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人工関節手術における術前術後のフォローアップ

人工関節手術における術前術後のフォローアップ
坪田 次郎 先生

医療法人伯鳳会 大阪中央病院 整形外科 副院長兼リハビリテーション科部長

坪田 次郎 先生

目次
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進行・末期の変形性関節症の治療の1つとして、人工関節手術があります。ただし、手術を受けてもすぐに歩けるわけではありません。人工関節手術を受けた後、歩行機能の回復のためにはリハビリテーションが重要です。大阪中央病院では、リハビリテーションにもロボットを利用しています。

今回は、大阪中央病院 整形外科 副院長・リハビリテーション科部長の坪田 次郎(つぼた じろう)先生に人工関節手術の術前術後のフォローアップについてお話を伺いました。

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人工関節手術の後には、リハビリテーション(以下、リハビリ)をしっかりと行うことが重要です。特に膝関節の場合、手術を受けただけでは歩行することができません。歩行のためには、リハビリによっていったん低下した膝周囲の筋力を回復させ、変形によりバランスの崩れた歩き方を改善する必要があります。

また、関節は動かさなければ固まってしまいます(関節拘縮(かんせつこうしゅく))から、そのような状態を防ぎ、関節の柔軟性を回復するためにも早期からのリハビリが欠かせません。

当院の人工関節手術は、術前計画の立案から術後のリハビリまでAI(人工知能)やロボットを活用していて、医療のDX(デジタルトランスメーション)化が1つの特徴です。これらを活用しながら、できる限り標準化した治療を提供するよう努めています。

人工関節手術では感染対策が重要です。基本的なことですが、手術はバイオクリーンルームで行い、感染を可能な限り防ぐために手術時間が長くならないよう努めています。また、縫合や抜糸を行うと皮膚表面の雑菌を体内に持ち込むリスクがありますので、当院では吸収糸と呼ばれるもので皮下縫合を行い、皮膚表面をテープで固定するようにしています。したがって抜糸の必要はありません。

術前に歩行アシストロボットによって、患者さんの歩行能力(設定した時間内に歩くことができた距離や歩数、速度など)と日常生活動作(ADL)の状態(立つ・座るなどの動作にどれくらい支障が出ているのか)を評価し、データとして記録します。

術後のリハビリの流れ

変形性膝関節症では術後3週間程、変形性股関節症では術後2週間程での退院を目標にリハビリを行います。変形性膝関節症の場合の標準的な流れは以下のとおりです。

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  • 手術翌日:リハビリ開始。車椅子に乗り移る練習、立位訓練や持続的関節他動訓練器(CPM)*を使って、膝の可動域を広げる訓練を行う
  • 術後2~3日:歩く練習をスタート
  • 術後1週間:杖を使った歩行練習
  • 術後2週間:屋内での独歩練習、屋外では引き続き杖を使った歩行練習、階段、段差昇降練習
  • 術後3週間:退院

*持続的関節他動訓練器:足を乗せておくと膝が動く機械。

リハビリのための術後疼痛管理における工夫 ~手術時の神経ブロックと各種鎮痛剤~

手術直後や翌日にかけて痛みが強く現れていると、リハビリをスムーズに開始することが難しくなってしまいます。リハビリが不十分になると関節のこわばりや筋力回復が遅れ、痛みの残存や歩行能の回復に支障をきたします。当院では、このような状態をできる限り避けるため、麻酔科の協力を得て術後の疼痛管理として神経ブロックを使用しています。神経ブロックとは、神経の周囲に局所麻酔薬を注入する方法で、変形性膝関節症の場合には、大腿神経(だいたいしんけい)と坐骨神経の神経ブロックを行いますが、ブロックは全身麻酔下に行うため特に痛みを感じることはありません。術後その効果が現れると痛みが緩和され、スムーズなリハビリへの移行が期待できます。

また術後には、消炎鎮痛剤とともに慢性疼痛治療薬(まんせいとうつうちりょうやく)も併せて服用していただき、できるだけ痛みを抑えた状態でリハビリに取り組めるよう工夫しています。これらの鎮痛薬は痛みが落ち着いたら徐々に減らしていきます。

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当院では、リハビリに歩行アシストロボットを導入しています。歩行アシストロボットは股関節の屈曲角度を感知して、蹴り出しなどをモーターの力でサポートします。また、歩行測定も可能です。

もともとは臨床研究の一環で、効率的にリハビリを実施できているか調査するために運用を開始しました。現在はそれだけではなく、患者さんが歩けることを体感できるシステムとして、モチベーション向上にも期待して運用を行っています。

具体的な活用法としては、まず手術の前に歩行の状態、距離や歩数、スピードやかかった時間などのデータを記録しておきます。そして術後1週間目、2週間目、3週間目というように、だいたい1週間おきに同じように計測を行います。歩行状態が数字のデータで目に見えるため、日々のリハビリの効果を感じられ患者さんのモチベーションアップにもつながっていると思います。

提供資料

術後3か月程は、当院の管理下で自己訓練を中心にリハビリを行っていただきます。それ以降は、定期的な受診とともに、ウォーキングなどを通して日常生活の中で活動性を高めていきます。また筋力訓練やストレッチといったホームエクササイズは可能な限り継続していただくことが膝の機能回復、維持には重要だと考えます。受診のタイミングは、だいたい退院後1か月目と2か月目、3か月目くらいです。それ以降は、特に問題がなければ2~3か月に1度など、間隔を開けて術後1年まで経過を診ていきます。受診時には基本的にはX線検査を行い、異常がないか診ていきます。併せて、自己訓練がきちんと行えているか確認します。

たとえば変形性膝関節症の場合は、自己訓練として膝の腫れが引くまでの約3か月は毎日膝の曲げ伸ばしの練習を継続して行っていただくことが大切です。

また、術後は筋力が弱っているので大きな段差や急な坂など、転倒のリスクがあるようなところを歩くことは控えてください。

術後3か月以降で膝の腫れや熱感が落ち着けば、ウォーキング、水泳やゴルフなど軽いスポーツなどもおすすめです。

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せっかく人工関節の手術を受けていただいても、しっかりとリハビリに取り組まなければ回復が難しくなってしまいます。術後の健康を維持するためにも、歩行機能の維持は非常に大切です。特に術後3か月は、リハビリに力を入れて歩行機能の回復に努めていただきたいと思います。そしていくつになっても自分の脚で歩き、健康な人生を楽しんでいただきたいと思います。

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