概要
肺気腫とは、本来の肺構造が破壊されて空気がたまってしまい(気腫)、うまく息を吐けなくなってしまう病気を指します。原因の多くは喫煙であり、たばこに含まれる成分によって正常な肺組織が破壊されることで病気は発症します。
肺気腫を発症すると少し歩くだけでも息苦しくなり、日常生活のちょっとした動作にも支障をきたすようになります。肺組織が破壊されて空気がたまることで、心臓に負担もかかりやすくなり心不全を合併することもあります。
現在の医療をもってしても一度壊れた肺組織をもとに戻すことは困難であり、残された肺組織をうまく利用することを目的として、内服薬や吸入薬、酸素吸入などを中心とした治療介入が行われます。また、喫煙が密接に病気の発症に関わっているため、禁煙を行うことも必須であるといえます。
原因
肺の役割
鼻や口から吸い込んだ空気は、気管や気管支を経て肺へと送り込まれます。肺の中でも、空気の最終到着地点にあたる部位を肺胞と呼びます。
肺胞はブドウの房のような形をしており、一つひとつの小さい部屋に分かれています。その部屋にはそれぞれ空気が含まれており、酸素が血液中に取り込まれたり、二酸化炭素が排出されたりといった呼吸機能を果たしています。
しかし、肺気腫では一つひとつの部屋のあいだの仕切りの壁が壊れてしまい、小さい部屋同士が空間的なつながりを持つようになっています。
肺気腫が起こる原因
肺気腫が起こる原因として最も多いのは、習慣的な喫煙です。直接的な喫煙だけではなく、長年の受動喫煙でも肺胞が壊されてしまい、肺気腫を発症する原因となりえます。
また大気汚染物質の吸引も原因となります。そのほかにも、α1アンチトリプシン欠損症と呼ばれる遺伝的な疾患を原因として肺気腫を発症することもあります。
肺気腫には、慢性気管支炎を合併していることがほとんどであり、両者を含めて慢性閉塞性肺疾患と呼ぶこともあります。肺気腫と慢性気管支炎は、原因や特徴に共通点も多いです。
症状
肺気腫を発症すると、肺での正常な呼吸活動ができなくなるため、呼吸困難を生じるようになります。具体的には、少し歩いただけでも息切れを感じたり、慢性的に咳や痰が出るようになったりします。
さらに、息を吐くことに困難が生じるため、少しでも呼吸を楽にするために口を小さくすぼめた状態で息を吐くようになります。また、陥没呼吸や肩呼吸、喘鳴(呼吸に際してヒューヒューと音がすること)といった症状がみられるようになります。
肺気腫は基礎となる呼吸機能が低下してしまっていますので、ちょっとした風邪を引いただけでも呼吸困難を強く感じやすくなります。呼吸運動に多くのエネルギーを割く必要があるため、体重が減るといった症状がみられることもあります。
検査・診断
画像検査・呼吸機能検査・血液検査が中心に行われます。画像検査では胸部単純レントゲン写真やCTによって、破壊された肺胞を反映した画像所見を得ることができます。
肺気腫は、呼吸動作のなかでも特に、息を吐くという動作に支障が生じる病気です。そのため、呼吸機能検査(スパイロメトリー)を行った際には、強制的に息を吐かせる呼気動作に関連した異常所見が確認されます。
さらに、酸素や二酸化炭素のガス交換に異常が生じるようになります。血液ガス検査を行うことで、血液中の酸素量低下や二酸化炭素量の増加を確認します。
治療
肺気腫は、喫煙に関連して発症することが多いため、禁煙を行うことが必要不可欠です。禁煙はニコチンへの依存性の問題から自身の意志だけでは実行することができないことも多く、禁煙補助薬の使用が考慮されることもあります。
また、肺気腫で破壊された肺胞を元通りに戻すことは、現在の医学ではできません。そのため、残された肺の機能を基にして症状を緩和できるような治療が行われます。
具体的には、吸入薬を使用することで気管支を拡張させて息を吐きやすくさせます。そのほか、去痰薬や鎮咳薬といった対症療法薬が使用されることもあります。
また、呼吸の仕方を工夫することで、呼吸困難を軽減することも可能です。呼吸リハビリテーションを通して、口すぼめ呼吸や腹式呼吸を習得していただくこともあります。
さらに肺気腫の程度が強い場合には、酸素濃度が非常に低下することもあります。その場合には、在宅酸素療法が行われることもあります。また、肺気腫では体重減少がみられることもあるため、十分な栄養摂取を心がけることも大切です。
そのほか、風邪をきっかけとして呼吸状態が悪化することもあるため、風邪を引かないように規則正しい生活を送ることや、インフルエンザワクチンを打つなどの対策を講じることも重要です。
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