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変形性膝関節症の治療――薬物療法、手術

変形性膝関節症の治療――薬物療法、手術
竹内 良平 先生

さいわい鶴見病院 関節外科センター センター長

竹内 良平 先生

目次
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記事2『変形性膝関節症とは? ——原因と症状、膝関節の基礎知識』では、歩行において重要な役割を果たす膝の構造と、膝に痛みを引き起こす変形性膝関節症の症状や原因についてお話を伺いました。今回は、変形性膝関節症の治療法についてお話しいただきます。変形性膝関節症には、薬を用いた薬物療法から手術まで、いくつかの治療法が確立されています。

治療の決定には、患者さんの症状とともに、患者さんのモチベーションと治療後に希望する活動が重要になるといいます。たとえば、スポーツをすることを望む患者さんには、それを可能とする治療が必要です。

今回は、変形性膝関節症の治療法とその効果について、引き続きさいわい鶴見病院の関節外科センターセンター長の竹内 良平先生にお話を伺いました。

変形性膝関節症は、公益社団法人日本整形外科学会よりガイドラインが出ており、ある程度診断や治療が確立されています。

変形性膝関節症の診断――診断にはガイドラインがある

変形性膝関節症の診断は、まず膝の痛みなど病気の症状があるかどうかを判断します。それから診察を行い、膝の腫れや痛みの場所など詳細を確認します。特に痛みの場所を特定することが、その後の治療において重要となります。

膝は、内側、外側、膝のお皿というように、大きく3つの関節から成り立っています。O脚になりやすい日本人は、特に内側の関節がすり減る内側型膝関節症(ないそくがたしつかんせつしょう)の患者さんが多いといわれています。また、膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨やそれに対向する大腿骨側の関節面の軟骨がすり減ることで生じる膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)も多くみられる例です。日本人には少ないですが、外国の方に多いのが、外側の関節が痛む外側型膝関節症(がいそくがたしつかんせつしょう)といわれており、この場合X脚になります。このように変形性膝関節症は、痛みがある場所により名称が異なります。これら3つの全ての関節がすり減っている患者さんは、全型膝関節症と呼ばれます。

治療法についてお話しする前に前提としてお伝えしたいのですが、変形性膝関節症は、2019年12月時点での医療技術では完治しない病気です。たとえば、一度でも膝の軟骨がすり減ったり半月板が切れたりすると、完全に元に戻ることはありません。そのため、変形性膝関節症は一度かかると一生付き合っていかなければならない病気であり、再発を予防するためにも定期的な検査と治療がなによりも重要になります。

変形性膝関節症における薬物療法は、根本的な原因を取り除く治療ではありません。あくまで膝の痛みを軽減したり、軟骨の表面をコーティングしたりする一時的な治療のために用いられます。

変形性膝関節症の薬物療法――疼痛緩和を目的とする

2019年12月現在、変形性膝関節症の薬物療法で第一選択となるのが、消炎鎮痛剤です。これは膝の痛みを抑える効果があります。しかし、変形性膝関節症の進行を止めるものではなく、あくまで痛みを抑えるだけに過ぎません。あるいは炎症をわずかに和らげる程度の効果であると考えてもらいたいです 。

ヒアルロン酸は、軟骨の表面がすり減りガサガサと荒れた状態をコーティングし、ツルツルにする効果があります。分かりやすくいうと、軟骨の表面を一時的に覆うワックスのような役割を果たすものが、ヒアルロン酸です。ヒアルロン酸により、一時的にでも軟骨が滑らかになって摩擦係数が低くなると痛みも和らぎます。しかし、関節内の滞留時間は2日ほどといわれており、一時的な処置に過ぎません。毎日打つことができれば効果が期待できるかもしれませんが、現状では週に1度しか打つことができないと定められています(2019年12月現在)。そのため、一時的な効果で終わってしまうことが多いでしょう。

変形性膝関節症の薬物療法――疼痛緩和を目的とする

炎症を抑える目的でステロイドが処方されることがありますが、私は基本的に、ステロイドは簡単に打ってはいけないと考えています。なぜなら、ステロイドは痛みを大きく軽減することはできますが、非常に強い危険な薬でもあるからです。特に、短期間に何度も繰り返し投薬してしまうと、軟骨ばかりでなく靱帯や骨までも痛める恐れがあります。実際に、私たちさいわい鶴見病院においてもステロイドを打つことは滅多にありません。

