インタビュー

強皮症の診断と検査-自己抗体の種類によって病状が推測できる

強皮症の診断と検査-自己抗体の種類によって病状が推測できる
佐藤 伸一 先生

東京大学 医学系研究科皮膚科学 教授、 東京大学医学部附属病院 副院長

佐藤 伸一 先生

この記事の最終更新は2016年04月18日です。

強皮症は全身的な病気です。したがって、全身をくまなく検査することが必要になります。また全身をしっかり検査することで、何が正常で何が異常なのか正確に診断することができますので、治療方針を決定するためにも非常に重要となります。本記事では、強皮症の病状に非常に関連する自己抗体の種類や検査内容について東京大学医学部皮膚科学教室 教授 佐藤伸一先生にお話しいただきました。

すべての臓器を調べたうえで、病変がある臓器に対しての治療を行います。また、今後病気がどのような経過をたどるかをおおよそ予測するためにも全身的な検査が必要になります。

ほかの膠原病でも自己抗体の種類と病状の関連性はありますが、強皮症は特に関連が強いといえます。強皮症でみられる主な抗体は次の通りです。

限局皮膚硬化型全身性強皮症

抗セントロメア抗体

強皮症の症状は比較的軽症です。逆流性食道炎肺高血圧症があらわれるケースもありますので、検査・治療が必要になります。

びまん皮膚硬化型全身性強皮症

抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)抗体

全身性強皮症の約30%の患者さんが陽性となります。この抗体が陽性の場合、60~70%の患者さんに肺線維症があらわれ、皮膚硬化もあらわれます。

抗RNAポリメラーゼ抗体

この抗体が陽性の場合、皮膚硬化がありますが肺線維症は少なく、予後(病気の経過の見通し)は比較的よいです。しかし、陽性の方の10%が強皮症腎クリーゼを合併します。自宅で毎日血圧を測定してもらい、血圧が高くなってきたら病院を受診していただきます。

抗U1RNP抗体

膠原病のひとつである、混合性結合組織病の患者さんに高い確率で陽性になりますが、強皮症の患者さんでも陽性となります。この抗体が陽性の場合、他の膠原病の症状の一部を合併しやすくなります。

先述したとおり、全身性強皮症は全身の病気ですので、さまざまな検査を行います。施設によっても検査内容は異なりますが、東京大学医学部附属病院では以下のような検査を行います。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 皮膚生検
  • CT検査、MRI検査
  • 上部消化管造影検査
  • 下部消化管造影検査
  • ホルター心電図
  • 心臓超音波検査(心エコー)
  • 心臓カテーテル検査

⑴臓超音波検査(心エコー)、心臓カテーテル検査、ホルター心電図

心臓超音波検査(心エコー)、心臓カテーテル検査では肺高血圧症を主に調べます。東京大学医学部附属病院では、循環器内科と連携して心臓カテーテル検査で、肺高血圧症や心臓の機能を必要に応じて評価しています。心臓超音波検査(心エコー)は、実際は肺高血圧症があるのにもかかわらず検査結果が陰性となってしまう「偽陰性」が起こる場合があります。そのため、心臓カテーテル検査は心臓超音波検査(心エコー)に比べ手間がかかり、患者さんの負担もありますが、正確な評価を行うために必要に応じて実施しています。少しの異常も悪くなる前兆ととらえ、初期の段階からきちんとした検査・治療が必要と考えています。またホルター心電図で不整脈などの評価も行い、循環器内科の医師と密に連携して心臓の状態を評価しています。

⑵皮膚生検

皮膚生検は診断のために使用するだけではなく、生検で組織を採取し、研究に活用しています。治療の進歩のためには、皮膚生検による組織の採取は非常に重要です。

⑶CT検査、MRI検査

CT 検査は X線を、MRI 検査は磁気を使って体の内部を描き出します。CT検査では、肺線維症を検査します。また、強皮症抗リン脂質抗体症候群APS自己免疫疾患のひとつ)を合併することがあるので、MRI検査などで血栓の有無を調べます。

繰り返しになりますが、強皮症は全身の病気ですから、甲状腺の機能や腎機能に至るまで、全身をくまなく検査します。検査結果を受けて現在の病態や今後の治療方針を決定することができます。

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  • 東京大学 医学系研究科皮膚科学 教授、 東京大学医学部附属病院 副院長

    佐藤 伸一 先生

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