概要
喉頭炎とは、いわゆる“のどぼとけ”の中にある“喉頭”と呼ばれる部位に炎症が生じる病気のことです。主な原因はウイルスによる感染症ですが、細菌などの感染、喫煙、声の出し過ぎなどさまざまな原因があります。
症状の現れ方には2つのパターンがあり、急激に症状が現れる“急性喉頭炎”と慢性的な刺激により症状が続く“慢性喉頭炎”に分けられます。急性喉頭炎では発熱、喉の痛み、咳、声嗄れといった症状が現れ、慢性喉頭炎では声嗄れが主な症状となります。
炎症により喉頭の腫れが強くなった場合、空気の通り道が高度に狭くなることによる息苦しさの出現に注意が必要です。なお、喉頭炎の多くは1週間程度の自然経過により寛解しますが、必要な際は対症療法を行い、原因によっては抗ウイルス薬や抗菌薬を使用します。
原因
喉頭炎のもっとも多い原因はウイルスですが、細菌や非定型病原体によることもあります。そのほかにも喫煙、声の出し過ぎなども喉頭炎の原因となることがあります。
さらに、喉頭炎は逆流性食道炎が原因や増悪因子となることも知られています。
症状
喉頭炎は症状が急激に現れる“急性喉頭炎”と慢性的な刺激により症状が続く“慢性喉頭炎”の2つのタイプに分けられます。
急性喉頭炎はウイルス感染によって引き起こされることが多く、発症すると発熱、喉の痛み、咳、声のかすれ、物の飲み込みにくさなどの症状が現れます。重症な場合では、声帯付近が腫れると声嗄れが強くなってほとんど声が出なくなり、喉頭蓋が腫れると呼吸困難感が生じます。また、喉のむずがゆさを自覚して、しつこい咳を伴うケースもあります。なお、声帯付近が腫れた場合、成人では声嗄れが主症状ですが、乳幼児の場合には呼吸困難を生じやすいのが特徴です。
一方、慢性喉頭炎は、声の酷使や喫煙による刺激が長期間喉頭に加わることで、声嗄れや咳が長期にわたって続きます。症状が現れた当初は、声が嗄れても少し休むと元に戻っていたとしても、徐々に症状が持続して回復しなくなるというのが特徴です。また、炎症が長期間にわたると、声が低音化してしゃがれ声となるのも特徴的です。さらに、喫煙が長期間の場合には、炎症による声嗄れと思っていたら、実はがんが原因ということもあり、注意が必要です。
検査・診断
喉頭炎が疑われるときは以下のような検査が行われます。
喉頭内視鏡検査
喉頭炎の診断には、喉頭の状態を確認する検査が必要です。そのため、内視鏡を用いた検査が行われます。内視鏡検査では、喉頭の動き、できものや潰瘍性病変の有無、そして空気の通り道が十分確保されているかどうかなどをチェックします。声嗄れがある場合、声帯の振動や対称性などを細かく診断するために、発声時の声帯の運動をスローモーションで観察することができるストロボスコピーという検査を行います。
血液検査
炎症の程度など、全身の状態を評価する目的で血液検査を行うことがあります。
ウイルス・細菌検査
症状や所見によっては、ウイルスの迅速診断キットによる検査や、細菌の培養検査を行います。
治療
喉頭炎の治療は、全身管理と呼吸管理が基本です。特に体と声の安静、十分な水分の摂取、喉の痛みが強い場合には、解熱鎮痛薬により症状を緩和します。また気道の分泌物が多い、あるいは粘度が高い場合には、気道の粘液を出しやすくし気道粘膜を整える薬を使用します。さらに、胃食道逆流がある場合には、プロトンポンプ阻害薬などの胃薬で病気のコントロールを行います。気道が腫れて呼吸が苦しい場合は、副腎皮質ステロイドなどの吸入薬を使用することもあります。
予防
喉頭炎の原因としてもっとも多いのはウイルス感染です。ウイルス感染を予防するには、手洗いや手指消毒などの基本的な感染対策が必要となります。また喫煙、声の出し過ぎなどの習慣が原因となることもあるため、喫煙量を減らし、声の出し方に注意することも必要です。特に乾燥する冬場などには、加湿することも予防策となります。また、仕事上声を沢山使う方の場合には、季節を問わずこまめな水分摂取を心がけてください。
一方で、喉頭炎は逆流性食道炎が原因や増悪因子となることもあるため、適切な治療を行って治癒を目指すようにしましょう。
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