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膝関節軟骨損傷によって起こる変形性膝関節症の治療について

膝関節軟骨損傷によって起こる変形性膝関節症の治療について
佐伯 和彦 先生

福岡山王病院 整形外科 関節外科センター長 福岡国際医療福祉大学 医療学部 教授

佐伯 和彦 先生

目次
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人の膝の骨の表面は、衝撃を吸収するクッションのような軟骨組織に覆われており、大腿骨と脛骨をつなぐ膝関節は、軟骨があることによってスムーズな動きを維持しています。この軟骨組織に、スポーツや外傷、事故、加齢などによってダメージや変性が加わり膝関節軟骨損傷と変形性膝関節症という疾患を発症する可能性があります。軟骨損傷や変形性膝関節症に行われる治療は、年齢や活動性などにより骨髄穿刺法、自家培養軟骨移植術や自家骨軟骨柱移植術、骨切り術、人工膝関節置換術などから選択されます。今回は膝関節軟骨損傷と変形性膝関節症、そしてその治療法について、福岡山王病院 整形外科の佐伯和彦(さえき かずひこ)先生にお話しいただきました。

膝関節の構造

膝関節の構造

上図の通り、膝関節には、大きく分けて“大腿骨(だいたいこつ)” “脛骨(けいこつ)” “膝蓋骨(しつがいこつ)”という3つの骨と、大腿骨と脛骨の間にある半月板*という衝撃吸収や荷重の伝達、潤滑、関節の安定性を保つなどの役割を果たす組織が存在します。また、それぞれの骨の表面には関節軟骨**(硝子軟骨)があり、これらの軟骨組織は、外傷や膝への過度な負荷あるいは加齢などによってすり減ったり傷ついたりすることがあります。膝関節の軟骨が損傷した状態を治療しないまま長期的に放置した場合、変形性膝関節症に進行するリスクが上昇します。

*半月板:膝関節の内側と外側にある三日月の形をした軟骨組織

**関節軟骨:骨の表面にある軟骨組織

主な原因としては、以下が挙げられます。

年齢を重ねるにつれて、膝関節軟骨は徐々に弾力性を失っていくため、摩耗し、傷が入りやすくなります。

立ち仕事や重い物を持ち運ぶ仕事や、日常生活で階段の昇り降りや正座、しゃがみ込み、膝立ちなど、日頃から膝へ大きな負荷をかけていると膝関節軟骨が傷つく原因になります。

体重が重いと膝関節に過度の負荷がかかります。

スポーツ活動、交通事故や転倒などに伴う膝の靱帯や半月板の損傷などで生じる可能性もあります。

損傷した膝関節軟骨は基本的に自然治癒せず、放置すると損傷範囲や深さが少しずつ大きくなっていきます。損傷した状態を放置すれば、変形性膝関節症に発展することがあります。

初期の変形性膝関節症の特徴的な症状のひとつは、動作時の膝の痛みです。初期段階では、膝の痛みは立ち上がった際にもっとも強く、歩いているうちに軽減し、休めば回復します(このような特徴的な痛み方を“スターティングペイン:動きはじめの痛み”と言います)。しかし、病気が進行すると、歩行時にも痛みを感じます。また、痛みに加えて徐々に膝の曲げ伸ばしができなくなり、やがて歩行や正座をすることが難しくなります。

損傷範囲が小さい場合や症状が軽度な病期が初期の場合は、ヒアルロン酸の関節注射や足底板(そくていばん)、杖などの装具を使用したり、減量、運動(大腿四頭筋訓練)などの保存療法を行ったりします。

初期段階であれば、こうした保存療法によって症状を軽減したり、膝関節軟骨損傷から変形性膝関節症への進行を遅らせたりすることは可能です。しかし、保存療法では、傷ついた軟骨を完全にもとの状態に戻すことは期待できません。膝関節軟骨の損傷範囲が広い場合や軟骨が欠損した病期が進行した、末期に至った場合は、外科手術による治療が必要です。

