疾患啓発(スポンサード)

変形性膝関節症とは? 症状や原因、予防について解説

変形性膝関節症とは? 症状や原因、予防について解説
月村 泰規 先生

北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植センター センター長

月村 泰規 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

私たちは普段、膝の円滑な動きにより、歩行や階段昇降などの日常的な動作をこなしています。変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、膝の軟骨組織がすり減ることによって痛みが生じる病気で、特にご高齢の女性に多い病気です。変形性膝関節症は、進行すると日常生活にも影響が及ぶため、症状に対する予防や治療を行うことが重要です。

変形性膝関節症にはどのような特徴があり、どのような原因によって起こるのでしょうか。また、変形性膝関節症は予防できる病気なのでしょうか。北里大学北里研究所病院の月村泰規(つきむら やすのり)先生にお話を伺いました。

変形性膝関節症の症状とは?

変形性膝関節症の主な症状は痛みです。

初期は歩行時に痛みを感じない方が多く、階段の昇り降り、正座などの動作を行った際に痛みが出るという特徴があります。さらに進行すると、就寝時や歩行時、椅子からの立ち上がりなどの動作でも痛みを感じるようになり、O脚に変形が起こったり、膝を完全に伸ばすことができなくなったりします。また、個人差はありますが、患者さんによっては夜間に痛みが現れたり、膝が腫れたりすることもあります。

変形性膝関節症は、その発症要因によって2つに分けられます。1つは、明確な要因がない加齢変化や、肥満が要因の一次性変形性膝関節症、もう1つは、けがや病気などの明確な要因がある二次性変形性膝関節症です。

一次性変形性膝関節症は、加齢や性別、体重、スポーツによる膝のオーバーユース*などのさまざまな因子が複雑に絡み合うことで発症すると考えられており、要因が単一ではありません。特に、高齢になるにつれ罹患率が高くなることから、発症要因として加齢が関与しているといわれています。また、軟骨は加齢により劣化することが確認されており、軟骨の擦り切れる量に対する修復能力が追いつかなくなることも要因の1つになりうると考えられています。

一方、二次性変形性膝関節症は、膝周辺の靱帯(じんたい)や半月板の損傷、関節炎骨折、代謝性疾患などの明確な要因があり、骨粗鬆症も原因の1つになりうると考えられています。

*オーバーユース:使いすぎている状態

変形性膝関節症を予防するためには、発症の要因となるリスクファクター*を減らす必要があります。リスクファクターとしては、正座など膝関節に負担のかかる体勢をとることや筋力の低下、肥満、下肢のむくみなどが挙げられます。

変形性膝関節症を予防するためには、日常生活の中で対策を行うことが大切です。たとえば、正座や和式トイレでしゃがむといった膝に負担のかかる姿勢を避けることや、大腿四頭筋などの筋肉を鍛えること、温めて血流をよくしてから関節を動かすこと、肥満を指摘された方の場合には減量するといった方法があります。また、これらのリスクファクターへの対策を行うことに加え、水中歩行などの膝に負担の少ない運動を日常的に行い、筋力をつけることもよいとされています。

*リスクファクター:ある病気を発症させる確率を高めると考えられる要素

変形性膝関節症の病期の分類には、Kellgren-Lawrence grading(KL分類)が用いられています。KL分類は、国際的に使用されている変形性膝関節症に対する病期の分類で、患者さんのレントゲン画像をもとにして、骨棘(こつきょく)*の形成と関節裂隙(かんせつれつげき)**の狭小化を中心に評価を行う分類です。以下のKL分類にもとづき、治療方針を選択していきます。

変形性膝関節症の分類

  • Grade0:正常な状態
  • Grade1:関節裂隙が狭小化しておらず、軽度の骨棘出現または軟骨下骨の硬化が認められる状態
  • Grade2:明らかな骨棘の出現、さらには関節裂隙の狭小化がみられるも、骨変化がない状態
  • Grade3:中等度の多発性骨棘の出現、明らかな関節裂隙の狭小化、さらには小さな骨嚢腫(こつのうしゅ)を伴う骨硬化像と軽度の骨変形が認められる状態
  • Grade4:大きな骨棘、関節裂隙の狭小化が顕著で、骨硬化と骨変形においても著しく現れている状態

