インタビュー

変形性膝関節症の治療-サプリメントは効かない       

変形性膝関節症の治療-サプリメントは効かない       
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任...

徳田 安春 先生

筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

梶 有貴 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年01月17日です。

変形性膝関節症を患う人の多くは膝に痛みを抱えており、患者さんは市販の痛み止めを用いる ことで、手術を避けたいと考える傾向があります。グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントが有名で、Nutrition Business Journal によると、アメリカ国民は2012年の1年間で、これらのサプリメントに81.3億ドル(日本円にして約1兆円)も費やしたとされています。

膝の痛みは、関節軟骨の破損によって引き起こされます。関節軟骨は、膝やその他の関節の末端を覆う強くて柔軟な組織で、グルコサミンとコンドロイチンにより構成されています。しかし、これらは痛みの緩和という面においては、それほど有効ではありません。一体なぜなのでしょうか。

多くの研究で、グルコサミンやコンドロイチン硫酸は、膝関節の痛みを緩和するには有用でないと示されています。サプリメントを飲んで痛みや腫れが引いたと言う人も多いのですが、有効成分の無い「suger pill(砂糖の錠剤)」を偽薬として飲んでも同様の結果が得られます。アセトアミノフェンやイブプロフェンといった鎮痛薬の方が、上記のサプリメントよりは、よほど効果的です。

グルコサミンとコンドロイチン単体ならば有害ではありませんが、他の薬物と相互作用を起こす場合があります。例えば、ワルファリンカリウム(抗凝固薬)の効果を増大させ、出血リスクを高めてしまうことがあります。アメリカでは、高齢者で救急搬送の原因第3位がワーファリン関連の問題です。

毎日グルコサミン/コンドロイチンのサプリメントを飲んだとすると、1年間でおよそ130ドルも支払うことになります。さらに悪いことに、ボトルのラベルに書かれていることには間違いも多々あるのです。2013年に、コンシューマーレポートが16種類の関節痛のサプリメントを調べたところ、7つのサプリメントで表記よりもコンドロイチンの含有量が少ないということが明らかになりました。

膝関節痛を緩和させるための、より良い方法を紹介します。

・運動療法

・減量

・アセトアミノフェン(鎮痛)

・イブプロフェン(鎮痛薬)

・ナプロキセン(鎮痛薬)

これらの方法でも不十分なら、注射や手術といった治療について医師と相談しましょう。

変形性膝関節症の痛みを緩和させるためのステップ

・体重の減量

1kg体重を減らすと、歩行時に膝にかかる圧力を4kg分も減らすことができます。

・運動

膝を強くするために、筋力トレーニング、特に太ももの前にある四頭筋を強化するためのトレーニングを行いましょう。有酸素運動をすると、体力がつき、痛みも減らすことができます。ストレッチは筋肉が固まってしまうのを防ぎます。ジムなどに行って、変形性膝関節症の人向けのエクササイズがないか聞いてみましょう。

・道具の使用

杖や歩行器を使うことで、膝の負担を減らせます。医学的に必要な場合は保険でのカバーが可能です。

・温める、冷やす

温湿布で、関節の固まりとひりひりする感覚を緩和できます。急性の痛みや腫れには冷湿布を用いましょう。

・マッサージ

Deep‐tissue massaegeは、2010年のコンシューマーレポートオンライン読者から高い評価を得ました。半数が「とても効果があった」と言っています。

・イブプロフェンとナプロキセンは痛みと炎症を和らげてくれます。ただし、長期間服用すると、胃からの出血と高血圧を引き起こす危険性があります。使用するのは短期間に留めましょう。

・アセトアミノフェンも疼痛(とうつう)緩和に有効ですが、高用量だと肝臓にダメージを与えてしまいます。1日3000mg以下になるようにしてください。

 

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能 佐竹

監修:梶有貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    日本内科学会 総合内科専門医日本プライマリ・ケア連合学会 指導医・プライマリ・ケア認定医

    徳田 安春 先生

    徳田 安春 先生の所属医療機関

  • 筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

    日本内科学会 認定内科医日本感染症学会 会員

    梶 有貴 先生

    初期診断能力、初期治療能力に加え入院患の急性期・亜急性期の診断・管理も請け負う「病院総合医」の能力をもった、「日本型病院総合医」を目指すべく筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院に勤務。若手医師をリーダー的立場から牽引している。Value Based Medicineを推進する立場から、この度Choosing Wisely翻訳プロジェクトに参画。

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