ムンプス難聴は、突発性難聴と同様に急性に発症する感音性難聴です。原因不明の突発性難聴とは違って、おたふくかぜの原因となるムンプスウイルスの仕業であることが分かっていますが、突発性難聴と混同されることもあるため、きちんとした診断を受けることが大切です。国際医療福祉大学三田病院で難聴やめまい・耳鳴りに悩む患者さんの診療を多数手がけている鈴木伸嘉先生に、ムンプス難聴についてお話をうかがいました。
ムンプス難聴とは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスとして知られているムンプスウイルスの内耳感染によって生じる難聴で、急性感音難聴のひとつです。感音難聴とは、内耳にある蝸牛(かぎゅう)という、音を感じる器官や聴神経などの異常によって起こる難聴のことをいいます。以下のような特徴があります。
また、耳鳴り・めまいをともなうことがあります。めまいは成人では発症しやすいものの、小児では少ない症状です。聴力障害が治りにくいのに対して、 めまいは2ヶ月以内に治ることが多いとされています。
厚生労働科学研究・特定疾患研究事業によるムンプス難聴の疫学調査結果では、2001年の1年間における全国のムンプス難聴受療患者数は 650人と推計されています。これは人口 100万人に対して5.1人の割合です。ただしこれは治療を受けている人の数であって、難聴の発症率ではありません。ムンプスにかかった人100~500人に対して1件の割合で難聴が発症しているといわれています。発症年齢は15歳以下が多く、 中でも5~9歳に多いとされています。
ムンプス難聴の原因はその名の通り、ムンプスウイルスの内耳感染です。ムンプスウイルスは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスとして知られています。一側性の発症が多いため、 症状を十分に訴えられない小さな子どもの場合は見落とされている可能性もあります。ムンプス発症の4日前から発症後18日以内に発症する急性高度難聴と定義されていますが、ムンプス発症のサインである唾液腺の腫れがなくても難聴が発症することもあるため、ムンプス難聴と診断するには、ムンプスに特異的なIgM抗体の値が明らかに上昇していることが必要です。
ムンプス難聴では聴こえの程度に個人差がありますが、一般に難聴レベル40〜90db程度の中等度の難聴であれば補聴器を使って改善できることもあります。90db以上の高度難聴になると補聴器での改善は難しくなり、人工内耳に移行せざるを得ない部分があります。
しかしながら、人工内耳はムンプス難聴の大半を占める一側性の難聴では保険適応にならないため、ムンプス難聴例での人工内耳の適応はあまり多くありません。近年では一側性難聴の方に対する人工内耳手術も行われ始めており、患者さんのQOL(Quality of life:生活の質)が大きく改善されています。現状では保険適応になりませんが、2016年から先進医療*として行えるよう準備をしているところです。
*先進医療:厚生労働大臣が認めた先進的で高度な医療。先進医療の技術料は全額自己負担になる。
おたふくかぜワクチンによる抗体陽転率(ワクチン接種によりムンプスウイルスの免疫ができる割合)は約95%といわれ、 維持率もよいためワクチン接種はムンプス難聴の予防に対しても非常に重要であると考えられます。
なのはな みみ・はな・のどクリニック 院長
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