子どもが風邪をひいた際、市販の薬を飲ませてもよいのでしょうか。また、抗菌薬や抗生物質ならすぐに症状が緩和されるのでしょうか。風邪をひいた際の薬や食事について、前回に引き続き、都立小児総合医療センターの村井健美先生に解説していただきます。
風邪はウイルス性の感染が多く、この場合は子ども自身の治癒力により自然に回復していきます。これを飲めば治るといった薬はなく、基本、症状を和らげる薬です。しっかりと水分を補給し、ゆっくり体を休ませることが大切です。
お子さんが熱で苦しんでいて、その熱を取り除いて不快を和らげてあげるという目的では、解熱剤を使用するのはよいでしょう。解熱剤を使って熱が下がったとしても、それは薬によって一時的に熱が下がっているだけで、風邪が治ったわけではありません。ただし、解熱剤によって消耗を抑え、食事や水分がとれることがあり、脱水を回避できることがあります。熱性けいれんがあるお子さんで、解熱剤を使って下がって、効果がきれて熱が上がってきたときに、ひきつけを起こす可能性が言われていますが、起こさないという意見もあります。小児科医の間でも、熱性けいれんがあっても、解熱剤で脱水を回避するメリットの方が大きいので、使用をすすめることもあります。
子どもの風邪のほとんどに抗生物質(抗菌薬)は必要がありません。混同されがちですが、抗生物質(抗菌薬)は細菌に対してのみ効果があり、ほとんどの風邪はウイルス性であるため効果がありません。またこれらの薬は、下痢や低血糖などの副作用がでるリスクがあります。風邪をこじらせて肺炎になっている場合、一部の中耳炎、A群溶連菌咽頭炎などでは、抗生物質(抗菌薬)が必要なことがあります。
市販の解熱剤を使用しても構いません。しかし、4才未満では、市販の感冒薬はあまり推奨しません。効果が医学的にはっきりしていないのと、一部の成分による副作用のリスクがあります。
風邪のときは、おかゆを食べさせなければいけない、という決まりはありません。おかゆを食べさせるのは、消化がよく、あまり咀嚼がいらず食べやすいからであり、お子さんが「食べられる」ものを食べさせてください。一般に病気のときに食べるようなおかゆやうどんなどの炭水化物は消化がよいために勧められています。子どもが食べやすいゼリーやヨーグルトなどでも良いでしょう。脂っぽいもの、刺激の強いものは胃腸の負担が増えるので、控えたほうがよいです。
水分補給も飲めるものを飲ませてください。スポーツドリンクや経口補水液にこだわる必要はありませんが、特に食事がとれていないときは塩分を含んだ飲み物が良いです。経口補水液は日常的に飲む機会が少なく、飲みなれていないために味に抵抗をもち、飲めない子どもも多くいます。スープなどで塩分を摂るのも良いでしょう。お腹のかぜ(胃腸炎)で食事が食べられない際には無理に食事を食べさせる必要はありません。
一般的に風邪のときに入浴してはいけないといわれていますが、入浴により風邪が悪化するという科学的な根拠はありません。風邪であっても軽くて、子どもが入浴できるくらい元気であれば構いません。ただし熱がある場合、体を温めることで体温コントロールが未熟な子どもでは、かえって熱が上がることがあります。熱が高いときは避けましょう。体調が悪くて入浴できないときは、濡れたタオルで汗を拭く程度で済ませましょう。
熱がある時は脱水になりやすくなっていますので、汗をかきすぎないように長湯は避け、体を軽く洗い流す程度に済ませてください。お風呂で遊んで長湯になり、ぐったりしてしまうことがありますので気を付けてください。また湯冷めも注意が必要です。
熱が下がっても咳が残ることがありますが、だんだんとよくなっていくものなので、これは心配しなくてもよいものです。風邪は自然とよくなっていく感染症です。
長野県立こども病院 感染症科 医監
村井 健美 先生の所属医療機関
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
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