胃腸炎とは胃や小腸、大腸の粘膜に炎症が生じることをいい、典型的な症状には下痢や吐き気、嘔吐、腹痛などが挙げられます。主に病原体となるウイルスや細菌、寄生虫の感染によって発症し、これらを原因とする胃腸炎を“感染性胃腸炎”と呼ぶことがあります。感染経路は、感染者の糞便に含まれたものが何らかの原因で他者の口に入ることによる感染や、汚染された食品・水を摂取することによる感染が考えられます。
本記事では、胃腸炎の原因となる病原体別に分けて、感染経路や治療法、予防法を詳しく解説します。
主にノロウイルス(SRSV)、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどのウイルスが原因で発症する胃腸炎をウイルス性胃腸炎と呼びます。なかでもノロウイルスやロタウイルスは流行期が明らかになっており、ノロウイルスは12月頃、ロタウイルスは3~4月の春先に流行します。
主な感染経路は、感染者の嘔吐物・糞便に含まれたウイルスが何らかの原因で他者の口の中に入ってしまう“糞口感染”が考えられます。特にロタウイルスは感染力が高く、ウイルスの粒子が10~100個口の中に入るだけで感染してしまうといわれます。また、ノロウイルスでは糞口感染以外に汚染されたカキなどの二枚貝を生で食べることによる食中毒で胃腸炎が生じることもあります。
症状に対する治療(対症療法)が中心です。整腸剤や痛み止めなどを処方されることがあるほか、下痢や嘔吐で水分が多く排出され脱水症状が起きる危険があるため、水分補給をすることが大切です。
主に腸炎ビブリオ菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター菌などの細菌が原因で発症する胃腸炎を細菌性胃腸炎といいます。ウイルス性胃腸炎より発症頻度は低く、夏に流行が見られます。
主な感染経路は、汚染された食べ物を食べることによる食中毒です。原因食品は腸内ビブリオ菌では魚介類、サルモネラ菌ではブタ・ニワトリ・ウシなど、カンピロバクター菌はニワトリなどが一般的です。また、菌を持っている動物に触れ、手についた菌が口に入ることで感染する“接触感染”の可能性も考えられます。
ウイルス性胃腸炎同様に対症療法が検討されるほか、病原性大腸菌や重症のサルモネラ菌・カンピロバクター菌による胃腸炎の場合には、病原体に合わせて抗菌薬による治療が併用されることもあります。
感染性胃腸炎にはウイルス性・細菌性のほかに、寄生虫が原因で発症する胃腸炎もあります。寄生虫には主に、クリプトスポリジウムや、アメーバ、ランブル鞭毛虫などが挙げられます。また、感染性胃腸炎以外の胃腸炎として、毒性のある化学物質などを摂取することが原因で発症するものもあります。
寄生虫が原因の胃腸炎の場合、主に水道水や食品から感染することがあります。また、毒性のある化学物質が原因の胃腸炎の場合は、たとえば、毒キノコを食べた場合やヒ素・鉛などの化学物質で汚染された水や食品を摂取して発症することがあります。さらに抗がん剤や抗菌薬、免疫抑制剤など一部の薬の副作用として胃腸炎が生じることもあります。
寄生虫による胃腸炎の治療法としては、対症療法のほかに抗寄生虫薬の処方が検討されます。また、毒キノコなどを食べて胃腸炎になった場合は、対症療法が中心となることが一般的です。そのほか、薬によって胃腸炎が生じたときには、薬の服用の中止や薬剤の変更が検討されるため、まずはかかりつけ医に相談しましょう。
胃腸炎の多くは食品や水から感染するため、まずは食中毒予防を心がけるほか、手洗いなどの対策も大切です。
など
ウイルス性胃腸炎では、手に付着したウイルスが口の中に入ることで感染することが懸念されます。そのため、こまめな手洗いを行うなど感染症対策を心がけることが大切です。
また、感染者との接触があると感染する確率も高まるため接触を避けるほか、自宅などで感染者が出た場合には患者を隔離する、患者が使用したものを消毒するなどの対策をし、二次感染を防止するとよいでしょう。
胃腸炎には自然治癒が見込めるものもあれば、重症化し治療が必要となるものもあります。しかし、通常は数日から1週間程度で自然治癒する病気です。そのため、健康な人であれば受診せずに自宅で様子を見てもよいでしょう。自宅で様子を見る際は、嘔吐しないように少量ずつ水分を取ってください。食事は無理に食べようとせず、食欲が出てからにしましょう。
ただし、水が飲めない、飲んでもすぐに嘔吐してしまう、血便がある、高熱がある、ぐったりしている場合は、治療が必要となる場合もあるため、内科や消化器内科などの受診を検討しましょう。
医療法人社団ときわ 理事長、医療法人社団ときわ 赤羽在宅クリニック 院長
