概要
精索捻転とは、精索(精巣への血液供給を行う血管が束ねられている)がねじれてしまう病気です。
精巣捻転を放置すると精巣へ流入する動脈もねじれてしまうため、動脈が途絶し精巣が壊死を起こす可能性もあります。この場合、捻転を起こした精巣の機能が途絶してしまいます。もちろん不妊症につながるリスクとなります。そのため、精索捻転は緊急性が高く、迅速な治療が必要です。
原因
精索がねじれてしまう原因は、完全には明らかになっていません。精索にはねじれないような構造的な工夫がなされていますが、ときにこの構造的な支えが弱い方、生来ねじれやすい血管構造になっている方が精索捻転を起こしてしまうこともあります。
このような体質の方が精巣への軽度の外傷、冷気(冬場など)や精巣の発育(思春期など)などをきっかけに精索捻転が発症することがあります。
症状
好発年齢は思春期年齢ですがまれに30代でも発症します。発症すると、突然の陰部の痛みや腫れを自覚するようになります。そのほか、お腹の痛み(特に下腹部)や吐き気、嘔吐などの症状が現れることもあります。
上記の症状は日中に生じることもあれば、夜間就寝中に突然発症して目が覚めることもあります。
また、精索捻転では、精巣に血液供給を担う血管が影響を受けるため、精巣への血液が乏しくなり、精巣が壊死を起こすことがあります。精巣は精子をつくるのにとても大切な臓器であるため、壊死を起こすことによって将来不妊になる可能性もあります。
検査・診断
精索捻転の診断では、身体診察による陰嚢部の詳細な確認に加えて、陰嚢部に対しての超音波検査が行われます。超音波検査では精索のなかに位置する血管の状況も確認することが可能であり、血液が流れているかどうかを評価します。精巣への血液が乏しくなると、精巣が壊死を起こし、不妊の原因となることもあるため、血管の状態を評価し、迅速に治療を行う必要があります。
治療
精巣への血液を元通りに戻すことを目的にした、迅速な治療介入が必要とされます。精巣の壊死を防ぐためには、発症から6~12時間以内に処置をすることが必要です。
治療に際しては、状況を見つつ用手的に捻転解除を試みる場合もありますが、戻る確率はそれほど高くはありません。戻らない場合には、陰嚢を切開して直接整復を試みます。
整復できた場合でも、またねじれてしまうのを予防するために精巣固定術を行います。この際、病気を起こしていない側の精巣もねじれた側の精巣と同じ解剖構造であると考えて、将来的にねじれることを予防するために固定を行います。この場合の固定は停留精巣の固定術のように精巣を一度体外に出して、といった大掛かりなものではなく一点もしくは二点、吸収糸で陰嚢皮膚と精巣を縫い付けるものです。
発症からの時間経過が長く、不可逆的な壊死をきたしてしまった場合には精巣を摘出することもあります。
精索捻転は思春期の男児に発症することが多く、不妊症につながるリスクもあるため緊急に対応することが大切です。
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