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インタビュー

精巣腫瘍の治療・後編ー治療期間、治療後の通院、再発について

精巣腫瘍の治療・後編ー治療期間、治療後の通院、再発について
岸田 健 先生

神奈川県立がんセンター 副院長/泌尿器科 部長

岸田 健 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月08日です。

15~35歳の若い男性にできるがんの中では最も多い精巣腫瘍。前編では、その治療の流れについてご説明しました。後編では、治療の期間、治療度の通院、再発について詳しく見ていきましょう。

精巣腫瘍の治療(特に抗がん剤治療)はどのくらいの期間続くのでしょうか?

最初の段階の高位精巣摘除術(こういせいそうてきじょじゅつ)は1週間程度の入院で終わります。転移がある場合、一旦退院して再入院かあるいは引き続いて抗がん剤が行われます。

抗がん剤治療は、原則入院で行います。前編でも述べたように、BEP療法では、5日間の点滴と8日目15日目の点滴を3週間おきに、3〜4回繰り返します。例えば、4回繰り返すとすると、全部で3ヶ月かかります。(時々外泊、一時退院をすることはできます。)

BEP療法で治癒しなかった場合、救済化学療法として一般的なのはTIP療法という抗がん剤で、これをやはり3週間毎に4回繰り返します。これも全部で3か月かかります。

それでも治らなかった場合の次の選択肢には様々な治療が試みられていますが、どれが最も良いかはまだ明らかではありません。代表的なものとして、VIP療法、NI療法、GO療法、GOP療法、大量化学療法などがあり、それぞれ3カ月程度かかります。

一方、抗がん剤治療の後に腫瘍マーカーは正常値まで減少したものの、腫瘍の塊が残る事があります。そこにがんが残っているのか、壊死した(死んだ)細胞なのか、あるいは奇形腫という良性の腫瘍なのか、外から調べてもわからないので、塊を摘出する必要があります。摘出する手術は、肺ならば呼吸器外科、肝臓ならば消化器外科、腹部のリンパ節なら泌尿器科が行います。手術の準備と術後の療養で約2か月かかります。

これらの治療をトータルすると1年ぐらいかかることもあります。長く辛い治療になりますので、途中で挫けそうになるかもしれません。けれどこの治療を乗り切れば完治の可能性は十分あり、中途半端で止めてしまって後で再発すると治療はさらに困難になります。若い方が多いので、学校やお仕事など休むのは大変なのですが、長い将来を考えれば、今しっかり治しておくことでその先いくらでも挽回は可能です。私の診てきた患者さんも社会復帰して普通の方と同様、あるいはそれ以上に活躍されている方が大勢いらっしゃいます。

また、セミノーマの場合は放射線治療を行うこともあるのですが、放射線治療は外来で行います。期間は1ヶ月ほど、月曜日から金曜日まで毎日通っていただきます。

これらの治療により治ったと判断されても本当の意味での完治はまだ先の話で、治った後の最初の1〜2年がとても重要です。再発したり、抗がん剤治療や放射線治療の後遺症が出てきたりすることがあるためです。よって、治った後の2年間は、最低でも2〜3か月に1回、病状の重い方は毎月、来院していただくことになります。

そして、2年後以降も半年に1回、来院していただくことになります。2年後以降に再発することがあったり(“晩期再発”といいます)、反対側の精巣に腫瘍ができたりすることがあるため、治って2年経った後でも通院は怠らないようにしましょう。5年経過すれば「晴れて完治しましたね。」と一緒に喜ぶ事が出来ます。

ただし5年から10年の間の再発も極めて稀(1%未満)に起こる事があります。当初の病状によって危険性は異なるので、経過観察を続けるかどうかは主治医の先生の指示に従ってください。反対側の精巣に新たに腫瘍が発生する危険性も40歳代ぐらいまでは一般の方より高いと言われていますので、注意が必要です。また、抗がん剤や放射線治療の副作用により、10年以上経ってから成人病にかかりやすいという話もあります。私の場合、治ってから最長10年診た後は、ご自宅の近くの医師に定期健診として診て頂くか人間ドッグを積極的に活用するようにしていただいています。

前編でも述べましたが、精巣だけにがんが留まっていると判断された方でも、精巣を摘出した後、2割程度の方に転移が出てきます。これは、転移を見過ごしていたからではなくて、CT検査の診断能力の限界によるものです。
CT検査では、5ミリ以上のがんを見つけることはできますが、それより小さいがんを見つけることはできません。よって、最初の時点でCT検査を行い、転移がないことを確認したとしても(ステージⅠ)、実はCT検査では発見することのできないがんが潜んでいて、それがだんだん大きくなり、やがてCT検査で見えるようになるということがおこるのです。

「精巣の腫瘍を摘出しました。転移もありません。」と医師に言われると、「完全に治った」と思って病院に来なくなる方がいらっしゃいます。しかし、「転移がない」というのは、「CTで見えるものはない」ということであって、「完全に治った」ということを意味しているのではありません。よって、その後も病院に定期的に通院し、転移が出てこないかをきちんとチェックすることが大切です。この場合も最低5年間は定期的受診が必要になります。再発したとしても早期に適切な治療を受ければ、ほぼ完治する事が可能ですが、通院せず進行した状態で見つかると治すのは困難になります。

記事1:精巣腫瘍は治るがん?―精巣腫瘍の完治率、生存率について
記事2:精巣腫瘍の症状―「痛くないから大丈夫」は間違い?
記事3:どういう人が精巣腫瘍になりやすい?―精巣腫瘍の原因
記事4:精巣腫瘍と不妊症―精液保存のすすめ
記事5:精巣腫瘍の検査・診断―早めに検査を受けましょう
記事6:精巣腫瘍の治療・前編ー治療の流れについて
記事7:精巣腫瘍の治療・後編ー治療期間、治療後の通院、再発について
記事8:急性精巣炎とはどんな病気?おたふくかぜになったら注意しよう
記事9:急性精巣上体炎とは?
記事10:慢性精巣上体炎とはどんな病気?陰嚢(いんのう)の違和感、にぶい痛みが長く続く

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  • 神奈川県立がんセンター 副院長/泌尿器科 部長

    岸田 健 先生

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