

子どもは成長する過程でいくつかの感染症にかかることがあります。風邪のように何回もかかる感染症のほかに、予防接種で防ぐことが可能な感染症もあります。
このうち水痘(水ぼうそう)は定期接種に指定されている感染症であり、学校保健法でも指定されている感染症です。今回は東京都立小児総合医療センターの村井健美先生に子どもの(水ぼうそう)の感染経路と予防接種について解説していただきます。
水痘(水ぼうそう)の感染力はとても強く、他人にうつることが多いです。幼稚園・保育園などで教室内に水痘(水ぼうそう)にかかっている子どもがいると、免疫がないと全員に感染する場合もあります。
水痘(水ぼうそう)の感染経路は主に空気感染です。空気感染とは文字通り、直接の接触がなくても、空気中に漂うウイルスを吸い込むと同時にウイルスが体内に侵入して感染します。
また、水ぶくれをかきむしると液体が出てきますが、その液体に触れることでも感染します。
水痘(水ぼうそう)は感染力がとても高く、また感染経路が空気感染なので予防が非常に難しいです。しかし、水痘(水ぼうそう)は2度のワクチンによる予防接種で発症をほぼ予防できます。
1回目の予防接種は、1歳になったら受けることができます。また、2回目の接種は1回目の接種から3か月以上経てば可能です。標準的には1回目から6-12か月あけます。
1回目の水痘(水ぼうそう)ワクチン接種でも、ある程度の水痘(水ぼうそう)を予防できますが、2回行うことで長い間の発症を予防できるため、2回の接種を行うようにしています。
また、定期接種の期間内に接種できなかった場合には自費での接種が可能です。近くの医療機関へ問い合わせてみてください。
水痘(水ぼうそう)が完治したあともウイルスは体に一生、潜んでいます。加齢やストレス、病気などで免疫力が低下した場合に、何年、何十年もたってから帯状疱疹として発症することがあります。帯状疱疹は、痛みをともなう発疹がでます。帯状疱疹は、薬の効きづらい痛みが長いと何か月も続くつらい病気で、かつ高齢者ではとても頻度の高い病気です。将来的に帯状疱疹の発症を予防するためにも、子どものうちに水痘(水ぼうそう)のワクチンを接種するようにしましょう。
また、子どもの頃に水痘(水ぼうそう)にかかった50才以上の大人も帯状疱疹の予防でもワクチンを接種することができます。
小児期の水痘(水ぼうそう)の予防接種は定期接種に指定されているので、無料で受けることができます。具体的なことはお住まいの自治体、または近くの医療機関で確認するようにしてください。
長野県立こども病院 感染症科 医監
村井 健美 先生の所属医療機関
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
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