インタビュー

子どものおたふく風邪(ムンプス)の症状と感染経路・潜伏期間

子どものおたふく風邪(ムンプス)の症状と感染経路・潜伏期間
堀越 裕歩 先生

WHO Western Pacific Region Office, Field Epidem...

堀越 裕歩 先生

この記事の最終更新は2017年11月08日です。

子どもがかかりやすいおたふく風邪(ムンプス)は、耳の下と顎の下にある唾液腺にムンプスウイルスが感染することで罹患します。片方あるいは両方の頬がおたふくのように腫れあがってしまうことから、おたふく風邪と通称されます。

症状が出てもほとんどの場合が数日から1週間程で治りますが、中には症状が出ないこともあるといいます。重症化すると無菌性髄膜炎になる可能性もあるおたふく風邪について、保護者のみなさんが注意すべき点を中心に、東京国立小児総合医療センター感染症科医長の堀越先生にお話いただきました。

手を洗う

おたふく風邪の原因であるムンプウイルスは、くしゃみや咳などが空気中に飛び散ることで感染する「飛沫感染」と、感染者が触ったドアノブなどを触ることで感染する「接触感染」の2つの経路によって人に感染します。

幸い、ムンプウイルスは細胞の外では長生きできないため、ドアノブなどの環境中にウイルスがついたとしてもやがて死んでしまうので、感染の温床になることはまれです。

接触感染の場合、最終的にその手で触って口に入れることでウイルスは体内に侵入してしまいます。家に帰ったら手を洗うことを習慣にするとよいでしょう。

体内に入り込んだムンプウイルスは、2-3週間の潜伏期間を経て、頬の腫れや痛みなどの症状を引き起こします。しかし、症状が出始める約2日前は周囲への感染力が一番強く、気づかない間に周りにうつしてしまうこともあります。

おたふく風邪にかかってしまった場合、

・頬の腫れや痛み

・発熱

の症状がみられることが多いです。特に頬の腫れは特徴的な症状なので、これがみられた場合にはおたふく風邪を疑ってもよいかもしれません。

個人差はありますが、一般的におたふく風邪は数日から1週間ほどで熱が下がります。高熱や頭痛が続くと、脱水症状や無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)などの合併症をひきおこす可能性があります。無菌性髄膜炎では、頭痛、吐き気などがあることがあります。症状が強い場合は、近くの病院へ連れていくようにしましょう。

おたふく風邪は発症すると、3分の2のお子さんに頬の腫れや発熱の症状がみられますが、残りの3分の1のお子さんには全く症状が出ないといわれています。腫れによる痛みや発熱に対しては、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を使用し、食欲がないときは脱水にならないように塩分の入った水分を摂らせます。多くの場合は、自宅で安静にしていれば回復します。

子どもたち

・幼稚園や保育園での集団感染

おたふく風邪にかかりやすい年齢は幼児期から学童期の子どもたちで、幼稚園や保育園などの集団保育の場で感染します。その時期に感染せず、ワクチン接種もしていない場合は小学生以降や大人でも感染することがあります。一般に大きくなってから感染すると重症化しやすいです。

おたふく風邪の予防接種は2度接種することでしっかりとした免疫がつくため、1歳を過ぎたら1回、小学校に上がる前の5歳前後に2回目を受けてください。

親子

日本耳鼻咽喉学会の調べ*により、2015年-2016年の2年間において、おたふく風邪の合併症として難聴を発症した患者さんの数は300人を超えているということが判明しました。

日本は先進国のなかでは珍しく、おたふく風邪の予防接種を一定の年齢になったときに接種する「定期接種」に含めていません。保護者や希望者に予防接種の判断が任される「任意接種」であるがために、全体的に予防接種を受ける方が少ないことと、合併症である難聴を発症する患者さんが多いことが現状です。

おたふく風邪は命に関わる病気ではありませんが、決まった治療薬がないことや、合併症の症状が重いことから、お子さんがいるご家庭では注意すべき病気のひとつです。感染を防ぐためにもワクチンを接種し、何よりも予防に努めることが大切です。

日本耳鼻咽喉学会『2015年-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査』

 

  • WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤

    日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員

    堀越 裕歩 先生
    • 小児科
    • 原発性免疫不全症・先天性免疫異常症

    小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。

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