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インタビュー

強皮症の治療―疾患修飾療法と対症療法

強皮症の治療―疾患修飾療法と対症療法
桑名 正隆 先生

日本医科大学 大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野 大学院教授  、日本医科大学付属病院...

桑名 正隆 先生

全身性強皮症(以下、強皮症)はレイノー現象と呼ばれる指先の色の変化を初期症状とし、皮膚が硬くなるほか、進行すると内臓機能も障害される慢性疾患です。日本医科大学付属病院リウマチ・膠原病内科部長であり、同大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野教授の桑名正隆先生は、強皮症による肺高血圧症・間質性肺疾患の診療における第一人者として、重症の患者さんを数多く診てこられました。強皮症の治療における「疾患修飾療法」と「対症療法」についてお話をうかがいました。

強皮症だけでなく難病といわれる他の病気にもいえることですが、原因がわかってない病気では原因を是正する根治的あるいは治癒を目指した治療はできません。そこで、治癒を目指す治療とは別の考え方として、関節リウマチなどでも広く普及している治療戦略は「疾患修飾療法」です。これは、無治療でみられる病気の自然の経過を、薬物療法で「修飾」することによって変化させるという考え方です。具体的には、進行のスピードをゆっくりにしたり、止めたりすることです。

もうひとつの治療法は「対症療法」です。これは病気の進行によって起こってしまった障害に対して症状を和らげるために行うものです。病気の進行を止める効果はなく、たとえば呼吸不全になったら酸素を吸わせるといった治療を指します。強皮症の治療は疾患修飾療法と対症療法の2つの構成要素から成ります。

当然のことながら、病気が発症してから早期であるほど疾患修飾療法が主体になり、病気になってからの期間が長くなれば起こってしまった機能障害に対する対症療法が主体になります。したがって、発症から治療開始までの期間によって治療内容は大きく変わります。

強皮症の診療では、早期における病気の認識や専門施設への紹介がうまく機能していないという早期診断の問題に加えて、強皮症の診断がついた以降にも、少なくとも2つの課題があります。

ひとつは、この病気に対して有効性が証明された治療法がないため(エビデンス[医学的根拠]がないとも表現されます)、治療を放棄し、漢方薬やビタミン剤を処方したり、あるいは治療をしないと判断をする医師がいることです。

もうひとつは、他の膠原病の多くでステロイドが有効であることから、医学的な根拠がないにもかかわらずステロイドで治療する医師がいることです。関節の痛みやむくみは軽減することがありますが、疾患修飾作用はなく、漫然と継続すれば副作用だけが残る結果になります。このような誤った治療により、副作用で苦しむ患者さんがいるのです。

このように、せっかく強皮症と診断されても、適切な治療を受けられず、まったく治療されない、あるいは不必要な治療が行われているのです。残念ながら日本では世界標準に合致した強皮症の治療を受けられる施設は非常に限られています。東京や大阪でも限られた施設しかありません。

強皮症における内臓の障害は、自覚症状が出た時点では、かなり進行した状態といっても過言ではありません。たとえば間質性肺疾患であれば、労作時の呼吸の苦しさが出ているということは肺活量のかなりの低下があるということです。肺高血圧症の場合、動いた時に息切れがあれば、すでに心拍出量が相当低下しているか、右心不全に近い状態です。慢性の下痢や便秘だけでなく体重が減ってきたら、すでに腸の消化・吸収機能が高度に低下しています。

したがって、自覚的な症状が出た時点で手遅れなのです。たとえその段階で強皮症の診断に至って治療を始めても改善する余地が少ないため、対症療法に専念せざるを得ないのです。

手指の色が段階的に白、紫、赤くになり冷たくなるレイノー現象、あるいは手指のむくみが出現した初期の段階では、通常は内臓の高度の障害はなく、自覚症状もほとんどありません。だからこそ、患者さんは更年期障害などと軽く考えてしまうのです。しかし、その時点でも、皮膚、血管、内臓の病態は潜在的に進行しているのです。

私たちの体には予備能力があります。たとえば、手術で肺を片方取っても大きな支障なく生活できます。自覚症状があるということは、その予備能力を超えて障害されてしまったことを意味します。自覚症状のない、あるいは軽い初期の段階で、病気の自然経過を変える疾患修飾療法をタイムリーに行うことによって、その後の病態の進行を止めることが現在の強皮症治療の目標なのです。

 

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  • 日本医科大学 大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野 大学院教授 、日本医科大学付属病院 リウマチ・膠原病内科 部長

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