COPDは肺の中の肺胞が壊れていく病気で、動くと息苦しいため自宅に引きこもってしまうことも少なくないそうです。ここでは久留米大学病院呼吸器内科の川山智隆先生にCOPDの症状についてお話をうかがいました。
タバコが主な原因であるCOPDは、喫煙者のうち40歳代でおよそ3%、70~80歳では30~40%の方が発症するといわれています。しかし、咳や痰は風邪の症状に類似していたり、労作時の呼吸困難は加齢に伴う症状と思われがちで、「年のせい」として気づかないままに放置されていることも少なくありません。推定では530万人(※NICE研究:Fukuchi Y, et al. COPD in Japan: the Nippon COPD Epidemiology study. Respirology 2004;9(4):458-65. )が罹患しているといわれています。
COPDはゆっくりと時間をかけて進行するため、気づいたときには病状が悪化して、少し動くだけで息切れを起こすなど、日常生活にも支障を来していまいます。そのため、早期発見をして早期に治療を開始することが大切です。
肺は空気中の酸素を取り込み、体内の二酸化炭素を排出しますが、普段の生活の中で使っている肺機能は肺全体のおよそ20%です。残りの80%については予備能力として温存されていますが、その予備能力が使われるのは主に運動をするときです。そのために、病状が悪化してこないと病気の存在に気づきにくいと言えます。
COPDの患者さんの場合は、肺の中にある肺胞が崩れて弾力性がなくなったり、気管支に炎症が起きたりしているため、肺の中に溜まった空気を十分に吐き出すことができません。そこで患者さんは頻繁に呼吸を繰り返して酸素の取り込みと二酸化炭素の排出を行うわけですが、特に息を吐き出すことが困難となるCOPDでは、排出時に多大なエネルギーを必要とするのです。このように エネルギーを消耗しながら頻繁に呼吸を行っても、空気を十分に排出することができないため、次第に肺の中の空気が溜まっていき、息を吸い込む能力も少なくなって、運動ができなくなるのです。
通常、呼吸は横隔膜を使って行われますが、運動をする際には腹直筋、胸の筋肉および首の筋肉といった呼吸補助筋を使います。ところが、COPDの患者さんの場合には、普段からこれらの呼吸補助筋を使って呼吸をしなければならないため、息をすること自体が非常に辛い状態にあるのです。肺の最小単位である肺胞などが崩れてしまう病気がCOPDですが、一旦崩壊した肺は元に戻ることはありません。そのためCOPDが発症すると、呼吸をするときの辛さが生涯続くことになるのです。
COPDの症状には、
などがあります。
COPDの症状のひとつに息苦しさがあります。動くと息苦しくなるため、患者さんは自ら防御して動かなくなります。すると息苦しさも感じないので、病院へも行かなくなります。その結果、自宅に引きこもるようになり、うつ病に罹る方もおられます。外部とのコミュニケーションが断たれるため、心の病気にもなりやすいともいわれています。
久留米大学 医学部内科学講座 呼吸器・神経・膠原病内科部門 呼吸器病センター教授
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