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変形性膝関節症の特徴 ――痛みや腫れがあれば早期に受診を

変形性膝関節症の特徴 ――痛みや腫れがあれば早期に受診を
岩間 友 先生

北里大学北里研究所病院 整形外科 スポーツクリニック 医長

岩間 友 先生

目次
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変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、加齢などにより膝関節が衰えて痛みや運動障害をきたす病気で、中高年以降の女性に多くみられます。症状が進行すると全身の体力低下につながる可能性もあるため、痛みや腫れの症状がある場合は早めに受診し、適切な治療を受けることが大切です。

今回は、北里大学北里研究所病院 整形外科医長の岩間 友(いわま ゆう)先生に、変形性膝関節症の特徴や痛みが起こる原因などについてお話を伺いました。

PIXTA
写真:PIXTA

変形性膝関節症とは、膝関節内でクッションの役割を果たす軟骨がすり減って関節が変形し、痛みや運動障害をきたす病気です。高齢の方に多いイメージがあるかもしれませんが、近年は病気の概念が変わってきており、中高年から気を付けるべき病気となっています。中高年になると加齢に伴い、膝関節の安定性にとって重要な半月板や靱帯(じんたい)の機能が衰え始めます。軟骨が大きくすり減る前から生じている関節内の小さな変化が、変形性膝関節症の素因だと分かってきたのです。この状態を我々は“早期OA(osteoarthritis:変形性関節症)”と呼んでいます。早期OAの段階ではX線検査(レントゲン)のみで異常を捉えることは困難です。しかし、放置するとやがて軟骨はすり減り、杖がなければ歩けなくなるほどに膝関節が変形してしまう可能性もあります。そのため“レントゲンで異常がみられない=変形性膝関節症ではない”と決めつけず、痛みなどの症状がある場合は病気を疑って膝関節の状態をよく調べ、適切な治療を行う必要があるのです。

イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート
イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート

変形性膝関節症は女性に多く、加齢、肥満、膝関節の外傷、重労働などが原因といわれています。近年は特に“下肢アライメント”が重要視されており、O脚が発症に関係していると考えられています。“下肢アライメント”とは、股関節(こかんせつ)・膝関節・足関節の関節3点を結ぶ脚の形状のことで、人それぞれ固有のアライメントがあります。世界的にみると、日本人にはO脚(膝関節が外側に広がっている)の傾向が強いといわれています。O脚が強いと膝の内側に負担がかかりやすくなり、加齢とともに内側半月板の損傷をきたしやすくなります。それが軟骨のすり減りにつながって変形性膝関節症に至ると考えられています。

変形性膝関節症の特徴的な症状は関節の痛みで、その原因によって大きく2種類に分けられます。両者が併存するケースもあり、痛みの現れ方は人それぞれです。適切な治療を選択するためにも、診察では痛みの原因を見極めることが重要です。

滑膜炎による痛み

膝関節内部の炎症によって生じる痛みです。この炎症は軟骨のすり減りが原因で、軟骨の破片や摩耗粉が滑膜という組織を刺激することで起こります。滑膜炎が起こると多くの関節液が分泌され、過剰に増えると腫れが生じます(膝に水がたまった状態ともいいます)。膝全体に重だるいような痛みを感じ、座っているときや横になっているときなど、安静にしていても違和感があるでしょう。

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メカニカルストレス(物理的な刺激)による痛み

膝に体重がかかったときの負荷によって生じる痛みです。加齢による半月板や靱帯などの機能低下、筋力の衰え、体重増加などが原因として挙げられます。椅子から立ち上がるとき、歩き出すときなどの動作開始時や、階段の昇降時など膝に体重がかかりやすい状況で強い痛みを感じます。階段では下るときにより痛みを感じやすいでしょう。

上記の2種類の痛みとは別に、もう1つ気を付けたいのが“中枢感作”による痛みです。

滑膜炎やメカニカルストレスによる痛みは、膝から神経を通って脳に伝わります。しかし、長年繰り返しこうした痛みを経験していると、痛みを伝達する神経に誤作動が生じる場合があります。具体的には、本来痛みを感じるべき炎症や荷重ストレスがない状況で痛みを感じたり、わずかな痛みを非常に強い痛みとして感じたりします。これが“中枢感作”といわれるものです。

中枢感作であると判断された場合、滑膜炎やメカニカルストレスとは別の治療法を選択する必要があります。そのため当院では、痛みが生じるタイミングや感じ方などを患者さんから丁寧に聞き取りながら判断しています。

痛み以外には、膝の曲げ伸ばしが困難になり可動域が狭まるといった症状が現れます。膝が伸び切らなくなると足を引きずって歩くようになり、痛みがさらに悪化したり、筋力を十分に発揮できなくなって筋肉が落ちてきたりするケースもあります。このように、関節などの障害のために移動機能が低下した状態を“ロコモティブシンドローム”といいます。外出がおっくうになることで日々の活動量が減少し、全身の体力低下につながりかねません。運動不足により、糖尿病などの持病管理に支障をきたすことも懸念されます。また、人付き合いが減ることによる精神面への影響も問題となっています。

変形性膝関節症は、長い目で見ると膝だけではなく全身の健康問題、QOL(生活の質)の低下につながる病気と認識する必要があるでしょう。

膝に痛みや腫れがあれば早めの受診をおすすめします。初期の段階では痛みや腫れがあっても自分なりに安静にしているうちに症状が治まることがありますが、そうしてやり過ごしているうちにいつの間にか症状が進んでしまう可能性もあります。おかしいと感じたら放置せず、初期の段階で症状を把握して適切な治療を開始し、進行を食い止めることが重要です。

一般的に変形は年単位で緩やかに進行しますが、急激な体重増加や筋力低下があると進行が早まる場合もあるため注意が必要です。そのほか、内側半月板の後根断裂(内側半月板を脛骨に固定している後方部分の断裂)により関節の症状が急速に悪化するケースもあります。内側半月板の後根断裂は、加齢とともに少しずつ傷んでいた半月板に、階段の下りや軽い小走りなど、日常生活での軽微な外力が加わったときに起こります。膝の中でブチッという感覚が起こるのが特徴です。このように何らかのきっかけがあり、その日を境に急に膝の内側に痛みを感じるようになった場合には、特に早めに受診されたほうがよいでしょう。

変形性膝関節症の予防には、体重のコントロールに加えて膝の周囲の筋力を高めることが重要です。なかでも歩行時に大きな役割を果たすのは、足を踏み込む際に膝を伸ばす大腿四頭筋(だいたいしとうきん)(太ももの前面の筋肉)や股関節を広げる中殿筋(股関節の側面の筋肉)です。これらの筋肉を鍛えるため、日常生活に簡単な体操を取り入れ、継続していくとよいでしょう。

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