インタビュー

急性精巣上体炎とは?

急性精巣上体炎とは?
岸田 健 先生

神奈川県立がんセンター 泌尿器科部長

岸田 健 先生

精巣上体に炎症を起こす病気である急性精巣上体炎。いったいどんな病気なのでしょうか、また男性不妊の原因となることはあるのでしょうか?以下に詳しくご説明します。

急性精巣上体炎とは?

精巣上体(せいそうじょうたい)とは、精巣の横にある器官です。精巣でつくられた精子は、精巣上体を通過し、精管(せいかん)とよばれる管に流れ、最終的に尿道につながります。
精巣上体炎とは、尿のなかの細菌が逆に精巣上体に入りこみ、そこで炎症を起こす病気です。

精巣上体炎とは?

精巣上体炎とは?

陰嚢が痛みや熱を伴って腫れる病気で一番頻度が多いのが急性精巣上体炎です。

急性精巣上体炎の原因—高齢者と若年者で異なる原因

高齢者の場合

前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)、尿道狭窄(にょうどうきょうさく)、膀胱結石(ぼうこうけっせき)などの病気により、尿が汚れて細菌が増えることで精巣上体炎を起こしやすくなります。大腸菌などが炎症の原因になります。

若い方の場合

若い方の急性精巣上体炎は、尿道炎(性病の一つです)から広がることがより多くあります。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が炎症の原因になります。

急性精巣上体炎の症状

急性精巣上体炎では以下のような症状が起こります。

  • 陰嚢の痛み:精巣上体の軽い痛みで始まり、やがて陰嚢(いんのう:たまのふくろ)全体に痛みが広がります。また、陰嚢が赤く腫れてきます。足の付け根や下腹部にも痛みが広がることがあります。
  • 発熱:陰嚢が熱を持ちます。全身の発熱も起こり得ます。
  • 排尿時の痛み:尿道炎を伴っている場合に起こり得ます。尿道からうみが出ることもあります。

危険な症状は?

危険な症状の一つは熱が出ることです。感染の悪化の兆候であり、時には陰嚢にうみがたまり、陰嚢の切開(せっかい)が必要になる事もあります。

さらにめったに起きませんが、太ももやお尻の方まで感染が広がり腫れてしまうと危険です。特に糖尿病の方や、ステロイドを服用されていて免疫が弱っている方が感染を放っておくと、陰部の広い範囲に感染が広がって、フルニエ壊疽(えそ)という病気を起こすことがあり、一旦発症すると命に関わるほどの重症感染になります。

高熱が出て広範囲に腫れが広がると危険ですので、そうなる前に病院を受診しましょう。

急性精巣上体炎の検査と診断

急性精巣上体炎では、以下の検査を行います。

  • 尿検査:尿の中の白血球や細菌を調べます。
  • 血液検査:全身への影響を調べます。

急性精巣上体炎の治療

基本的に、

  • 抗生物質を使う。軽症なら内服治療(飲み薬による治療)
  • 陰嚢を冷やし、安静を保つ(運動を避ける程度で大丈夫です)

という治療を行います。

さらに、熱などがある場合には、炎症や痛みを抑える薬を使った上で、入院して安静を保ち、点滴による治療を行う事もあります。

熱がない限り寝ている必要はありませんが、治療中は激しい運動や飲酒を控えてください。また、サポーターをしたり、きつめのパンツをはいたりして、陰嚢を固定すると、痛みが和らぐかもしれません。

きちんと泌尿器科を受診しましょう

急性精巣上体炎では、抗生物質が効けば1~2週間で症状は治まります。しかし、抗生物質が合わず炎症が悪化すると、陰嚢にうみがたまってしまい、陰嚢を切開したり、精巣上体を摘出したりしなければならないこともあります。

このような事態を避けるためには、最初に適切な抗生物質を使うことが大切です。きちんと専門医に診てもらうようにしましょう。

また、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)、精索捻転(せいさくねんてん)症などの危険な病気との区別が難しい場合もあるので、やはり泌尿器科の病院、クリニックを受診するようにしましょう。

参考記事:精巣腫瘍の検査・診断ー早めに検査を受けましょう

急性精巣上体炎では、入院しなければならない?

高齢者で熱があったり、抵抗力の弱った状態の方だと入院することもあると思います。しかし、家で安静にすることができれば、必ず入院が必要というわけではありません。

急性精巣上体炎で男性不妊になる?

急性精巣上体炎は精子の通り道の炎症なので、後遺症として精子が通りづらくなることがあります。
ただし、急性精巣上体炎は基本的に片側だけに起きる病気で、片側だけであれば男性不妊になることはありません。(両側で精巣上体炎を起こすと男性不妊になる可能性があります。)

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記事6:精巣腫瘍の治療・前編ー治療の流れについて
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記事9:急性精巣上体炎とは?
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