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補聴器と上手に付き合うために――選び方、使い方のポイントを解説

補聴器と上手に付き合うために――選び方、使い方のポイントを解説
長谷川 賢作 先生

社会福祉法人 大阪暁明館病院

長谷川 賢作 先生

目次
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難聴は放置しておくと社会生活に支障をきたし、認知症のリスクになるといわれています。薬や手術による治療が困難であったり希望しなかったりする場合でも、補聴器を装用することで聞こえを補うことは可能です。本記事では補聴器の正しい選び方や注意点などについて、大阪暁明館病院 耳鼻咽喉科(じびいんこうか) 部長の長谷川 賢作(はせがわ けんさく)先生に伺いました。

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補聴器は加齢による難聴など、軽度から高度難聴の患者さんに有効な補装具です。自分の耳で聞くことが最善ですが、これがかなわない不自由さを補ってくれるのが補聴器であると考えていただくとよいでしょう。

補聴器は基本的に音を大きくする器械ですので、聞きたい音を選り分けたり、絞り込んだりしてくれるものではありません。雑踏や電車の中、工事現場などでは正常な聴力であっても会話は難しいものですが、このような状況では補聴器をつけても会話は難しいものです。

難聴の方と話すコツは、“ゆっくり”“はっきり”話すことです。大声で話すことにはあまりメリットがありません。うるさい場所では、補聴器になるべく近寄ってゆっくりと一言一言はっきり話すようにしてください。

補聴器には音を増幅して聞こえを補う“気導補聴器”のほか、骨に振動を伝える“骨導補聴器”があります。

  • 気導補聴器

一般的に“補聴器”と呼ばれているもので、増幅した音声を外耳から内耳に伝えます。機種が多く、主に耳穴型と耳掛け型があります。

  • 骨導補聴器

音声を振動に変えて骨から直接内耳に伝える補聴器で、気導補聴器に比べてノイズが少なくクリアな音になるのが特徴です。近年まで機種が少なく、カチューシャ型やメガネ型のため装着が難しかったのですが、2021年に耳の後ろに貼り付けるタイプの骨導補聴器が認可されました。

  • 軟骨伝導補聴器

耳介軟骨を振動させて音を伝える補聴器で、生まれつき外道がない方や耳漏(じろう)がある方でも使うことができます。

上記の3種類は特別な手術の必要なく装用できます。

ほか手術が必要な補聴器として、頭蓋骨(ずがいこつ)インプラントを埋め込む“骨固定型補聴器”があります。骨導補聴器と同様の原理ですが、より大きな音を安定して聞くことができます。

補聴器を検討されている患者さんには、問診、診察、検査により適応を決定し、補聴器の選択と調整を行います。

まずは外耳道、鼓膜の形態を診察した後、純音聴力検査を実施します。次に、語音聴力検査で聴力に見合った言葉の聞き分け能力があるかを調べます。また同時に、不快閾値(うるさいと感じる音の大きさ)も測定しておきます。問診では聞こえが悪くて不自由と感じる状況について、できる限り詳しく医師にお話しください。

補聴器が必要と判断されたら補聴器のタイプを選定し、患者さん一人ひとりの聞こえにくさに合わせて音質や音量の調整(フィッティング)を行います。当院ではまず、理想値の70%程度の音量を入れて試聴をスタートします。自宅で使用しながら1〜2週間後に来院していただき、補聴器が正しく使われているかのチェックと、補聴効果を確認する検査を行います(音場検査)。そして、約1か月の期間をかけて徐々にボリュームを上げていき、理想値に近づけます。

*補聴器の作製には保険が適用されません。当院で頻用される補聴器の価格帯は1台あたり約10〜20万円です。

日常生活のなかで適切に補聴器の効果を得るためには、細かなフィッティングが重要です。患者さんの聞こえの状態に合わせた百人百様のオーダーメイドとなります。正しく使用するためにも日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定の補聴器相談医が所属する医療機関で診察を受け、医師と相談しながら自分に合う補聴器を選んでいただければと思います。補聴器相談医についてはこちらでご確認ください。

当院の補聴器外来では、補聴器が必要と判断された患者さんに耳掛け型の気導補聴器の貸し出し(試聴)を行っています。貸し出し期間は患者さんによって多少異なりますが、おおよそ2週間から1か月です。日常生活で実際に補聴器を使っていただき、効果が確認できず不要と思われたら返品できます。

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画像提供:リオネット補聴器

補聴器にはさまざまな価格帯のものがあり、どれにしたらよいのか迷われる方も多いと思います。また、補聴器は毎日装用するため消耗していき、おおむね1台あたり5年程度の使用期間となります。また性能は日進月歩で進化していますので、高価なものを長く使うよりも、更新することを考えて無理のない価格帯のものを選ぶとよいでしょう。

近年の補聴器は耳穴型や耳掛け型などの形状のほか、デザインや色、柄など見た目にもおしゃれなものが増えています。年配の患者さんの場合、私個人の意見としては、同価格の“耳穴式”よりも機能が優れていて、ご自身が難聴であることを周囲に気付いていただける“耳掛け型”の補聴器をおすすめしたいです。補聴器をつけていることが分かれば、聞こえにくいかもと思ってもらえますので、少しでもトラブルを避けてコミュニケーションを円滑に進められるのではないでしょうか。

補聴器はご自身のための器械ですので、補聴器の操作やメンテナンスは人任せにしないことが大切です。家族などにメンテナンスを任せている方の中には、故障して聞こえが悪くなっていること自体に気付かず、使い続けてしまっているケースもあります。補聴器によって異なりますが、電池の交換は10〜20日に1回程度の頻度で必要となりますので、聞こえの確認とともにご自身で行うとよいでしょう。

当院の場合、補聴器を購入してから3か月後、半年後、1年後に来院いただき、聴力の経過観察や補聴器の使い方の指導を行っています。

加齢性の難聴はほとんどが徐々に進行するため、ご自身で自覚されていない方が多数いらっしゃいます。今の聞こえを当たり前と思わず、違和感があれば病院で検査を受けていただき、改善に向けて補聴器の導入を検討いただければと思います。またご家族の方も、話していて齟齬(そご)を感じたり、引きこもり傾向があったりするようでしたら、耳鼻咽喉科で検査を受けるようにすすめていただきたいです。

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