近年、鎮痛効果が期待されているのがオピオイドという薬剤です。このオピオイドの特徴は、胃腸障害が少ないということです。大きな副作用がないために危険性が少ない薬剤として期待されています。ほかには、トラマドール塩酸塩とアセトアミノフェンの配合錠も新たに使用され始めています。これらは従来の薬物療法に使用されてきた薬と比べて、安全性が高い点が特徴です。変形性膝関節症が治るわけではありませんが、今後、疼痛管理における役割が期待されるのではないでしょうか。

お話ししたような薬物療法をするうえで、いくつかの注意点があります。それは、鎮痛作用の強い薬を安易に服用しないということです。私たちの病院にも、痛みを軽減するために強い薬を飲み続けた結果、症状が悪化してしまった患者さんが治療にいらっしゃることがあります。変形性膝関節症の症状が悪化してしまうと、手術しか選択肢がなくなる場合も少なくありません。スポーツ選手が試合の日だけ痛みを取りたいという特殊な場合以外は、強い薬を服用または注射することは非常に危険です。そのため、薬物療法では薬の効果とともに、副作用にも十分に注意すべきでしょう。少しでも不安があるならば、セカンドオピニオンを得ることも有効であると思います。

物理療法とは、関節や筋肉に熱や電気、氷などを使って、物理的な刺激を加えることで痛みを取り除く治療法です。薬物療法と同様に、この物理療法も一時的に痛みを軽減するための治療法に過ぎず、病気の原因を根本的に取り除く治療ではありません。そのため、物理療法は単独ではあまり効果を発揮しない治療法であると私は考えています。

しかし、たとえば物理療法は、筋肉トレーニングなどと組み合わせることで効果が期待できる治療法であると思います。痛みがあると、一時的に筋肉が縮んでしまいます。それを温めることで血流がよくなり痛みが弱まるので、そのうえで筋肉トレー二ングをすることは効果が期待できるでしょう。

*変形性膝関節症の物理療法――筋肉トレーニングと組み合わせると効果的である

装具療法は、膝を安定させるために専用のサポーターを取り付けるなど、装具を用いた治療です。O脚の患者さんにいくら装具をつけてもO脚自体は治りません。そのため、あまり推奨はしていませんが、装具のなかでも効果が期待できるものに、足底板という靴の中敷きがあります。靴に中敷きを入れ、かかとを少し外側にずらすと内側の膝にかかる体重が減ります。これは、多ければ5%程度は膝に対する負荷が軽減されるといわれており、長い目で見ると、変形性膝関節症の進行を遅らせることにつながります。さらに、膝の内側の筋肉の収縮が和らぐことで、痛みが軽減される効果が期待できます。

また、変形性膝関節症の患者さんの多くは、扁平足(へんぺいそく)であるといわれています。通常、足裏の体重がかかる場所は、母趾(ぼし)の付け根、小趾(しょうし)の付け根、そしてかかとの3点です。しかし、扁平足になり、前足部のアーチ(母趾から小趾までのアーチのこと)が崩れると、第2、3趾の付け根にも体重がかかってしまいます。そうなると、足にクッションがない状態になり、結果として、膝に悪影響が及んでしまうのです。そのため、足底板によるアーチの復活とかかとを外側にずらすことで扁平足を矯正し、足裏にクッションをつくることが有効となります。

形性膝関節症の方の多くは扁平足である

変形性膝関節症の患者さんがリハビリをする場合は、筋肉のトレーニングが中心になります。トレーニングにより、膝関節を柔軟に保つ効果も期待できます。

通常、膝は真っすぐ伸ばすことができ、寝ると床に膝の裏側がつくようにできています。また、約140度まで曲げることができ、正座をすることが可能です。このように、0度から140度まで膝の動きを柔軟に保つにはストレッチが重要になります。しかし、痛みがあると、膝は自然に曲がっていきます。これは、屈曲拘縮と呼ばれる症状であり、進行してしまうと、膝を伸ばそうとしても伸びなくなります。膝が曲がると背中も曲がり、歩く姿もだらしなく見えてしまいがちです。

このように、膝が硬くなると周辺の筋肉も硬くなってしまいます。そこで有効なのがストレッチや筋力トレーニングです。物理療法でもお話ししましたが、筋肉を温め緊張を和らげた状態で実施すると、より効果的でしょう。

変形性膝関節症には、主に3つの手術があります。膝に与える影響が小さいものから順番に並べると、関節鏡による手術、膝周囲骨切り術、膝を人工関節に置き換える手術になります。

