インタビュー

急性精巣炎とはどんな病気?おたふくかぜになったら注意しよう

急性精巣炎とはどんな病気?おたふくかぜになったら注意しよう
岸田 健 先生

神奈川県立がんセンター 副院長、地域連携室長、泌尿器科 部長

岸田 健 先生

この記事の最終更新は2015年06月10日です。

おたふくかぜの後に起こる病気である急性精巣炎。特に大人になってから自分の子供がおたふくかぜにかかった時には注意が必要です。急性精巣炎の原因、症状、検査、治療について詳しく見ていきましょう。

急性精巣炎とは、精巣に炎症が起きる病気です。
子供ではあまり起こりませんが、成人男性がおたふくかぜにかかった後に起こります。おたふくかぜにかかった男性の約1〜3割に起こると言われています。また、急性精巣上体炎という病気に続いて起こることもあります。

参考記事:急性精巣上体炎とは?

おたふくかぜはムンプスウイルスが原因となって起こります。子供の頃におたふくかぜにかかっていない方や予防接種を受けていない方は、ムンプスウイルスに対する免疫を持っていません。免疫を持っていない方がムンプスウイルスに感染した場合、そのウイルスが精巣にも感染し、急性精巣炎となります。

急性精巣炎では、“子供がおたふくかぜにかかった後に、その父親がおたふくかぜにかかり、その後急性精巣炎になる”という流れがほとんどです。おたふくかぜにかかったことのない方、予防接種を受けていない方で、お子さんがおたふくかぜにかかった場合は注意が必要です。

ちなみに、おたふくかぜにかかったことのある方や予防接種を受けた方は、一生涯ムンプスウイルスの免疫を持つと言われています。

  • 急激な精巣の痛みと腫れ
  • 熱、体のだるさ

などの症状が、おたふくかぜにかかった4〜7日後に出てきます。

おたふくかぜにかかった後であることと精巣の症状から、簡単に診断することができます。

のど、精液、血液などのウイルスの検査を行うこともありますが、上で述べたように簡単に診断できるので、あまり行いません。

ムンプスウイルスに効く薬はありません。よって、急性精巣炎の治療は、症状を和らげるための治療が主です。

具体的には、

  • 痛みや熱を抑える薬を使う
  • 陰嚢(いんのう:たまのふくろ)を冷やし、安静を保つ

といった治療を行います。

急性精巣炎は、病気の経過からご自身で診断できるかもしれません。
ただし、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)、精索捻転(せいさくねんてん)などの危険な病気でも精巣の痛みを起こすことがあるので、泌尿器科医をきちんと受診するようにして下さい。また、急性精巣上体炎でも、陰嚢の痛みや腫れをおこします。(頻度は急性精巣炎より圧倒的に多いです)

参考記事:精巣腫瘍の検査・診断ー早めに検査を受けましょう

急性精巣炎以外に、精巣に急激な痛みや腫れが生じる病気に精索捻転(せいさくねんてん)というものがあります。

精索捻転とは、精巣をぶら下げている”精索(せいさく)”という血管・精子の通り道がねじれる病気です。精索捻転の治療は時間との闘いで、できるだけ早く手術を行い精索のねじれをもとに戻す必要があります。手遅れになると、片方の精巣が委縮して精子を作らなくなってしまいます。

したがって、この精索捻転と急性精巣炎を見分けることはとても大切です。ご自身で見分けるのは難しいので、精巣の痛みや腫れに気付いたら早めに泌尿器科医を受診しましょう。

急性精巣炎は、通常一週間程度で症状がおさまります。症状がおさまればそれで良いのですが、だらだらと長引いたり、両側の精巣に炎症が起きたりすると、精巣のなかの精子のもとになる細胞が死んでしまい、不妊症につながります。急性精巣炎の2〜3割に起きると言われており、注意が必要です。

性感染症(いわゆる性病)で直接急性精巣炎を起こすことはありません。ただし、性感染症で急性精巣上体炎になり、そこから急性精巣炎になることはあるかもしれません。

記事1:精巣腫瘍は治るがん?―精巣腫瘍の完治率、生存率について
記事2:精巣腫瘍の症状―「痛くないから大丈夫」は間違い?
記事3:どういう人が精巣腫瘍になりやすい?―精巣腫瘍の原因
記事4:精巣腫瘍と不妊症―精液保存のすすめ
記事5:精巣腫瘍の検査・診断―早めに検査を受けましょう
記事6:精巣腫瘍の治療・前編ー治療の流れについて
記事7:精巣腫瘍の治療・後編ー治療期間、治療後の通院、再発について
記事8:急性精巣炎とは?—おたふくかぜになったら注意
記事9:急性精巣上体炎とは?
記事10:慢性精巣上体炎とはどんな病気?陰嚢(いんのう)の違和感、にぶい痛みが長く続く

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    岸田 健 先生

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