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変形性膝関節症におけるMIS(Minimum Invasive Surgery)人工膝関節置換術とは? MIS人工膝関節置換術の特徴や経過について解説

変形性膝関節症におけるMIS(Minimum Invasive Surgery)人工膝関節置換術とは? MIS人工膝関節置換術の特徴や経過について解説
月村 泰規 先生

北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植センター センター長

月村 泰規 先生

目次
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重度の変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)に対しては、人工膝関節置換術が適応となることがあります。北里大学北里研究所病院では、MIS(Minimum Invasive Surgery:最小侵襲手術)人工膝関節置換術を取り入れ、より患者さんに負担の少ない治療を目指しています。

MIS人工膝関節置換術とは、従来の人工膝関節置換術と比較して、どのような点が異なるのでしょうか。また、MIS人工膝関節置換術とは、どのような術式なのでしょうか。

北里大学北里研究所病院の月村泰規(つきむら やすのり)先生にお話を伺いました。

従来の人工膝関節置換術は、実施する施設や医師により多少異なりますが、手術の際に切開する皮膚の大きさが15〜25cmでした。また、皮膚の切開に加えて、筋肉や腱などの組織も同様に切開する必要がありました。

当院では、手術機器や手技の改良により、従来の人工膝関節置換術よりも小さい8〜12cm程度の小さい切開での手術が可能です。MIS人工膝関節置換術では、筋肉や腱などの切開も可能な限りなくす、あるいは小さくすることで、患者さんが感じる痛みや負担を軽減し、術後のリハビリテーションを早く開始することにつなげます。

人工膝関節置換術には、膝関節の一部を人工物に置き換える人工膝関節単顆置換術(UKA)と膝関節の全体を置き換える人工膝関節全置換術(TKA)の2つの種類があります。当院はMIS人工膝関節置換術にも対応しており、患者さんの病気の進行具合や生活環境によって患者さんに適した人工膝関節を選択していきます。

人工膝関節単顆置換術(UKA)

人工膝関節単顆置換術は、膝の関節の内側か外側、どちらか1か所を人工膝関節に置き換える手術です。一部のみを人工膝関節に置き換えるため、自らの関節を温存することができるだけでなく、前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)や後十字靱帯といった膝の靱帯も温存できるため、人工膝関節全置換術に比べて、より自然な動きが可能です。

人工膝関節部分置換術後のレントゲン写真

キャプション:人工膝関節全置換術後のレントゲン写真

人工膝関節単顆置換術後のレントゲン写真

人工膝関節全置換術(TKA)

人工膝関節全置換術は、膝関節全体を人工膝関節に置き換える手術です。膝の関節全体を置き換えるため、痛みや強い変形が改善され、QOLの向上につながります。しかし、動作や姿勢などが制限されることもあるため、日常生活のなかで注意が必要になる場合があります。

TKA

:人工膝関節全置換術後のレントゲン写真

人工膝関節全置換術後のレントゲン写真

人工膝関節置換術の耐用年数は、一般的に10~15年程度であるといわれています。しかし、人工膝関節の部品の改良も進んできていることから、2019年現在では15年以上維持することも期待されています。

人工膝関節置換術は、患者さんの生活環境や動作により人工膝関節の状態が大きく異なるため、より長持ちするように意識して生活することが大切です。たとえば、変形性膝関節症の発症要因になりうる過度な運動や、コンタクトスポーツを控える必要があります。また、体重なども大きく関わるため、患者さんに見合った体重を維持したり、重いものを持ち上げる動作を控えたりすることも、人工膝関節を長持ちさせるポイントになります。

MIS人工膝関節置換術のメリットは、手術に伴い痛みが取れるほか、手術の傷が小さいことや入院期間の短縮、リハビリの早期開始などがあります。従来の人工膝関節置換術よりも早く社会へ復帰することが期待できます。

ただし、MIS人工膝関節置換術には、感染症や深部静脈血栓症*、関節可動域の制限などの合併症を生じてしまう恐れがあるため、徹底した管理の下で手術を行っていくことが大切です。

このように、MIS人工膝関節置換術には様子を見ながら進めていくべきこともありますが、上記のメリットから患者さんの状態やニーズに応じて適応可能かどうかの判断を行っていきます。しかし、手術後に激しい動きを伴うスポーツへの復帰を望む患者さんへの適応は難しくなります。

*深部静脈血栓症:足や骨盤内などの深部静脈に血栓が生じた状態

当院では、変形性膝関節症に悩む患者さんに対して、人工膝関節単顆置換術などの手術精度を上げるため、ナビゲーションシステムを取り入れた人工膝関節置換術を行っています。ナビゲーションシステムとは、骨を切る角度やインプラントのサイズなどを手術中にコンピューターが誘導して、より正確な手術を行うためのシステムです。

また、術前のCTから、予定する人工関節の骨切りやサイズに合わせて手術を行えるように、術前に前もって骨切りする道具を患者さん専用に作成するPSI(Patient-Specific Instruments)を採用しています。膝関節の変形の内容によって、使い分けをしています。

人工膝関節置換術における今後の課題は、人工膝関節がどこまで正常な膝関節に近い状態まで性能を上げられるのかという点です。

手術自体は、ある程度患者さんの負担を軽減することができるようになりました。しかし、人工膝関節を入れたことにより、手術後、患者さんが違和感を覚えることがあります。その違和感は、人工膝関節が健康な膝に可能な限り近い動きができるようになることで解消される可能性があると考えています。そのため、当院では、これからも正常な膝関節に近い動きを可能にする人工膝関節の機種の選択、手術手技、リハビリテーションを目指して、日々診療に取り組んでいきます。

当院で人工膝関節置換術を受けた場合には、患者さんにより差はありますが、2〜4週間程度の入院期間を設けています。また、手術後は、膝を動かさないことで筋肉や腱が弱まったり、拘縮(こうしゅく)*が起こったりする可能性があるため、患者さんの状態に合わせて、手術の翌日から、車いすに乗る訓練、平行棒を使用した起立訓練、歩行器を使った歩行訓練などのリハビリを開始しています。手術後3週間程度で杖を使用した歩行ができるようになることを目標としています。

人工膝関節置換術の手術後の注意点としては、人工膝関節置換術は耐久性の問題があるため、正座やコンタクトスポーツを避けたりするなど、関節に大きな負担のかかる動作や姿勢を避ける必要があります。また、手術に伴い、血栓症、感染症、長期的には無理な動作による人工膝関節の緩みなどの合併症やリスクは一定の確率で発生するため、納得がいくまで主治医と相談したうえで、日常生活の注意点を考慮しながら継続的なチェックが大切です。

*拘縮:関節周辺の組織が、何らかの原因によって収縮し、第三者や器具などの外力による動きが制限された状態

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  • 北里大学北里研究所病院 人工関節・軟骨移植センター センター長

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