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ロボティックアーム手術支援システム“Makoシステム”を用いた人工膝関節置換術

ロボティックアーム手術支援システム“Makoシステム”を用いた人工膝関節置換術
高木 健太郎 先生

NTT東日本関東病院 整形外科・スポーツ整形外科・人工関節センター

高木 健太郎 先生

目次
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NTT東日本関東病院では、ロボティックアーム手術支援システムの“Makoシステム”を導入し、変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術を行っています。同院におけるMakoシステムを用いた人工膝関節置換術の特徴や手術の流れについて、整形外科・スポーツ整形外科・人工関節センターの高木 健太郎(たかぎ けんたろう)先生にお話を伺いました。

NTT東日本関東病院ではロボティックアーム手術支援システムである“Makoシステム”を導入しており、人工膝関節置換術を行う場合には、ほぼ全てでMakoシステムを使用して手術を行っています。このシステムには、大きく下記の3つの特徴があります。

1つ目に、手術の正確性を向上させることができます。Makoシステムによる人工膝関節置換術では、術前に撮ったCT検査をもとに人工関節のインプラントを入れる場所を特定し、ロボティックアームによって術前に立てた計画どおりに手術を行います。それにより、人間の手のみで行う場合よりも正確に手術を行うことができます。

2つ目に、患者さんの身体的侵襲が軽減されます。通常の手術では、骨を切るのに用いるガイドを設置するために関節周辺をある程度大きく切り広げる必要があります。しかし、Makoシステムを用いた人工膝関節置換術では、Makoシステムが関節の骨の形を認識してくれるのでガイドの設置が不要となり、切り広げる範囲が少なくて済みます。これにより、手術による身体への侵襲を減らすことが期待できます。

3つ目に、手術の安全性を向上させることができます。Makoシステムは術前に立てた計画に基づいて手術を行うので、骨切りする予定の範囲を越えないようアームが自動的に制御されます。これにより、関節周囲にある主要な靱帯や太い血管、神経などを誤って傷つけてしまうリスクを回避できるため、手術の安全性が向上します。

上述したように、より正確な手術を目指せるMakoシステムですが、従来の手術よりも手術時間が多少長くなってしまうという留意点があります。そのため当院では、たとえば心臓が弱いなどで少しでも早く手術を終えないといけないという方には従来の方法による手術を検討することもあります。

また、Makoシステムを使う場合は骨にピンを打つ必要があるため、頻度は非常に少ないものの、そこから骨折を生じたという報告もあります。

人工膝関節置換術には、関節全てを人工関節へと置き換える人工膝関節全置換術と、痛みがある部分のみを人工関節に置き換える人工膝関節単顆置換術という2種類の手術方法があります。
当院では、人工膝関節全置換術と人工膝関節単顆置換術のどちらにもMakoシステムを導入しています。膝蓋(しつがい)骨(膝のお皿)以外の置換であれば、Makoシステムで手術を行うことが可能です。

当院の場合、人工膝関節置換術の手術を行う約1か月前から血液検査や心電図検査などを行い、手術を受けることができる健康状態かどうかを確認します。人工関節のインプラントを入れる位置などの術前計画を行うためのCT検査も同時に行います。

また、手術前からリハビリテーションを行い、少しでも膝の動きを改善しておいていただくようお願いしています。膝の動きや歩き方は、リハビリテーションを担当する理学療法士がチェックします。

基本的には手術前日に入院していただきます。日常的に服用されている薬のほとんどは服用していただいてかまいませんが、手術に影響のある薬は、手術直前に服用を中断していただくこともあります。

できるだけ手術後の痛みが出ないように、さまざまな方法で痛みをコントロールするようにしています。入院期間は、リハビリテーションの期間も含め2~3週間程度となります。

手術によって起こる可能性のある合併症は、感染症、深部静脈血栓症肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)、術中骨折、膝窩動脈損傷(しつかどうみゃくそんしょう)、神経損傷、などがあります。

感染症や深部静脈血栓症、肺塞栓症などはMakoシステムの使用の有無にかかわらず起こり得る合併症ですが、たとえば膝窩動脈損傷はMakoシステムによって回避することができます。膝窩動脈とは膝の裏にある主要な動脈で、損傷すると下腿壊死などの重篤な後遺症につながることがありますが、Makoシステムのアームは予定の骨切り範囲を越えないよう制御されるため、誤って大事な動脈や神経を損傷してしまうリスクを回避できるのです。

手術後は、多くの患者さんが約2~3週間で杖などを用いて歩けるようになります。杖で歩けるようになれば日常生活が送れますので、これが退院の目安となります。また、術前・術後の状態や日常の生活環境などによってはリハビリテーションに少し時間がかかる場合もあり、退院後もリハビリテーションに通っていただくこともあります。

仕事復帰の時期は職種によっても異なりますが、デスクワークであれば比較的早期に復帰していただくことも可能です。ただし、通勤などの負担もありますので、しばらくはあまり無理をしないようにご提案しています。

退院後、歩行が可能になり日常生活を送ることができるようになっても、定期的に外来受診をしていただくようお願いしています。人工関節に不具合が生じていないことを確認するために定期的な単純X線検査を受けていただく必要があります。

変形性膝関節症は命に直接関わる病気ではないため、人工膝関節置換術も必須の治療というわけではありません。ただし、保存療法だけでは痛みが十分に改善できない場合に、QOL(生活の質)を向上させるための選択肢の1つです。「手術を受けるのは怖い」という方に無理に行なう治療法ではありませんが、日常の膝の痛みがつらいのならば、我慢し続けるのではなく手術という選択肢も検討していただければと思います。

また、手術後は基本的に手術を受けた病院で通院を続けていただく必要がありますので、手術を受ける際には事前によく検討して、術後のリハビリテーションやサポートまでしっかりと対応してくれる病院を選ぶことをおすすめします。

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