インタビュー

海外のワクチン承認システム―アメリカのワクチン事情

海外のワクチン承認システム―アメリカのワクチン事情
堀越 裕歩 先生

WHO Western Pacific Region Office, Field Epidem...

堀越 裕歩 先生

この記事の最終更新は2015年12月06日です。

海外では、ワクチンの専門家や小児感染症の専門家などが集まり、ワクチンの製造研究や効果の立証、副作用の調査などを独自に行える機関が存在します。専門機関として発言権の認められた機関が存在することは、その国の国民にとってどのような利益をもたらすのでしょうか。アメリカの例を中心に、ワクチンの承認システムについて都立小児総合医療センターの堀越裕歩先生にお話をうかがいます。

海外では、省庁の外にワクチン製造、治験、承認に関する独自の専門機関が存在する例があります。たとえばアメリカの場合、ワクチンの専門家や小児感染症の専門家などが集まり、「国民にとってこういうワクチンがいいだろう」という決定を下すACIP(米国予防接種諮問委員会)という機関があります。ACIPによって出された勧告は、基本的にはそのまま政策決定される場合が多く、その政策は国によってきちんと予算がつけられ、実行されるという流れがあります。

また、ACIPは勧告を出すだけではなく、実際のワクチン導入後も、国と協力することによってどのような副作用が起きたかなどをすべてモニタリングできるシステムになっています。つまり、専門機関として非常に発言権の認められた独立した機関があることによってワクチン効果の立証も早くなり、副作用が発生した場合などの迅速な調査やフォローアップも可能にしているのです。

ACIPの役割とアメリカのワクチン施行のしくみ

日本は上記のような行政の制度をなかなか整えられずにいました。そのため、世界がワクチンをどんどん開発していくなか、日本では1990年ごろから20年弱もの間、新規のワクチンが承認されることがありませんでした。当時、途上国ですらヒブワクチンが導入されていたにも関わらず、日本でヒブワクチンが販売されたのは2008年です。そう考えると、この20年弱の間が一番大きなワクチンギャップの正体であったといえるでしょう。

ですから当然、「なぜこんなに経済的にも物理的にも豊かな日本で、予防できる病気で亡くなる子どもがいるのか」という声が上がることになります。その動きを後押ししたのは、『髄膜炎の子どもを守る会』など、実際に髄膜炎で後遺症に苦しむ患者さんやお子さんを亡くされた親御さんたちの団体、それをサポートした小児科医などの医療関係者たちでした。政治団体に対する強い働きかけもあり、ワクチン導入に対する関心がやっと高まります。

そして2013年、子宮頸がんワクチンに相乗する形ではありましたが、ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの定期接種化が実現します。日本以外の諸外国ではそれより20年近くも前から、「過去の疾患」と呼ばれていた髄膜炎の予防ワクチンの公費負担で定期接種の導入がかなったことは、大きな進歩でした。その後2014年には水ぼうそうのワクチンも定期接種化され、徐々にワクチンギャップは解消されつつあります。

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