変形性膝関節症の手術療法――関節鏡から人工関節まで

関節鏡とは、膝の内側と外側に小さな傷をつけ内視鏡を膝に入れ、膝の内部をきれいにする手術です。これは、膝の内部の掃除と半月板の修復を目的としています。変形性膝関節症の患者さんは、膝の内部に軟骨や半月板のかけらなど、有害物質がたまります。その有害物質をきれいにすることで、痛みが治まり進行を緩やかにすることができます。あるいは、半月板を一部切除したり縫ったりする場合もあります。このように、膝内部のお掃除と半月板の修復を目的として実施するのが関節鏡による手術です。この手術は根本的な原因を断つわけではなく、あくまで一時的な治療になりますが、実施後数か月は症状の改善が期待されます。

AKO(膝周囲骨切り術)は、分かりやすく言うと、手術により膝の形を変える手術です。記事2『変形性膝関節症とは? ——原因と症状、膝関節の基礎知識』でお話ししたように、変形性膝関節症になるとO脚の方は、主に膝の内側にかかるストレスが非常に強くなります。そこで、下肢を真っすぐ、またはX脚気味に矯正するよう骨を切ることで、膝の外側にも負荷の一部を移すように調整します。骨を切り矯正をした後は、専用のプレートで固定します。記事5『変形性膝関節症の膝周囲骨切り術(AKO)は術後のスポーツが可能に』において詳しくお話ししますが、もっとも一般的に行われている膝周囲骨切り術は、高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)です。骨切り術は、患者さんの症状に合わせた手術が可能であり、高位脛骨骨切り術以外にも何通りもの方法があります。AKO(膝周囲骨切り術)は、術後のリハビリが比較的スムーズに行え、リハビリ後にスポーツや重労働が可能になる点がメリットでしょう。

変形性膝関節症の手術療法――関節鏡から人工関節まで
人工関節の施術例

人工関節置換術は、その名の通り関節を人工物に置き換える手術です。人工関節には、膝全体の関節を取り替える全置換術と膝の内側や外側など一部だけ取り替える単顆置換術(たんかちかんじゅつ)があります。患者さんの希望にもよりますが、基本的には人工関節の手術を受ける患者さんは、病気がかなり進行している方です。変形性膝関節症の末期の状態で、たとえば骨まで削れてしまったり、膝関節の動きが極めて悪くなってしまったり、または全型の膝関節症になってしまった患者さんに適応されることが多いです。お話ししたような膝周囲骨切り術では治療が難しい場合に実施され、手術後は日常生活を問題なく送ることができます。しかし、人工関節の手術後は、膝の曲げ伸ばしをスムーズに行えるようにするリハビリも大変です。患者さんの年齢や状態にもよりますが、術後はスポーツや重労働は避けなければならず、正座をすることがほとんどの場合困難です。体に負担が大きい手術であるため、実施には十分な検討が必要でしょう。

AKO(膝周囲骨切り術)と並び、変形性膝関節症の患者さんに適応されることが多い手術が人工関節に置き換える人工関節置換術です。私たちさいわい鶴見病院では、関節を全て入れ替える人工関節全置換術を採用していますが、これは患者さんの負担が大きな手術になります。

人工関節が細菌に感染してしまうと、人工関節を抜くしかありません。感染の経路はさまざまですが、近年は歯周病による感染が多いため、歯のケアが重要となります。また、体のどこかに炎症系疾患があると、感染しやすくなるといわれています。たとえば、喉が腫れて膿がたまっている状態や肺炎になった際にも危険です。内臓疾患から細菌が膝に及んでしまうと感染しやすくなり、大きなリスクを抱えることになります。

膝に水がたまり腫れる関節水腫

一方、AKO(膝周囲骨切り術)も感染することはまれにありますが、膝関節内自体には感染は及びません。そのため、一時的に固定のために使用している金属プレートを除去すれば治ります。膝周囲骨切り術は、感染が非常に少ないという特徴があります。もし人工関節置換術後に細菌に感染してしまうと、最終的には人工関節を抜くしかなくなります。人工関節は病気が進行した際に適応される最終的な治療であるため、人工関節を抜いてしまうと、次にできる処置はさらに大きな人工関節を入れることしかなくなってしまいます。お話ししたような感染による合併症には、十分に注意する必要があるでしょう。

人工関節は、一度手術をしたら永遠に効果が期待できるという治療法ではありません。人工関節の寿命は、15~20年といわれています。そのため、たとえば50歳代で手術をした方の場合、70歳代と90歳代で人工関節を入れ変える手術が必要になります。患者さんが若ければ若いほど手術を繰り返すことになり、その負担は徐々に大きなものとなります。このように、人工関節はバラ色の手術ではなく、症状が悪化したときの最終手段であると私は思っています。

 

 

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