*骨棘:骨に与えられた何らかのストレスにより、骨が棘状になったもの

**関節裂隙:関節の隙間

変形性膝関節症の治療は、大きく保存治療と手術療法の2つに分かれます。保存治療を優先的に行い、効果や改善がみられない場合には、レントゲン画像で変形の程度を確認しながら、その後の治療方針を選択していきます。

保存治療には、薬物療法、運動療法、物理療法、装具療法などの治療法があり、患者さんの状態に合わせて選択していきます。

薬物療法

薬物療法では、鎮痛剤の内服薬や関節内注射、炎症を抑える湿布などを用いた治療を行います。

鎮痛剤には、さまざまな種類の非ステロイド性消炎鎮痛剤が販売されており、より患者さん一人ひとりのニーズに合わせた治療が選べるようになっています。湿布を用いた治療には消炎鎮痛剤などが用いられ、局所浸潤のため、初期の患者さんや症状の軽い患者さんへの効果が期待されています。

関節内注射には、ヒアルロン酸の注射とステロイドの注射があります。ヒアルロン酸の関節内注射は副作用の心配が少なく、安心して使えることが特徴です。一方、ステロイドの関節内注射は、急性期などの痛みが強い場合には効果的であるといわれていますが、繰り返し使用することにより軟骨が破壊されるなどの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。

運動療法

運動療法により、筋力がつくことで関節の不安定性が減り、膝の負担を軽減することができます。また、変形性膝関節症で発生する痛みからの脱却効果が期待できると考えられています。さらに、運動療法により体重の減量を行うことも、膝への負荷を軽減することにつながります。大腿四頭筋を鍛えるほか、自転車、水泳、水中歩行など、膝に負担のかからない運動が推奨されています。

物理療法

物理療法は、温熱療法や電気刺激療法、光線療法などの物理的な手段を用いることで、運動機能の活性化を図る治療法です。痛みを緩和させたり、血流を改善させたりするだけでなく、関節の動きをスムーズにする効果も期待されています。

装具療法

装具療法は、サポーターや楔形足底挿板(くさびがたそくていそうばん)、杖などの装具を用いることで膝の負担を軽減し、関節自体の安定化を図ります。それぞれの装具により患者さんの適応が異なるため、担当医と相談しながら決めていくことが大切です。

変形性膝関節症の手術療法には、人工膝関節置換術と高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)があります。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術は、膝の関節を人工膝関節に置換する手術です。一般的に、関節に重度の変形がある場合や、保存治療では痛みが改善されない場合、歩行などの動作が困難になった場合などに行われます。現在は、人工膝関節インプラント自体の性能の向上や耐久性の増加、さらには手術手技の進歩により、10~15年で95%以上の耐久率があると報告されていますが、20年以上再手術をせずに生活できている患者さんもおり、今後は30年以上再手術を必要としないケースも出てくることが期待されます。

人工膝関節部分置換術後のレントゲン写真

人工膝関節単顆置換術後のレントゲン写真

人工膝関節全置換術後のレントゲン写真

人工膝関節全置換術後のレントゲン写真

高位脛骨骨切り術

高位脛骨骨切り術は、すねの骨(脛骨)の膝に近い位置に切り込みを入れ、楔形に広げて固定を行う術式です。高位脛骨骨切り術により、重度のO脚変形を調整します。また、高位脛骨骨切り術は膝関節を人工膝関節に置換する必要がなく、運動に制限などがないため、スポーツなどを盛んに行っている若い方のO脚変形でも受けることが可能です。

高位脛骨骨切り術後のレントゲン写真

高位脛骨骨切り術後のレントゲン写真

次のページでは、「人工膝関節置換術」について、詳細をお話しします。

受診について相談する
  • 北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植センター センター長

    月村 泰規 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「変形性膝関節症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。