当院では、自家培養軟骨移植術による軟骨損傷の治療を行っています。

自家培養軟骨移植術は、2020年1月現在、変形性膝関節症には適用されていない治療法ですが、4cm2以上の外傷性の軟骨損傷または離断性骨軟骨炎を伴う場合は、保険下での治療が可能です。

当院では、自家培養軟骨移植術が保険適用になる軟骨損傷に対しては、自家培養軟骨移植術による治療を実施しています。

自家培養軟骨移植術の流れ

自家培養軟骨移植術の流れ

自家培養軟骨移植術では、まず、関節鏡手術によって患者さんの大腿骨の非荷重部から約0.4gの軟骨組織を採取し、専用の容器と施設で培養します。直径2.5cmの培養軟骨組織を標準3枚作ります。4週間後に培養された軟骨組織を患者さんの軟骨欠損部に移植します。

欠損した軟骨の面積が4cm2以上と大きな場合でも、自分自身の軟骨組織を再生させることが可能です。

ただし、自家培養軟骨移植術を行う場合は、軟骨組織を採取と移植することで計2回手術をしなければなりません。また、軟骨採取後の培養期間に約1か月を要するため、その間は患者さんにお待ちいただく必要があります。

自家骨軟骨柱移植術では、大腿骨の非荷重部から正常軟骨と軟骨下骨を採取し、欠損部に移植します。軟骨損傷の大きさに合わせて正常軟骨を採取する必要があるため、病創部の面積が4cm2未満の場合に適応されることが多いです。また、自家骨軟骨柱移植術は手術が一度で済むというメリットがあります。

骨切り術は、膝関節周囲で脛骨や大腿骨を切り、下肢のアライメント(O脚やX脚)を矯正します。このことで荷重部を病巣部より健常部に移行し、病巣部の荷重の負担を軽減させ、自分の関節軟骨を再生させるという治療法です。自分自身の関節を温存できるため、スポーツや正座、しゃがみ込みなどの膝に多少の負担がかかる作業も行うことができます。このように、一定の活動性を維持できる一方で、治療後の回復スピードが後述する人工膝関節置換術に比べて遅く、切った骨の部分が再生するまで約3~6か月程度かかります。

人工膝関節置換術は、変形し、傷ついた膝関節を金属製の人工物に取り換える治療法です。一度手術をすれば、20年以上の耐久性が期待されます。しかし、コンタクトスポーツ、関節に大きな負担がかかる動作や膝の曲がり(正座、しゃがみ込みなど)が制限されます。

変形性膝関節症に対する治療法には、それぞれにメリットとデメリットがあります。実際の治療選択の際は、患者さんの病状や希望、各治療法のメリットとデメリットを考慮して、その患者さんに適切な治療法を総合的に判断していきます。

2011年に、日本Knee Osteotomyフォーラムという研究会が結成されました。このフォーラムは、膝関節周囲の骨切り術における手技の工夫や、将来的な治療の展望などを討議する場を設けるためにできたものです。私は2020年1月現在、日本Knee Osteotomyフォーラムの理事として、変形性膝関節症などの治療の発展を目指して取り組みを進めています。

繰り返しになりますが、骨切り術は自分の関節を温存しつつ自己軟骨の再生を目的とした手術です。1回治療を行った場合でも、加齢などの変性や肥満、労働などの負荷により約十年後には痛みなどの症状や軟骨損傷が再発する可能性があります。このため患者さん自身の膝関節を温存し、再発を防ぐことを目的として積極的に取り組んでいるのが、骨切り術に自家培養軟骨移植術や自家骨軟骨柱移植術などを組み合わせることです。

変形性膝関節症の患者さんには、高齢化社会や労働、趣味の多様化に伴い、自分自身の膝関節を温存して治したいと考えている方が多くなってきています。そうした患者さんの希望に沿いながらも、再び膝の痛みに悩まされることがないような治療法の確立を目指して、今後も臨床と研究の双方に尽力していきたいと考えています。

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    佐伯 和彦 先生

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