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COPDの在宅酸素療法や、南砺市民病院で行う在宅医療について

COPDの在宅酸素療法や、南砺市民病院で行う在宅医療について
品川 俊治 先生

南砺市民病院 副院長 内科部長 呼吸器センター長 臨床教育・研修センター長 地域リハビリテーシ...

品川 俊治 先生

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COPDの進行によって在宅酸素療法が必要となる場合があります。また、患者さんによっては、全身の機能が低下して日常生活を送ることが困難となるため、在宅医療を受ける患者さんもいらっしゃいます。

富山県南砺市にある南砺市民病院では、COPDのように在宅医療を必要とする多くの患者さんを支えるために、積極的な在宅医療を行っています。

本記事では、南砺市民病院の副院長であり内科部長の品川俊治先生に、COPDで行う在宅酸素療法や、南砺市民病院における在宅医療についてお話を伺いました。

COPDで在宅酸素療法が必要となるのは?

呼吸器症状や肺機能の悪化がみられるとき

COPDとは、喫煙などの有害な煙によって肺が障害され、咳や痰、息切れなどの症状が現れる病気です。COPDが進行して肺の機能が大きく低下すると、体に十分な酸素を取り入れることができなくなります。このような状態に対して、酸素供給機器からチューブを通して酸素を吸入する「在宅酸素療法」の導入を検討します。

在宅酸素療法を導入するかどうかは、主に症状や肺機能をみて決定します。たとえば、息苦しさによって日常生活を送ることが困難な場合には、在宅酸素療法を行うことでADL(食事やトイレ、入浴や移動などの日常生活上での動作)やQOL(生活の質)の改善効果が期待できます。

また、肺機能が低下すると、酸素と二酸化炭素の交換が十分にできず、低酸素血症や高炭酸ガス血症を起こすことがあります。これらの状態になると、命を落とす危険性があるため、早めに在宅酸素療法の導入を行います。

患者さんの中には、強い呼吸症状がなかったとしても、低酸素血症や高炭酸ガス血症が起きている方もいらっしゃいます。そのため、症状や肺機能などを総合的に評価して、適切な在宅酸素導入時期を見極める必要があります。

低酸素血症…動脈血中の酸素が正常より低い状態にあること

高炭酸ガス血症…呼吸によって二酸化炭素を体外に排出できなくなった状態

在宅酸素療法の方法は?

在宅酸素療法の導入が決定したら、自宅で使用する前に病院に数日間入院していただき、酸素供給機器の扱い方などについて看護師などから指導を受けます。そして、ご本人やご家族が問題なく使用できるようになった段階で、在宅酸素療法を開始します。

在宅酸素療法

 

自宅にいる間は、上のイラストのように据え置き型の酸素供給機器を使用します。この酸素供給機器は、空気中から酸素を取り出して濃縮する「酸素濃縮機器」と呼ばれるタイプのものです。機械から出ているチューブは家の中を歩き回れるだけの長さになっていて、トイレや入浴中もチューブをつけたままの状態にしていただきます。

外出時の酸素療法

外出時は、持ち運びが可能な小型の酸素濃縮器または液体酸素ボンベから酸素を吸入します。患者さんの中には、「他人に奇異な目で見られないか」などと心配される方もいらっしゃいます。そのような不安を少しでも解消するために、眼鏡のフレームの中にチューブを入れて目立たないようにした製品なども販売されています。

COPDで行う在宅医療とは

記事1『COPD(慢性閉塞性肺疾患)について〜呼吸器症状がある喫煙者は早めの受診を』でもお話ししたように、COPDは呼吸器障害だけでなく、サルコペニア(全身の筋肉量が減少して、筋力が衰えること)や栄養障害など、全身にもさまざまな影響をもたらす恐れがあります。全身状態が悪化すると、自力で日常生活を送ったり、通院したりすることが困難となります。

このような患者さんに対しては、患者さんの自宅で医療・療養を行う「在宅医療」が必要な場合があります。COPDの患者さんの在宅医療では、病院で行う医療と同じように薬物療法や酸素管理、リハビリテーションなどを行います。そのほか、病院やクリニックなどと連携を取りながら、急性増悪時に迅速に対応することも在宅医療の重要な役割です。

