚のびらんや、眼の粘膜症状も併発するため、局所に対しての治療アプローチも求められます。皮膚に対しては清潔を保ちながら軟膏、ガーゼ、創傷被覆材などを使用しますし、眼に対してはステロイドや抗生物質が含まれた点眼薬を使用します。
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