インタビュー

喘息に対するスパイロメトリー検査-必要である場合、必要になる理由

喘息に対するスパイロメトリー検査-必要である場合、必要になる理由
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任...

徳田 安春 先生

筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

梶 有貴 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年04月19日です。

スパイロメトリー検査は、吸気・呼気の空気量を測定する簡単な呼吸機能検査です。喘息を疑うような症状(例えば息切れなど)があれば、スパイロメトリー検査を受けることをおすすめします。以下が具体的な理由です。

すると空気を肺から外に出すのが難しくなります。その結果、咳、喘鳴、息切れ、胸苦しさが生じ、運動や寒気で症状が増悪します。しかし、同じような症状は、風邪や気管支炎肺炎など他の呼吸器疾患でも起こりますし、循環器疾患や他の疾患でも起こることがあります。喘息の治療は肺炎や循環器疾患の治療とは別物なので、きちんと正しい治療を受けるためには、その症状がなぜ起こっているかを知ることが重要です。

また、スパイロメトリー検査によって喘息の治療が正しく効果を発揮しているかどうかも分かります。もしフォローアップのスパイロメトリー検査で喘息がしっかりコントロールされていることが分かれば、効果のある治療ができているということになります。喘息がきちんとコントロールできていなければ、主治医は内服薬を変更したり増やしたりする必要があるかもしれません。

主治医がスパイロメトリー検査をせずに喘息の診断をした場合、必要がないのに喘息薬を飲むことにもなりかねませんし、本当の原因は治療されないままとなることもあります。

一方で、ちょっとした病気で症状が出ているのだろうと思っていても、実は喘息が原因であるというケースもあります。未治療の喘息は、重篤な喘息発作を起こすことがあります。米国では1日約9人が喘息発作で亡くなっています。喘息がきちんと治療されていないと、肺が瘢痕化し、COPDになることもあります。肺が瘢痕化してしまうと、喘息の治療薬はあまり効かなくなってしまいます。

検査を行わないことで、将来的にさらに医療費がかかることにもなりかねません。検査により喘息がないことが分かれば、1ヶ月あたり200ドル〜300ドル(日本円で約22000円〜33000円)の喘息治療薬を節約できます。喘息に罹患していて、スパイロメトリー検査を行っていない場合、喘息発作で救急外来を受診すると3,500ドル以上かかります。

同時に医療者は身体診察やしっかりした病歴聴取もするべきと言えます。検査で喘息だと分かれば、喘息治療薬を処方し、4〜6週間後に再度スパイロメトリー検査を行いましょう。検査の結果、改善を認めていれば治療効果があったということなので、薬を減らせるかもしれません。もし症状が悪化していれば、再度スパイロメトリー検査を行います。もし喘息症状がコントロールできていれば、スパイロメトリー検査は1年か2年に1回でよいでしょう。

喘息のコントロールは以下の段階に沿って進めていきます。

・喘息の症状があればスパイロメトリー検査を行ってもらう

スパイロメトリー検査は多くの医療機関で実施が可能です。もし、受診した医療機関で検査が行えない場合でも、検査が行える専門医療機関を紹介してもらえます。検査の際には、運動時にどのような症状が起こるかを伝えましょう。

・薬を飲む

喘息患者は、喘息発作の予防のために、ベクロメタゾンやフルチカゾンといった吸入ステロイド薬を日常的に使用することが一般的です。また、喘息症状をすぐに和らげるために、アルブテロールのような短時間作用型の吸入薬が必要なこともあります。吸入薬はしっかりと指示通りに使用しましょう。もし週に2回以上、短時間作用型吸入薬が必要であれば、医師に相談しましょう。

・原因となる物質を避ける

花粉、かび、ペット、ゴキブリ、イエダニなどに対するアレルギーは、喘息症状の引き金になります。花粉症の人は、花粉が多いときにはなるべく室内で過ごすようにしましょう。また、室内アレルギーの人は、週に1回寝具を温水で洗濯し空気清浄機や除湿機を付けて、アレルギー対策加工のあるマットレスや枕カバーを使いましょう。

・活動的でいること

運動で喘息が悪化するのであれば、運動前に短時間作用型の吸入薬を処方してもらいましょう。

・風邪やインフルエンザから身を守る

風邪やインフルエンザは喘息症状の引き金になります。よく手を洗い、毎年インフルエンザの予防接種を受けましょう。

 

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 倉敷中央病院 花田沙穂

監修:梶 有貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長

    日本内科学会 総合内科専門医日本プライマリ・ケア連合学会 指導医・プライマリ・ケア認定医

    徳田 安春 先生

    徳田 安春 先生の所属医療機関

  • 筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター  

    日本内科学会 認定内科医日本感染症学会 会員

    梶 有貴 先生

    初期診断能力、初期治療能力に加え入院患の急性期・亜急性期の診断・管理も請け負う「病院総合医」の能力をもった、「日本型病院総合医」を目指すべく筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院に勤務。若手医師をリーダー的立場から牽引している。Value Based Medicineを推進する立場から、この度Choosing Wisely翻訳プロジェクトに参画。

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