症状
乾癬は大きく分けて5つのタイプに分類され、それぞれの症状は以下のとおりです。
尋常性乾癬
髪の生え際も含む頭部や肘、膝、背中から腰やお尻、すねなど、こすれやすい部分に症状が現れます。ときには陰部や腋の下、手のひらや足の裏にも症状が出ることがあります。
症状は通常、皮膚が赤くなる紅斑や、皮膚表面が小さく盛り上がった発疹から始まります。時間の経過とともに、これらの発疹は徐々に隆起し、ごわごわと硬くなっていきます。症状が進行すると、発疹の表面にふけ状の鱗屑が付着し、それがポロポロとはがれ落ちる現象(落屑)がみられるようになります。
特徴的なのは、個々の発疹が互いにつながり合って、より大きな範囲に広がっていくことです。これにより、まるで地図のような不規則な形をした皮膚の変化(局面)が形成されます。この局面が大きくなると、表面は銀白色のかさぶた状になります。このかさぶた状の部分は、無理に剥がそうとしても簡単には取れず、むしろ出血する可能性があるため、注意が必要です。
また、爪が変形したり濁ったりする症状が現れることもあります。かゆみを感じる方もいますが、症状が落ち着くとかゆみがなくなることもあります。特徴的なのは、傷ついたりこすれたりした場所に新しい症状が出やすいことです。これは「ケブネル現象」と呼ばれ、皮膚が刺激を受けた箇所に新たな乾癬の症状が現れる現象のことを指します。
乾癬性関節炎
乾癬性関節炎は、皮膚症状に加えて関節症状を伴う乾癬の一種です。多くの場合、関節リウマチと同様に手指の関節炎として症状が始まりますが、脊椎(背骨)を含む全身のあらゆる関節に影響を及ぼす可能性があります。症状は関節のこわばり、腫れ、痛みなど多岐にわたり、進行すると不可逆的な関節の変形をもたらす恐れがあります。
特筆すべきは、乾癬性関節炎が関節リウマチとは異なるメカニズムで進行することです。具体的には、関節そのものよりも、腱や靱帯など骨に付着する部分における炎症から始まることが明らかになっています。
注意が必要なのは、皮膚症状が頭部や陰部など隠れた部位に限局し、患者の訴えがほとんど関節症状のみである場合です。このような症例では、乾癬性関節炎の診断が見落とされる可能性があります。
適切な診断と関節の評価を行うためには、皮膚科医だけでなく、リウマチ科や整形外科など他の専門科との緊密な連携が極めて重要です。
滴状乾癬
主に小児や若年者にみられる乾癬です。多くの場合、扁桃炎などの溶連菌感染症が引き金となって発症します。特徴的な症状として、小さな盛り上がり(丘疹)が全身に広がりますが、これらの丘疹は通常、互いに融合することは少ないです。
滴状乾癬の経過は一般的に急性であり、適切な治療を受ければ比較的短期間で改善することが多くあります。しかし、再発を繰り返す可能性があり、その過程で個々の丘疹が融合して大きな皮疹(局面)を形成し、最終的に尋常性乾癬へ移行することもあります。
乾癬性紅皮症
乾癬性紅皮症では、全身に赤い発疹(紅斑)が広がり、皮膚全体が真っ赤に炎症を起こして痛々しい状態となります。同時に、皮膚表面から大量の鱗屑が絶えず剥がれ落ちる現象(落屑)がみられます。
この症状は多くの場合、尋常性乾癬から進行して発症します。膿疱性乾癬と並んで乾癬の重症な亜型として知られており、皮膚症状だけでなく全身に影響を及ぼします。また、発熱、悪寒、強い倦怠感などの全身症状を伴うことが多く、症状の重篤さから入院による治療が望ましいとされています。
膿疱性乾癬
尋常性乾癬の発症後に続いて起こることもありますが、突然発症することもあります。
膿疱性乾癬を発症すると膿を含んだ小さな発疹(膿疱)が現れるようになります。手や足など体の一部に限局して現れる場合もあれば、全身に広がる場合もあります。全身に広がった場合は発熱や強い倦怠感などの全身症状を伴うことがあります。
さらに重症化すると、皮膚が広範囲に赤くなる紅皮症を併発し、入院による全身管理が必要になる場合もあります。特に、全身に膿疱が広がるタイプは膿疱性乾癬(汎発型)と呼ばれ、国の難病に指定されています。
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