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変形性膝関節症に対する骨切り術の流れと術後の経過

変形性膝関節症に対する骨切り術の流れと術後の経過
石川 博之 先生

横須賀市立市民病院 関節外科・人工関節センター 診療部長、人工関節センター長

石川 博之 先生

目次
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変形性膝関節症の治療法のひとつである「高位脛骨骨切り術(骨切り術)」は、自己の膝を温存できることが特徴です。一口に「骨切り術」といっても、その細かい手法にはさまざまなものが存在します。横須賀市立市民病院では、一人ひとりの患者さんの容体や病気の進行度、年齢などに応じて、骨切り術の最適な術式を提案しているといいます。引き続き、横須賀市立市民病院関節外科 部長 石川博之先生にお話しいただきました。

骨切り術の適応

「骨切り術」は、基本的には膝関節の可動域に大きな制限がない初期~中期段階で、活動性の高い方が適応となります。かなり進行した変形性膝関節症には適応できない場合があります。そのため、骨切り術を希望される場合は、早期段階での実施を推奨しています。

また、一般的には、70歳代後半の方には人工膝関節置換術を適応することが多いですが、骨切り術を希望される場合は年齢にかかわらずご相談に応じています。

骨切り術におけるさまざまな術式と適応基準

Open Wedge High Tibial Osteotomy(開大式高位脛骨骨切り術)

内側関節だけが痛んでいる変形性膝関節症初期の方には、Open Wedge High Tibial Osteotomy(OWHTO:開大式高位脛骨骨切り術)が適応されることが多いです。OWHTOでは、脛骨の内側から外側に向かって骨を切り、内側を開いて人工骨を挿入し金属の板とネジで固定することで骨を矯正します。

膝関節は大きく分けて内側関節、外側関節、そして膝蓋大腿関節の3つの関節部分から構成されています。OWHTOは、内側関節のみが傷んでいる初期の変形性膝関節症に適応されます。膝蓋大腿関節に病変がある場合や、変形性膝関節症が進行している若い方にはOWHTOを推奨していません。

Closed Wedge High Tibial Osteotomy(閉鎖式高位脛骨骨切り術)

内側関節と膝蓋大腿関節が痛んでいる方には、Closed Wedge High Tibial Osteotomy(CWHTO:閉鎖式高位脛骨骨切り術)を行います。CWHTOは、脛骨の外側から骨にアプローチして楔状に骨を切り、矯正する方法です。内側関節と膝蓋大腿関節に病変がある場合に適応になることが多い術式で、進行した変形性膝関節症にも対応可能です。

当院では、当院関節外科前部長の竹内良平先生とともに考案した「Hybrid Closed Wedge HTO」を行っています。

Hybrid Closed Wedge HTOは、Oblique Osteotomyという術式と、Hemi-open HTOという術式を組み合わせた方法です。それぞれの手法と異なる点は、骨切り部の外側骨皮質(骨の硬い部分)を合わせることで骨接合部の安定性を上げていることと、外側からのアプローチのみで内側を開けないことの2点です。

その他の骨切り術

その他の骨切り術は、大腿骨外反骨切り術、大腿骨内反骨切り術、脛骨骨切り術に大腿骨骨切り術を組み合わせたDouble Level Osteotomyなどがあります。

大腿骨外反骨切り術は、大腿骨が元から変形している場合や、骨折後の変形治癒などに対して行います。Double Level Osteotomyは、脛骨のみの矯正では過度になる場合に行うことが多いです。大腿骨内反骨切り術は、外側型変形性膝関節症に対して行っています。

横須賀市民病院における骨切り術の特徴

骨切り術の手術風景(写真右:石川博之先生)
骨切り術の手術風景(写真右:石川博之先生)

骨切り術におけるさまざまな術式を実施できる―個々の患者さんに応じた術式を選択

当院における変形性膝関節症への骨切り術の特徴は、Hybrid Closed Wedge HTOをはじめとして、一般的な骨切り術の術式を一通り実施できることです。それぞれの術式の長所と短所を考慮したうえで、一人ひとりの患者さんの膝の状態や職業、趣味、生活様式などを加味し、その患者さんにとって適した術式を提案しています。

