インタビュー

水痘・帯状疱疹とは―予防接種が定期接種に

水痘・帯状疱疹とは―予防接種が定期接種に

国立成育医療研究センター 小児医療系レジデント

伊東 藍 先生

石黒 精 先生

国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教...

石黒 精 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月22日です。

水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。
水痘と帯状疱疹は同じウイルスによって起こる感染症で、初めてこのウイルスに感染すると、「水ぼうそう」とよばれる水痘を発症します。また、このウイルスは水痘が治った後にも脊髄神経に留まり、免疫力が低下したときなどに再び活性化して帯状疱疹を起こします。

このウイルスは、感染した人の鼻水や唾液、水疱から出る液に存在しますが、それらが蒸発して空気中に舞うため、触れていなくても同じ空間にいるだけで空気を通して感染してしまうことがあります(空気感染)。
一般的に、幼児期に感染した場合は軽症で済むことが多いとされています。しかし、免疫不全の方や、新生児、思春期以降の方が感染すると重症化することが多く、死に至ることがある怖い病気です。健康な幼児であっても重症化する場合があり、予防接種をおこなうことで水痘を軽症化することができます。

水痘の潜伏期間は10~21日と長く、発疹が現れる24~48時間前から周囲に移してしまうようになるので、水疱ができて、水痘だと気がついた時点ではすでに周りに感染している可能性があります。

主な症状は発熱と発疹です。赤い丘疹(直径1cm以下の小さなブツブツ)~水疱(水ぶくれ)が全身に現れます。頭皮にも発疹ができることが水痘の特徴です。発疹は自然によくなっていき、その頃に痒みが出てくることもあります。年長のお子さんは、発疹がでてくる24~48時間前から発熱・倦怠感・咽頭痛・食欲低下などもあらわれる場合があります。水痘は通常は自然によくなっていく病気ですが、その重症度はさまざまです。

水痘とともにあらわれる可能性のある症状(合併症)には、二次性細菌感染症・肺炎・脳炎・急性小脳失調・Reye症候群・新生児水頭症・先天性水痘症候群などが挙げられます。
二次性細菌感染症は合併症の中でも比較的多く、水痘の発疹から細菌が血液の中に侵入し、菌血症という重篤な全身感染症を引き起こすこともある危険なものです。また、水痘の合併症として肺炎にかかってしまうと、重症となり亡くなってしまう場合もあります。

感染が脳に影響を及ぼして脳炎や急性小脳失調になってしまった場合には、けいれん、意識障害・歩行障害などの症状が現れます。また、意識障害・けいれん・肝機能障害などの「Reye症候群」という病気に進行してしまう場合もあります。これらの病気にはアスピリンを内服していることと関連があるといわれています。

免疫不全の方や新生児の患者さんは、重症度や合併症がおこる割合が高くなります。重症になると高熱が長期間続いたり、発疹が普通より多く出たりするばかりでなく、腹痛・臓器障害・凝固障害(血が止まりにくい)・出血性小水疱(水ぶくれから血が出る)などが起こる、「進行性水痘」と呼ばれる状態になることがあります。
また、妊娠中の母親が出産の前後に感染してしまうと、子どももお腹の中で水痘にかかり、先天的な皮膚病や手足の障害があらわれる「先天性水痘症候群」になったり、子どもがお腹の中で亡くなってしまったりする可能性があります。

帯状疱疹の特徴は、水疱が身体の片側の一部に集中して現れ、痛みを伴うことです。成人になってからかかることがほとんどですが、小児でもまれに起こすことがあります。帯状疱疹は治癒した後も痛みの残ることがあり、注意が必要です。

水痘発疹の様子やその他の症状、周囲の流行状況が手がかりとなって診断されますが、発疹が出はじめたばかりの状態では診断が難しいこともあります。迅速に診断するためには水疱の中の細胞を顕微鏡で見る「Tzanckテスト」が参考になります。また、水疱の内容物や血液などから直接ウイルスの遺伝子を検出する検査を行うと、より確実に診断できます。

水痘も帯状疱疹も、アシクロビルという抗ウイルス薬が治療に使われることがあります。この薬によって、ほとんどの場合は合併症などが起こらずに良くなります。しかし重症例の場合、また合併症の程度によっては、適切な治療が行われたとしても後遺症が残り、最悪の場合は死に至ることもあります。

通常の水痘と重症水痘
通常の水痘と重症水痘

このように、水痘は私たちの身近に存在し、重症な症状をひきおこすこともある怖い病気です。その水痘を予防する唯一で確実な方法は、ワクチンの接種を受けることです。ワクチンを接種することで感染の蔓延(流行)を予防し、重症化や合併症を生じるリスクを下げることができます。

2014年10月から、水痘ワクチンも定期接種に含まれるようになりました。水痘ワクチンの定期接種は、生後12か月~36か月までの間に2回接種します。標準的には1回目は、生後12月~15月までの間に注射します。2回目は、1回目の接種から3か月以上開けます。標準的には1回目を打ってから6か月~12か月までの時期に行います。生後36か月~60か月までの間の定期接種は、平成27年3月31日に終わりました。

ほとんどの人が接種の対象となります。治療中の病気がある子や使用している薬剤がある子は、その種類によっては接種を見送ることがありますので、アレルギーの情報を含めて接種予定の医療機関にお知らせください。

 もし予防接種をしていない方が、水痘の患者さんに接触した場合、接触後72時間以内に緊急ワクチン接種を行うことで発症を防いだり、軽症にしたりすることが期待できるとされています。また、もともと病気をお持ちの方では、予防的に抗ウイルス薬やガンマグロブリンというお薬を使用すると、発症や重症化を予防できる可能性があります。

予防接種後の副反応として、直後から翌日にかけて、発熱と発疹・じんましん・紅斑・かゆみなどの過敏症を生じる場合があります。また、接種後1~3週頃にも発熱・発疹が出現することがあります。しかし、通常これらの症状は数日中に消失します。

水痘に感染してしまった場合には、感染を広げないように、登校基準として、全ての発疹がかさぶたになるまで出席は停止と決められています。

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