南砺市民病院の在宅医療

南砺市民病院の在宅医療

南砺市民病院の在宅医療 2

南砺市民病院では「総合診療医」が中心となり、在宅医療に積極的に取り組んでいます。総合診療医とは、特定の臓器に対して診療を行うのではなく、患者さんの生活背景や家族歴といった社会問題にも対応しながら、全身の幅広い診療を行う医師のことです。

南砺市民病院は、総合診療医育成や地域医療研修に力を入れており、初期研修医(協力型)や総合診療医を目指す多くの医師が研修に訪れています。

ここからは、南砺市民病院で総合診療医の主導のもと行われている在宅医療の取り組みについてご紹介します。

南砺市民病院の在宅医療 3

「患者さんがどのような人生を送りたいか」をスタッフ全員で話し合う

在宅医療を行ううえで大切なことは、「患者さんがどのような人生を送りたいか」をいちばんに尊重し、それに合わせた医療を提供することです。

そのため、当院では在宅医療を開始する際に、患者さんのご自宅に医師、看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなどスタッフ全員が集まり、患者さんがどのような人生を送りたいのかをよく話し合います。そして、そのうえで患者さんの治療目標を決定します。

たとえば、「お出かけしたり、庭仕事をしたりしたい」という方と「家で本を読んでゆっくり過ごしたい」という方とでは、同じ病気であっても治療内容は大きく変わってきます。

また、COPDに関していえば、在宅酸素療法を行うことで患者さんは本当に幸せになれるかをしっかりと考える必要があります。

「積極的に治療をして長生きする=患者さんの幸せ」であるとは限りません。患者さんがどうしたら幸せになるのかを考え、治療の引き際をみつけることも、在宅医療に携わる私たちに課せらせた大切な役割です。

南砺市民病院の在宅医療	4

臓器別専門医と総合診療医との協働で成り立つ医療

先にもお話ししたように、当院では総合診療医が中心となり在宅医療を担っています。普段の診療では、ポケットエコー(小型の超音波検査機器)なども使用し、総合診療医としての知見を生かした身体検査を行いながら、いつもと違うことはないかを細かくチェックします。その中で、総合診療医には対処できないような異変が生じた場合には、臓器別専門医である私たちに連絡が入ります。

臓器別専門医と総合診療医、どちらが欠けても、患者さんが必要とする医療を提供することは不可能です。当院では総合診療医と臓器別専門医が一体となってシームレスな医療を行うことで、地域全体の患者さんを支えています。

南砺市民病院の在宅医療	5

「最期は家で過ごしたい」という希望を叶える

在宅医療だけに限りませんが、「患者さんがどのような最期を過ごしたいのか」に応えることはとても大切なことです。

当院では、「最期は家で過ごしたい」という患者さんには、急変時に救急車で病院に搬送するのではなく、医師が患者さんの家に行ってお看取りをしています。

もちろん、家ではなく病院で最期を迎えたいという患者さんもいれば、そう言っていた患者さんが「やっぱり家で過ごしたい」と気持ちが変わることもあります。

患者さんの願いに応えるために、自宅と病院のどちらでも選べるようにしてあげることは、私たち医療従事者の大切な役割です。

在宅医療に関する今後の展望

写真左:品川俊治先生、写真右:栗山政人先生(南砺市民病院診療部長・内科部長)
写真左:品川俊治先生、写真右:栗山政人先生(南砺市民病院診療部長・内科部長)

高齢化社会が急速に進行し、病院が主体となって高齢者を支えていかなくてはならない時代を迎えています。そのためには、医師だけの力ではどうしようもなく、多職種や地域のさまざまな機関などと緊密な連携をとりながら、地域全体で高齢者を支える仕組みを作る必要があります。

そして、その中で考えなくてはいけないことは、「高齢者が最期まで自分らしく生きるためにはどうしたらいいか」ということです。そのために、在宅医療は必要不可欠な仕組みです。

しかし、地域によっては、在宅医療を受けたくても受けることができない地域も多くあります。

もっと多くの方が在宅医療を受けることができるようにするためには、在宅医療の現場からデータを発信して、在宅医療の必要性を訴え続ける必要があります。また、その際には在宅医療の良さを訴えるだけでなく、在宅医療の問題点も洗い出すことも重要です。当院では、より良い在宅医療を全国に普及させていくために、今後も在宅医療に力を注いでいきます。