受診から手術までの流れ

当院では通常、以下のような流れで治療を行っています。

予約~受診

電話で予約していただきます(046-856-3136)。予約可能な日程は、毎週月・水の受診日です。かかりつけの診療所で作成いただいた、横須賀市立市民病院関節外科宛ての紹介状を持参してください。

初診~検査、手術日決定

初診日に検査日と手術日を決定し、スケジュールを組みます。既往症によっては、他診療科の受診をお願いすることがあります。

検査日~説明日

検査日にはレントゲン検査、血液検査、尿検査、心電図検査、呼吸機能検査、MRI検査、骨密度検査などを行い、患者さんの膝の状態を詳しく調べます。検査結果を踏まえて術式を検討し、後日、外来にて患者さんに検査結果と手術の内容を説明します。

手術前日入院

手術実施予定の前日に入院していただきます。既往症がある場合は、より早く入院していただくこともあります。

骨切り術の術後の経過と退院後の注意点

術後翌日から退院に向けて起立訓練や歩行訓練を行う

骨切り術の術後翌日から起立訓練(両足で立っている姿勢を維持するための訓練)を行います。起立訓練の目的は、足のポンプ作用を高めて血栓を防止することです。

起立訓練における痛みが我慢できる範囲内であり、なおかつ容体が順調に回復していれば、杖を用いた歩行訓練に移行します。歩行訓練で階段昇降が自立してできるようになったら、退院が可能です。

退院後は入院中のリハビリテーションを自宅で継続する

退院後、骨の癒合(くっつくこと)をじっくりと待ちます。ご自宅では、入院中に習ったリハビリテーションを行う程度で問題ありません。それ以上の強い運動は行わないでください。無理に負荷をかけると痛みや腫れが生じたり、骨の固定材料(金属の板やネジ)が折れたりする恐れがあります。

骨が癒合するにつれて、患部の痛みが治まり、脚の動きが軽くなったように感じられます。術後3か月目を目安に当院を再診していただき、骨癒合の程度を確認します。骨がついてからは、日常生活における活動の制限は基本的にありません。約1年後に、金属板やネジなどの固定材料の抜釘術を行います。抜釘術を終えたら、レクリエーションレベルのスポーツであれば楽しむことができます。

骨がつくまでは自宅療養がおすすめ

骨切り術の術後、骨が再びつくまでの間は、響くような痛みを自覚される方が多いので、自宅療養をおすすめしています。仕事やトレーニングを無理にやり過ぎると骨がつかなくなることもあります。こうなった場合は再手術となりますので、骨がつくまでは我慢が重要です。

骨がついてからも多少の痛みが出ることがある

骨切り術では傷めた膝関節部分も温存されているため、動いているときに若干の痛みが出ることもあります。しかしアライメント(流れ)が良好に保たれていれば、その痛みが増悪していくことは通常あまりありません。

術後も定期的にレントゲン検査を行う

当院の場合、膝のレントゲンや下肢全長、ストレス撮影*などを経時的に実施します。膝がO脚に戻っていないかなどを確認するため、当院で手術をされた方は1年に1回来院していただき確認させていただいています。

ストレス撮影…骨に圧力などのストレスをかけた状態で撮影されたレントゲン

石川博之先生から患者さんへのメッセージ

石川先生

繰り返しになりますが、変形性膝関節症は進行性の病気です。初期であれば保存療法で痛みを取ることは期待できますが、少しずつ病状は悪化していきます。末期になると、膝がうまく動かなくなる恐れもあります。ですから、放置せず、膝がきちんと動く段階で手術を行うことが重要だと考えます。

私たちの施設では、健康にはつらつと歩ける美脚、“はつらつ美脚”を目指しております。患者さんにとって最適な治療法を提供できるように、専門のスタッフを多数そろえて対応させていただいております。膝の痛みにお悩みで手術を考えている方は、是非当院までご相談にいらしてください。