子どもが水痘(水ぼうそう)にかかった際に、発疹(ほっしん)や水膨れが多数発生するといわれています。これらにはかゆみがある場合がほとんどですが、子どもがかきむしらないようにするにはどのような対処を行えばよいのでしょうか。また、子どもの場合、重症化することはごくまれだといわれていますが、仮に重症化した場合にはどのような症状がみられるのでしょうか。前回に引き続き東京都立小児総合医療センターの村井健美先生に解説していただきます。
水痘(水ぼうそう)は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することで引き起こされるウイルス性の病気です。初期症状としては発熱があります。発熱の数日後には赤い発疹ができはじめ、発疹が水ぶくれになることが大きな特徴です。
水痘(水ぼうそう)に対しての抗ウイルス薬がありますが、効果は限定的で水ぶくれをすぐに治すものではありません。健康な子どもであれば軽い症状のみで治る水痘ですが、まれに重症化することがあるので注意が必要です。
子どもの水痘の症状は、発疹からはじまることが多く、微熱を伴う場合もあります。水ぶくれを伴う赤くてぼつぼつした発疹が体中から出てきます。ときには発疹よりさきに発熱がでることもあります。
いずれのケースであっても通常、発熱から数日経つと、水ぶくれを伴う赤くてぼつぼつした発疹が体中に出てきます。ただしまれに、発疹・水ぶくれがまず頭にあらわれ、その後、発熱するケースもあります。
いずれのケースであっても、赤いぼつぼつした発疹・水ぶくれが体中に出てきた段階で、水痘(水ぼうそう)と判断できます。
赤い発疹・水ぶくれは体中に生じます。
水痘の赤い発疹・水ぶくれは強いかゆみを伴います。かきむしると跡が残ってしまうこともあるので、子どもにはかきむしらせないようにしてください。また、乳児はかゆみの症状を主張できないので、冷たいタオルで冷やすなどして、かゆみを軽減させてあげてください。
水ぶくれは、数日でかさぶたになって治ります。かさぶたになると、水ぶくれに感染力がなくなるので、他人にうつる心配はありません。
およそ3週間ですべてのかさぶたが剥がれ落ちるといわれています。
水痘(水ぼうそう)はウイルスに感染してから発症するまで10日~21日程度の潜伏期間を要します。赤い発疹が出る2日ほど前から、周囲に感染させてしまう可能性が出てきます。問題は、発疹が出る前では子どもが水痘(水ぼうそう)にかかっているかを判断できない点です。そのため、知らない内に水痘の子と接触してしまうことがありますが、接触しても予防接種を打って、免疫をつけておけば感染しません。また、予防接種を受けて周りにうつさないようにすることが重要です。
一般に、水痘の赤い発疹や水ぶくれがすべてかさぶたになった段階で完治といえます。この段階で他人にうつす心配はありません。しかし、発疹や水ぶくれがあらわれてから発熱するケースもあります。
先にお伝えしたとおり、子どもの水痘が重症化することはまれですが、重症化した場合、水痘肺炎(すいとうはいえん)を合併したり、神経症状があらわれたりすることがあります。
生まれつき免疫機能に異常がある場合、重症化のリスクがあるので注意が必要になります。
水痘肺炎は水痘(水ぼうそう)の発症後に罹患する恐れのある合併症です。しかし、子どもの罹患率は極めて低いです。水痘は、子どもよりも大人のほうが重症化する確率が高く、特に妊婦でまだ水痘(水ぼうそう)にかかったことがなく、予防接種も受けていない場合には注意が必要です。
水痘肺炎の症状は一般的な肺炎と同じく、呼吸が浅くなる、咳、発熱などがみられます。
陥没呼吸や鼻翼呼吸(びよくこきゅう:呼吸をする際に鼻の穴が広がる)腹式呼吸、肩で息をしている、呼吸が荒いなど、呼吸が苦しそうにしています。
先ほども述べたように、健康な子どもが水痘(水ぼうそう)で重症化することはまれです。免疫が弱くなる病気や薬を飲んでいると重症化のリスク要因となります。水痘(水ぼうそう)が重症化すると、
といったことがあります。このような場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。
出産前や出産後に水痘(水ぼうそう)にかかった場合に水痘肺炎を合併するとときに命に関わることがあります。妊娠初期の段階で水痘(水ぼうそう)にかかった場合には流産の危険もあるため、妊娠前に予防のワクチンはあらかじめ打っておく必要があります。
生まれつき免疫機能に異常がある子どもは水痘(水ぼうそう)が重症化し、水痘肺炎になる可能性があります。繰り返しますが子どもが水痘(水ぼうそう)で重症化することはごくまれです。大人の場合は、
また妊婦で上記に当てはまる方も水痘肺炎や重症化のリスクがあります。
水痘(水ぼうそう)では必ずしも薬が処方されるとはいえません。薬が処方される場合には以下のものが処方されることがあります。
が処方されます。しかし、アシクロビルなどの抗ウイルス薬には、ごく初期に治療を開始した場合に、発疹の数を減らす程度の効果しかありません。重症化のリスクがある場合には、使用されます。
長野県立こども病院 感染症科 医監
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
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