COPDとは、咳や痰、呼吸困難などの症状が現れる病気です。COPDの主な原因は喫煙であるため、予後(その後の経過)を改善するためには禁煙が大切になります。予後を改善するために、ほかにはどのような治療法があるのでしょうか。また、症状の悪化を防ぐために有効な方法はあるのでしょうか。
今回は、国立国際医療研究センター病院の呼吸器内科診療科長である放生 雅章先生に、COPDの治療法とともに、症状の悪化の予防法についてお話しいただきました。
COPDの治療法には、主に次の4つがあります。
第一に行うべきことは禁煙です。禁煙はCOPDの予後を改善します。逆に、生活指導の禁煙ができないと治療は難航します。呼吸リハビリは、2019年現在あまり積極的には行われていませんが、腹式呼吸と口すぼめ呼吸をすすめています。
また、こちらの記事でお話ししたように、COPDでは、サルコペニアやロコモティブシンドロームと関連し、筋肉量が落ちてしまうことがあります。このように筋肉量が減ると、COPDの経過が悪くなることが分かっているため、COPDの改善のためには運動が大切といえます。
軽症の患者さんでは、禁煙や運動だけで改善する方もいらっしゃいます。ただし、ほとんどの患者さんは症状が改善すると禁煙や運動をやめてしまいます。症状が改善しても、壊れた肺自体が治るわけではないため、禁煙を始めとした生活指導を継続して受けていただく必要があります。
生活指導を行って改善しなかった場合、薬物療法を行います。
COPDには、“長時間作用型の抗コリン薬”か“長時間作用型のβ2刺激薬”、またはこれら2つの薬を使用します。
喘息を患っている方、急性増悪(症状が著しく悪化すること)を起こすことがある方、重症の方は吸入ステロイドを用いることもあります。近年では、長時間作用型の抗コリン薬と長時間作用型のβ2刺激薬、吸引ステロイドの3つの合薬も登場しています。
COPDでよく使われる薬は全て吸入薬(薬を霧状に噴出させて口から吸い込む薬)です。吸入薬は飲み薬や貼り薬よりも効果が高いとされますが、問題点として吸入の仕方で効果が変わってしまう点が挙げられます。そのため、COPDが進行した患者さんでは上手く吸うことができずに、本来の治療効果を得られない方もいらっしゃいます。さらに、飲み薬などに比べて手間がかかるため、治療の途中でやめてしまうケースもあります。吸入薬で治療を行うときは、きちんと吸入できているかどうかを確認することが大切です。
強い呼吸困難が現れている場合には、在宅で酸素吸入を行います。COPDに限らず、肺結核や肺がんの患者さんに対しても行われることがあります。
具体的な方法として、患者さんは酸素吸入器と酸素供給装置を身につけます。酸素吸入器は複数ありますが、日常生活に便利な鼻カニューレが使用されることが多いでしょう。酸素供給装置には、酸素濃縮器、圧縮酸素ボンベ、液体酸素の3種類があります。一般的に、自宅では酸素濃縮器を設置し、外出時には圧縮酸素ボンベを使用することが多いでしょう。
アメリカでは肺容量減量手術が行われることがあります。肺容量減量手術とは、肺の一部を切除して肺の容量を少なくし、横隔膜の負担を減らして呼吸機能の改善をはかる手術です。治療成績があまりよくないため、2019年6月時点、日本で行われることは少ない治療法です。
COPDの急性増悪とは、症状が以下のように著しく悪化することをいいます。
厳密には、“息切れの増加、咳や喀痰の増加、膿性痰の出現、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更あるいは追加が必要となる状態をいう”と定義されています。
COPDの急性増悪では、呼吸不全*におちいってマスク式人工呼吸器、挿管(専用のチューブを鼻、口から挿入して、呼吸のための空気の通り道を確保すること)が必要となることもあります。
*呼吸不全:肺のはたらきが悪くなって、体に十分な酸素を送れなくなること
なお、急性増悪の原因として、喫煙とともに、インフルエンザ、風邪、肺炎などの感染が多いことが分かっています。
COPDの急性増悪を予防するには、まずは禁煙を行いましょう。喫煙は何よりCOPDの急性増悪のリスク要因です。
禁煙とともに、以下のように感染を防ぐことも大切です。
これらの対策の中でも、インフルエンザの予防接種や肺炎球菌ワクチンの接種を積極的に行ってほしいと思います。特に、高齢の患者さんにとっては、感染症によるCOPDの増悪を防ぐことにつながるでしょう。
また、小さなお子さんは風邪などの感染症にかかっていることが多いため、子どもと接するときには感染への注意が必要です。
国立国際医療研究センター病院 呼吸器内科診療科長 第一呼吸器内科医長
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