インタビュー

退院後の在宅酸素療法-止めどきとはいつか?

退院後の在宅酸素療法-止めどきとはいつか?

筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

梶 有貴 先生

徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年04月05日です。

肺炎心不全のように重篤な疾患や、COPD慢性閉塞性肺疾患)をはじめとする肺疾患の発作が起こると、呼吸が困難になることがあります。自力での酸素吸入がうまくいかない場合、退院後も酸素を供給する必要があり、自宅で「酸素補充療法」を受けることがあります。

酸素補充療法とは、タンク(酸素ボンベ)や専用の機械により肺や心臓、各臓器へと酸素を供給する手助けをするものです。酸素を供給することで、体は強くなり、意識ははっきりとしていきます。また、繰り返し低酸素状態になることにより死に至ることもあるCOPD(重篤な慢性閉塞性肺疾患)から、患者さんの生命を守ることもできます。

しかし、酸素療法を必要以上に長期間受け続けている方も多々見受けられます。ですから、酸素療法を始めるときには、「酸素療法はやめられるのか、また、具体的にはいつやめられるのか」を担当医に尋ねたほうがよいでしょう。また、担当医の指導を仰ぎながら、経過観察のための検査を受けることも大切です。その理由を次項以降に示します。

酸素療法は、重篤な発作の直後であれば症状を和らげるために有用です。しかし、一旦回復した後であれば、特段必要はありません。一般的に酸素投与が必要かどうかは、次の2つの検査でわかります。

ひとつは「パルスオキシメーター」といわれる、機器を指先に挟んで血中酸素飽和度をモニタリングするものです。もうひとつは「血液ガス検査」で、こちらは手首の橈骨動脈(とうこつどうみゃく)から採血をする検査です。

検査結果をみると、検査を受けた人のうち数名は数週間以内に、半数の人は2~3か月以内に回復しています。このような患者さんが酸素療法を受け続ける意味やメリットはありません。酸素療法を中止したとしても、検査を受けずに在宅酸素療法を継続している患者さんとの差異は生じません。

・在宅酸素療法で用いる酸素ボンベとその供給機器は火災を招く危険があります。特に暖炉、ストーブ、タバコの火の近くで使用することは危険です。

・酸素の吸入に使うチューブ(鼻カニューレ)は、転倒や階段からの転落を招く原因にもなります。

・鼻カニューレは物理的刺激や鼻出血の原因にもなります。

・酸素ボンベと繋がれたまま生活を送ることは、様々な面において不便です。恥ずかしいと感じる人も多く、社交的、活動的でなくなることも多々あります。

米国のメディケア対象者の場合、在宅酸素療法に1か月あたり約200~300ドル(日本円で約22000円〜33000円)の費用がかかっています。自己負担額はそのうちの5分の1(40~60ドルほど)で、追加保険料がかかることもあります。

在宅酸素療法利用者は、米国においてはこの10年間でほぼ2倍に増えています。(※2014年5月時点)しかし、患者さんの半数は、酸素療法開始後2~3か月経っても経過観察の検査をなされていません。そのため、酸素療法を続けるべきか中止するべきか判断することができずにいます。

正常な血中酸素濃度は88%以上です。在宅酸素療法は血中酸素濃度が88%以下の場合に有用です。

また、ある時間帯のみ酸素の補充が必要な人もいます。例えば、運動時や睡眠時、あるいは血中酸素濃度が88%以下になった時にのみ酸素療法を使用しましょうと指示を受けることもあります。

尚、在宅酸素療法を始めた方は、決して自己判断で酸素を減らしたり中止してはいけません。変更や中止の必要性を感じたときには、主治医と相談することが大切です。

・パルスオキシメーター:「パルスオキシメーター」という医療機器を、指先や耳たぶに挟むように装着します。光を使って血中の酸素量を測定することができます。

・血液ガス検査:より正確な評価が必要な場合は、医療者により手首の橈骨動脈(とうこつどうみゃく)から採血する「血液ガス検査」を行います。

在宅酸素療法を受ける必要が生じないよう心掛けることが大切です。酸素投与の必要性を減らすため、次に挙げる2つの重要なポイントを押さえましょう。

喫煙は肺や心臓に非常に悪い影響をもたらします。タバコを吸えば吸うほど、より長期の在宅酸素療法が必要になると考えましょう。

禁煙するための手助けが必要な場合は、医師に相談しましょう。ニコチンパッチや禁煙薬などを用いた治療法を紹介してくれるでしょう。

担当医に呼吸器リハビリテーションセンターや他の理学療法プログラムを紹介してもらえないか、相談してみましょう。呼吸訓練や、体をよりしっかりと動かす方法を知ることができるでしょう。定期的に運動することで、長期にわたる酸素投与の必要性を減らすことができます。また、ストレスや不安を軽減する方法は、息切れを起こしたときにも応用できます。

・常に火の元から離れるようにしましょう。特に、酸素ボンベとその供給機器の近くでタバコを吸うことは厳禁です。機器の使用方法に従い安全に使用しましょう。

・呼吸器内科医や呼吸療法士の話を聞き、正しい機器の使い方を学びましょう。
 

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 倉敷中央病院 花田沙穂

監修:梶有貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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  • 筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

    日本内科学会 認定内科医日本感染症学会 会員

    梶 有貴 先生

    初期診断能力、初期治療能力に加え入院患の急性期・亜急性期の診断・管理も請け負う「病院総合医」の能力をもった、「日本型病院総合医」を目指すべく筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院に勤務。若手医師をリーダー的立場から牽引している。Value Based Medicineを推進する立場から、この度Choosing Wisely翻訳プロジェクトに参画。

  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    日本内科学会 総合内科専門医日本プライマリ・ケア連合学会 指導医・プライマリ・ケア認定医

    徳田 安春 先生

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