熱中症とは一般に“暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称”と定義されます。めまいや立ちくらみ程度の軽症な場合もありますが、一歩間違えれば命を落とすこともある病気です。しかし熱中症が起こりやすいかどうかを事前に分かっていれば、予防することができます。
本記事では、暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)について詳しく解説します。
暑さ指数とはWBGT(湿球黒球温度)ともいわれ、元々は熱中症予防を目的として開発されました。WBGTは人体と外気との熱バランスに影響の大きい気温、湿度、輻射熱(地面などの周りからの熱)の三つを考慮された指数です。具体的には日陰(屋内および屋外で太陽照射のない場合)では“WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度”、日なた(屋外で太陽照射のある場合)では“WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度”と計算されます。
WBGTの単位は気温と同じ摂氏度(℃)で表現されますが、上記で説明した通り気温とは異なる数値です。ただの気温の高低だけではなく、湿度や輻射熱も考えることでより体感に近い指数となっている為です。同じ気温でもそのときの湿度や太陽の光の強さなどにより熱中症へのかかりやすさが大きく変わるという点で、熱中症の対策においてWBGTを知ることが非常に重要だということがわかります。現在では、電子式のWBGT計も登場しており、より簡便に調べることができるようになっています。
WBGTは環境の指針として有効であると認められていて、ISO(国際標準化機構)などで国際的に規格化されています。日常生活に関する指針は日本生気象学会、運動に関する指針は(公財)日本スポーツ協会が規格化しています。
日常生活における熱中症の危険度合いは、WBGTでの温度基準に基づいて4段階に分かれています。
強い生活活動で熱中症が起こる危険性があるとされています。つまり、激しい運動や重労働を行った際に、熱中症が起こる危険性があります。
運動や激しい作業時に熱中症が起こる危険性があります。したがって小まめに十分な休憩を取るように心がけましょう。
運動をしているかにかかわらず熱中症が起こる危険性があります。そのため、“厳重警戒”では出かける際に極力炎天下を避け、室内ではエアコンや扇風機を活用して室温の上昇に注意する必要があります。
“厳重警戒”同様、運動をしているかにかかわらず熱中症が起こる危険性があります。またもっとも危ない“危険”では高齢の方は安静状態でも発生するリスクがあり、外出をなるべく避けて涼しい室内に移動することが重要です。
運動における熱中症の危険度合いは、WBGTでの温度基準に基づいて5段階に分かれています。
水分や塩分を適宜補給することで、熱中症の危険は少ないとされています。
熱中症による死亡事故が発生するリスクがあるため注意が必要です。積極的な水分・塩分補給が必要となります。
積極的に休憩を取ることが推奨されます。特に激しい運動では30分おきに休憩を取るといいでしょう。
激しい運動は避け、よりこまめな休憩、水分・塩分補給が必要となります。そしてさらにWBGTが上昇した場合には基本的に運動を中止する必要があります。
特別な場合以外、運動は中止します。特に子どもの場合は、大人に比べて熱中症になりやすいため中止すべきとされています。
自身の住む地域のWBGTを得る方法のひとつには、環境省HP内の熱中症予防情報サイトがあります。ここでは現在のWBGTである実況推定値だけではなく、気象庁の資料をもとに独自の方法で算出された予測値も掲載されているため、この先のWBGTも知ることができます。また、環境省HPだけではなく気象サイトやテレビなどの各種気象情報でも情報を得ることができます。
WBGTは気温とは異なり、より体感に近い指数となっているので熱中症予防において非常に重要となります。WBGTに基づいて、日常生活・運動のそれぞれにおいて指針が示されているので参考にしながら予防対策を行うとよいでしょう。また、これらのWBGTは環境省HPや各種気象情報で確認することができます。WBGTを活用して、日々の熱中症対策に生かしましょう。
井上 陽介 先生の所属医療機関
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熱中症の後遺症?
2年前の夏に熱中症にかかりました。 数ヶ月くらいだるさがあったのですが治りました。 しかし、それから暑い場所に行くとフラフラしたり、気持ち悪くなったりする事が増えました。 熱中症の後遺症というのはあるのでしょうか?
熱中症、自律神経
8/17日頃食事もとらず、睡眠不足で、最高気温35度の中、日中暑い場所で長時間過ごし、水分も1口ほどしか取らず、夜頃目的地に向かい、涼しい場所に移動しようとした所、その場所が閉鎖されていたことを確認した瞬間、体が内から湧き出るように赤くなり、灼熱感に見舞われ熱中症で倒れてしまい、救急車を呼ぶか迷ったが、コンビニで氷と経口補水液、水、パンなどを買い、近くのトイレで氷を頭からかぶり、水分をとって、全身を1時間ほど冷やし続けた。なんとか意識を戻して家に帰り体を冷やしながら寝たが、部屋が暑かったため、朝起きた瞬間同じ症状に見舞われ、全身が赤くなり内から湧き出るような熱を感じた。外が暑くて外出出来なかったため朝頃病院へ行くと熱中症と診断され冷たい点滴を2500ml打った。次の日からも体の内部から赤いものが出て、それが20日程続いており、熱が下がらない状態。体温は脇から測るので、発症日から37℃程しか熱はなかったが、内部温度は非常に高い状態だった。その後も体調調節が効かず、部屋の温度が1℃上がるだけでも体が真っ赤になってしまったりする。体の深部温度を下げるためには冷たい点滴を打つしかないのでしょうか。サーモグラフィーを使って体の内部の温度を調べたり、改善に向かうしっかりとした治療を望んでいるのですがどうしたら良いのでしょうか。
最近頭痛がひどいです。
先週の土曜から体調が悪く、一昨日に受診して熱中症だと診断され点滴をやりました。 2日間自宅療養していたけど、症状がよくなりません。 まだ頭痛、眩暈、立ちくらみ、腹痛、下痢、手足や首の痛み、最近は幻聴があります。 明日、受診したときに血液検査と尿検査をして結果がでるのですが、他に考えられる病気ってありますか? 最近2ヶ月仕事のことで悩んでいるのですが、ストレスからも考えられますか?
脱水、夏バテや熱中症の対策、対応について。
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