真夏はもちろん、5〜6月の急激に暑くなった日でも注意が必要な熱中症。なかでも高齢の方は暑さを自覚しにくいことも多く、本人が気づかないうちに熱中症が重症化し、最悪の場合死亡するケースもあります。熱中症はどのように予防するのか、もし熱中症になったときはどのように応急処置を行うべきか、赤羽在宅クリニック院長の小畑正孝先生にお話を伺いました。
2013年厚生労働省のデータによると、熱中症による総死亡者数は1,077名です。そのうち、およそ8割の方が65歳以上で、熱中症による死亡者数の大半を占めています。また熱中症の発生場所については、高齢者に限らずおよそ8割が住居となっています。
上記のように、熱中症によって亡くなる高齢者の数は、若年者よりも大幅に多いことがわかっています。在宅医療を受けている方や、老人ホームで生活されている方の場合には、周りの人間が適切な環境に配慮できることから、熱中症によって死亡に至るケースは多くありません。一方、おひとりで生活されている高齢者の場合、自分で環境のコントロールができずに熱中症になる、また熱中症になった場合すぐに気付ける人が周りにおらず応急処置ができない、などの理由で熱中症が重症化しやすいといえます。
熱中症を予防するには、まず適温の涼しい環境を作ることが大切です。記事1『5〜6月でも要注意!高齢者の熱中症はなぜ起こる?原因と症状を詳しく解説』でお話ししたように、
・高齢者は暑さを自覚しにくくなっているため高い室温に気付けない
・気温が高いにもかかわらずエアコンをつけずに過ごしている
・認知症によって気温に対して適切でない服装をしている
などのケースが見受けられます。そのような場合には、できるだけ早く周囲の方々が高齢者の異変に気づき、適切な温度コントロールによって環境を整えてあげることが大切です。
真夏の気温が高い日はもちろん、5〜6月の気温が急激に上がった日にも、熱中症に注意が必要です。暑さに敏感で、適正な温度へ環境をコントロールできる方であれば問題ありません。しかし先に述べたように高齢者の場合は気温が高くなってもエアコンをつけなかったり、長時間の外出をしたりと、熱中症になるリスクが高まります。5月頃からは天気予報をチェックし、気温が高い日には外出を控える・外出時間を短くするなどの対策を行って、熱中症を予防しましょう。
高齢者の方は、若年者に比べて体力が落ちています。加えて食事や睡眠が不十分になると、虚弱状態(フレイル)に陥り、熱中症も重症化しやすくなります。そのような事態を防ぐために、特に高齢者の方は、日頃からバランスのとれた食事、充分な睡眠をとるように心がけましょう。
水をこまめにとることは、熱中症予防の基本です。一般的な熱中症対策として、スポーツドリンクなどの経口補水液の飲用が推奨されます。しかし経口補水液は、屋外で労働する方やスポーツ選手など、活動量・発汗量が極端に多い方々を対象につくられたものです。
高齢者で、通常通り食事ができている場合には、食事から塩分・糖分は充分に摂取できると考えられます。
経口補水液には、脱水症予防のために糖分・塩分が配合されています。飲用する方が糖尿病・高血圧・心不全などの持病を抱えている場合、過剰な糖分・塩分摂取により、持病に影響を及ぼすリスクがあります。このように、患者さんごとに最適な水分補給方法は変わります。主治医に相談のうえ、水・経口補水液のどちらをどのくらいの量とるべきかを知り、適切に熱中症対策を行うことをおすすめします。
熱中症はさまざまな要因が重なって引き起こされ、また高齢者は持病を抱えていることも多いため、一見して熱中症であることを断定できるケースはまれです。しかし記事1『5〜6月でも要注意!高齢者の熱中症はなぜ起こる?原因と症状を詳しく解説』のような症状がみられた場合には熱中症を疑い、まずはその方の体を冷やすこと、そして涼しい環境に移動させることが重要です。体を冷やすときには、太い血管のある首、足の付け根、脇の下に冷たいものを当てると、効率よく体を冷やすことができます。次に衣服をゆるめ、扇いで風を当てます。若年者であれば、応急処置を施せば自分で水を飲めるくらいまで回復することも多いのですが、高齢者の場合には回復も遅く、肺炎など別の病気を併発することもあります。なるべく早いうちに応急処置を行うようにしましょう。
熱中症の起こりうる環境で、意識がない・倒れている・自分で動けない・呼びかけに応えない・会話ができないなどの意識障害がみられる場合には、熱中症であるか否かにかかわらず、救急車を呼ぶことを推奨します。特に高齢者の場合には熱中症が重症化していることがあるため、早めの対処を行いましょう。
医療法人社団ときわ 理事長、医療法人社団ときわ 赤羽在宅クリニック 院長
2008年、東京大学医学部卒業。卒業後の2年間の研修医生活のなかで多くの矛盾や課題を発見したことがきっかけで、初期臨床研修終了後は医療制度・政策を研究するためすぐに東京大学大学院に進学し、公衆衛生学を学ぶ。在宅医療には大学院生時代のアルバイトから携わる。医療の矛盾や課題は、在宅医療という形でも解決できると考え、以後、在宅医療を専門とする診療所で院長として診療に従事。約300名の主治医として、患者さんに寄り添った診療を提供。より質の高い在宅医療を多くの方に提供するため、2016年9月に在宅医療を専門とする「赤羽在宅クリニック」を開業し、日々診療に邁進している。
小畑 正孝 先生の所属医療機関
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2年前の夏に熱中症にかかりました。 数ヶ月くらいだるさがあったのですが治りました。 しかし、それから暑い場所に行くとフラフラしたり、気持ち悪くなったりする事が増えました。 熱中症の後遺症というのはあるのでしょうか?
熱中症、自律神経
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