溶連菌感染症は一年を通してよくみられる細菌感染症ですが、いくつかの合併症が起こる可能性があります。溶連菌感染症について正しい知識を身につけておきましょう。
「溶連菌」は、溶血性連鎖球菌という細菌の仲間です。こどもから大人まで誰にでも感染し、咽頭炎や皮膚炎を引き起こします。特に5歳から15歳のこどもの咽頭炎では、その30%が溶連菌によるものという報告があります。
溶連菌は主に唾液などの気道分泌物を通じて、人から人へ感染します。学校や保育園、家庭内での接触で感染が拡大する傾向があります。潜伏期間は2日から5日程度で、発熱や咽頭痛といった症状が強いときは周りの方に感染する力も強いです。しかし、適切な抗菌薬を服用すれば24時間程度で感染力は消失します。
溶連菌感染症ではいくつかの合併症が知られています。有名なものとして、関節や心臓の炎症を起こすリウマチ熱と、血尿やむくみを起こす溶連菌感染後糸球体腎炎があります。特にリウマチ熱は、適切な抗菌薬治療を行うことで予防が可能な合併症ですので、溶連菌感染症の診断と治療は重要であるといえます。
溶連菌による咽頭炎の症状には、以下のような6つの特徴があります。
(1)40℃近い発熱
(2)急に自覚する、のどの痛み
(3)首のリンパ節(特に下の奥歯の後ろの方)の腫れ。痛みを伴う
(4)口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」)が著しく赤くなって腫れる
(5)イチゴのような舌
(6)扁桃部分の白い粕の付着
このように口の奥の症状が強いため、こどもの場合は食事量が減ったり、おしゃべりが少なくなったりします。そのほか、胸やおなかの発疹・頭痛・震え・吐き気といった症状が見られることがあります。いわゆる「風邪」の原因となるウイルスの感染症と異なり、鼻水や咳、声のかすれ、口内炎といった症状は目立ちません。
また、溶連菌に感染した1~3週間後にワイン色や紅茶色の尿や脚のむくみが出現した場合は、溶連菌感染後糸球体腎炎である可能性があるため、早期の医療機関受診が必要です。
発熱と強い喉の痛みが急激に出現した同時期に、周りに溶連菌感染症にかかっている方がいた場合は医療機関を受診しましょう。ウイルスとは異なり、溶連菌は抗菌薬治療が可能な細菌です。通常、抗菌薬治療を行わなくとも4日程度で解熱しますが、抗菌薬治療を行うことで24時間以内の解熱や咽頭痛の緩和が得られるほか、リウマチ熱の合併予防にも有効です。
迅速検査が行える施設では、外来で溶連菌感染の有無を調べることができます。しかし溶連菌に感染していても陰性と出てしまったり、反対に死んでいる菌に反応して陽性と出てしまったりすることがあるため、迅速検査だけではなく症状も含めて診断します。また、必要に応じて培養検査や血液検査が追加される場合もあります。
国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)
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