2008年、東京大学医学部卒業。卒業後の2年間の研修医生活のなかで多くの矛盾や課題を発見したことがきっかけで、初期臨床研修終了後は医療制度・政策を研究するためすぐに東京大学大学院に進学し、公衆衛生学を学ぶ。在宅医療には大学院生時代のアルバイトから携わる。医療の矛盾や課題は、在宅医療という形でも解決できると考え、以後、在宅医療を専門とする診療所で院長として診療に従事。約300名の主治医として、患者さんに寄り添った診療を提供。より質の高い在宅医療を多くの方に提供するため、2016年9月に在宅医療を専門とする「赤羽在宅クリニック」を開業し、日々診療に邁進している。
小畑 正孝 先生の所属医療機関
関連の医療相談が10件あります
ウイルス性のガゼで無く、様子見の診断について、いつまで。
9月23日頃から、喉に少し違和感があり、咳は、1度出たら続けて出る。止まったらしばらく出ないの繰り返しで放置してました。 9月29日の夕方から身体がだるくなり、30日に体温が38℃超えてました。 ここから、しばらく起き上がれなく、寝て過ごして、月曜日の朝に病院に行きました。 発熱しているとのことで発熱外来で調べてもらいましたが、朝体温測ったら37.7℃あったのですが、病院で測ったら36.7℃になってました。ウイルス検査はコロナ、インフル共に陰性でしたので、症状が落ち着いているので様子見にしましょうということで終わりました。 自宅に帰り、再度体温を測ったら36.7℃だったので、もう治るかなと思ったのですが、夜に測定すると、37.7℃に戻ってました。その日は解熱剤を飲んでねて、今朝体温測ると37.7℃から変わっていなかったです。咳はずーっと、喉が痛いのもあるし、普段出ないが、1度出ると続けて出て、一通り咳をしたらまた落ち着くといった感じです。咳の時は痰もでます。 病院では、症状落ち着いてるので様子見でしたが、まだ、戻ってきました。このまま様子見で問題なさそうでしょうか? あと、最近の発熱外来ってやつは、問診のみで直接見てもらえないパターンになってますね。コロナ前は、喉の炎症を見て消毒してくれたり、聴診器で調べてくれたりしてたのですが、最近はしてくれないものなのでしょうか? もう一度病院に、発熱状態で行って、コロナやインフルエンザではなかったのですが、症状が戻ってきたので普通の外来で見て貰えませんか?というのは出来るものなのでしょうか?
高齢者に対するがん検診等
胃がん、大腸がんを予防する上で、内視鏡検査が効果的だとされていますが、高齢者が内視鏡検査を受ける是非についてご教示お願いします。 大腸検査だと下剤の負担があったり等するので、高齢者には内視鏡検査を実施すべきではないのか?そうだとすれば、高齢者のがん予防策として効果的な検査は何なのか。 ちなみに、両親にがん検査を受けさせたいと思っておりますが、現時点、症状は特にありません。ただ、高齢なので、がん予防対策をしっかりと取りたいと思ったわけです。 便潜血検査は受けているので、それよりも効果的な検査があれば知りたいです。 胃だとピロリ菌の除菌があると思いますが、高齢者の除菌の是非についても知りたいです。 ご教示よろしくお願いいたします。
なかなか痛み吐き気が治らない
9月1日から胃痛がおき、レパミピドとコリオパンとピロリ菌に効果ある薬(名前忘れてしまいました。)を飲んでいたのですがあまり回復せず、9月16日に内視鏡することにし、その時にピロリ菌の検査も致しました。 その日からエソメプラゾールとレバミピドを飲み始め19日に痛みが強く再度受診した際に、CTと採血をしました。 CT採血ともに異常はありませんでした。 ここ数日朝方4時か5時ごろくらいから胃痛が始まり起きてしまいます。 その旨も医師に相談したら、寝る前にロキソニンを飲むことを推奨され昨日寝る前に飲んでみたのですが今日も痛みで起こされてしまい、吐き気と痛みが強いです。 精神的なものから来てるのか、ただ逆流性食道炎によるものが強いのか分かりません… 仕事に行けないなどの支障があるので、どうにかしたいのですがこのまま同じクリニックで診てもらったほうがいいのか、または別の大きな病院行った方がいいのか心療内科にかかったほうがいいのか分かりません。 どうかご参考までにご意見聞かせて頂けましたら幸いです。
胃腸炎について
先週から胃腸炎で、1日に何度も下痢が続いており、血便が混じるほどになっています。ここ数日、お医者さんの指示で、お粥やうどんをたべさせていますが下痢は解消されず、食べ物の制限に子供のストレスも大きくなっています。お医者さんからは断食や食事制限をしています。何か他の食べ物で、子供に食べさせて良いものはありませんでしょうか?教えてください。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「胃腸炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします