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変形性膝関節症に対するリハビリテーションの具体的な方法と注意点

変形性膝関節症に対するリハビリテーションの具体的な方法と注意点
高橋 知幹 先生

熊本機能病院 副院長・理事長補佐・人工関節センター長・臨床研究支援室長

高橋 知幹 先生

目次
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変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)によって膝関節が悪くなった方は関節そのものの機能が落ちているため、手術後は膝関節の機能を回復させるためのリハビリテーション(以下、リハビリ)を継続的に行うことが重要です。これに加えて、膝の機能低下により日常生活上のあらゆる動作に支障が出ている場合もあるため、“全身を鍛えるリハビリ”もしっかりと行うことが求められます。このページでは、変形性膝関節症におけるリハビリの重要性とその内容について、熊本機能病院 副院長/人工関節センター長/臨床研究支援室長の高橋(たかはし) 知幹(ともき)先生にお話しいただきました。

人工膝関節置換術の目的は関節を人工物に置き換えることで、関節機能を回復するためのリハビリの際に“痛み”が出ない状況を作ることです。つまり、人工膝関節手術をしただけでは関節機能が回復しないので、本来の関節機能を取り戻すためには、術後にきちんとリハビリを行うことが重要になってきます。

変形性膝関節症に対するリハビリでは、主に膝の筋力トレーニングや膝関節の可動域訓練を行います。また、膝へのリハビリによって膝の状態が改善しても、全身の筋力が低下したままで歩き方におかしな癖がついてしまうと長期的に膝への負荷がかかるため、全身的な体幹トレーニングも合わせて行う必要があります。このようなことから、変形性膝関節症のリハビリは“全身のリハビリ”ともいえます。

当院におけるリハビリの最大の特徴は、膝の機能から全身的な日常生活動作(Activities of Daily Living :ADL)までの回復を目指す総合的なリハビリを導入している点です。

元来、リハビリはその内容によって、理学療法、作業療法、言語療法に大きく分かれます。リハビリといえば膝を曲げたり筋肉を動かしたりといったイメージが一般的ですが、これらは運動機能回復を図る理学療法に該当します。一方で、特に高齢の患者さんにおいては、“ベッドから車椅子に移る”、“自宅で階段を上る”といったADLが一緒に低下していることも少なくありません。このADLの回復を目指すためには、日常的な動作をスムーズに行うための訓練である作業療法をきちんと行うことが大切です。

当院では全身の機能回復を重要視しているため、手術後1~2週間は、作業療法士による入浴や階段昇降の練習などのリハビリが行われます。また、退院前には、自宅に帰ってからの日常生活上の注意点も指導しています。

画像提供:PIXTA
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当院の場合、変形性膝関節症の患者さんのリハビリは手術翌日から開始し、3~4週間(高齢の患者さんの場合は5~6週間)ほど入院下でリハビリを行います。膝の可動域や痛みの程度から、膝の機能が一定レベルまで回復していると判断でき、なおかつ患者さん本人が自主的にトレーニングできる状態までADLが回復していれば、退院していただき自宅での自主訓練に切り替えます。ただし、まだ膝の機能が回復しきっていない場合は外来でのリハビリを継続します。

関節の機能を維持するにはトレーニングや可動域訓練などにより関節を休みなく動かすことが大切です。では、日常生活上で取り入れられる運動には何があるでしょうか。

画像提供:PIXTA
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基本的には、膝に負荷を与えない一方で膝をよく使う運動が推奨されます。具体的には、水中歩行や室内での自転車こぎなどは膝の負担を減らした状態で関節をたくさん使える運動であり、変形性膝関節症の患者さんにおすすめしています。

このほか、ウォーキングやスクワットなども日常生活で気軽に行えるタイプの運動です。特にウォーキングは全身の筋力トレーニングにもなるという利点があります。ただし、ウォーキングは膝に多少の負担がかかる運動であり、膝の状態や痛みの程度、全身のコンディションなどとのバランスを考えながら取り入れなければかえって痛みが強くなってしまいます。そのため、ウォーキングはご自身の体調や膝の状態を見ながら、うまく取り入れましょう。

上記とは逆に、関節に負荷がかかりすぎる運動や、運動をやりすぎることは避けるべきです。

基本的に変形性膝関節症で“やってはいけない運動”はありません。ただし、どのような種類の運動であっても、過剰な運動は関節に負荷がかかりすぎてしまうので、体のコンディションや痛みの程度に応じて運動する時間や強度を柔軟に調整することが大切です。

また、正座などの膝を大きく曲げるような動作および訓練も控えましょう。

一度、変形性膝関節症を発症すると、その後も一定のスピードで関節の変形は起こるため、関節の変形そのものを遅らせたり防いだりすることは難しいのが現状です。ただ、膝関節への負荷を減らせば、症状が進行するスピードを遅くできる可能性はあります。

正座は極力控えるなど、痛みの状況に応じて膝への負担がかかる動作を避けつつ、膝関節の機能が落ちないような筋力トレーニングおよび可動域訓練を継続することが、症状の進行予防につながると考えます。

高橋 知幹先生

まずは自分自身の病気の状態を理解しなければ、痛みに対しどのように対処すればよいかも分からないと思います。だからこそ、今の膝の状況を理解するためにも、気楽に病院を受診してください。そして、何かよい治療法はないかを医師に尋ねていただきたいと考えます。そうすれば、自分自身にはどのような治療法が適切であるかを一緒に考えていくことができます。熊本機能病院は紹介状がなくても受診できます(ただし当院を初めて受診される場合は、初診時特定療養費として3,300円が別途かかります)から、少しでも膝の痛みや歩きづらさで困っている場合は、お気軽にご相談ください。

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  • 熊本機能病院 副院長・理事長補佐・人工関節センター長・臨床研究支援室長

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