インタビュー

「子どもの皮膚にぶつぶつした発疹ができた」とき―熱、かゆみ、赤みは危険な症状?

「子どもの皮膚にぶつぶつした発疹ができた」とき―熱、かゆみ、赤みは危険な症状?
平本 龍吾 先生

松戸市立総合医療センター 小児医療センター長

平本 龍吾 先生

子どもの体には比較的よく発疹が生じます。発疹ができる理由は様々ですが、ほとんどの発疹は命に危険のないものです。ただし、発疹に加えて呼吸苦や腹痛・嘔吐がみられる場合は「アナフィラキシー」、特徴的なあざ(出血班や紫斑)がみられる場合は「血小板減少症」といった、緊急に治療が必要な病気の可能性があります。では、直ちに病院を受診するべき発疹と、慌てる必要のない発疹はどのように見分ければよいのでしょうか。松戸市立病院小児科部長の平本龍吾先生にお話しいただきます。

発疹

すぐに受診すべき子どもの発疹とは?

直ちに受診が必要な発疹には「アナフィラキシーによる発疹」「紫色の特徴的な発疹(紫斑:しはん)」の2つ、早目の受診が望ましい発疹には「高熱と発疹」「痛みを伴う発疹」の2つが挙げられます。

発疹症状で夜間・休日帯でも緊急受診をするべき病気

アナフィラキシー

アナフィラキシーはアレルギー反応の一種で、原因となる物質(食べ物、薬など)を摂取して数分から数時間以内に全身の複数の臓器にアレルギー症状が起こることを指します。皮膚の発赤やじんましんなどの皮膚症状に加えて、呼吸苦・声のかすれなどの呼吸器症状、腹痛・嘔吐などの消化器症状、意識が遠のく、血圧が下がるなどの症状が代表的です。進行するとアナフィラキシーショックになり、命に危険が及ぶ可能性があるため、すぐに病院を受診する必要があります。もちろん、アナフィラキシーでは救急車を呼んで構いません。

関連記事: 「アナフィラキシーとは」

紫斑(しはん)

紫斑とは、皮膚にできる紫色のプツプツした発疹です。紫斑がみられる場合は、血管性紫斑病(アレルギー性紫斑病、ヘノッホ・シェーライン紫斑病(HSP)、IgA血管炎などの別名があります)や特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、非常に稀ですが白血病の可能性もあります。 特に、紫斑以外に粘膜の出血を伴う特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や急性白血病は緊急性の高い病気です。

紫斑と他の発疹との見分け方は「手で押してあざの色が消えるか」により判断できます。ほとんどの発疹は圧迫によって消失しますが、紫斑は圧迫しても消えません。

また、紫斑とともに粘膜出血(粘膜から出血すること)がみられる場合は、出血しやすい状態になっており、緊急の治療が必要です。粘膜出血の症状としては、口の中が出血している(または口の中にも出血班がある)、血尿がある(尿の通り道の粘膜の出血)、血便がある(腸の表面の粘膜の出血)などがあります。このような場合は、すぐに受診してください。

関連記事: 「紫色の「あざ」を主症状とするITP(特発性血小板減少性紫斑病)とは? 女性では月経過多が起こる場合も」

上記に説明したアナフィラキシーと紫斑を疑う場合は、深夜や休日を問わずに緊急受診してください。

上記ほどではないが早めに受診すべき発疹

高熱と発疹

発疹に高熱(38.5度以上)が伴う場合(アナフィラキシーと紫斑に比べて緊急性は下がるものの)早めの受診が望ましいといえます。

特に注意が必要な病気は麻しん(はしか)であり、感染が広がる可能性が高く危険です。医療機関で早期に麻しんをみつけることは、子ども自身の経過を見るためにも、また社会や周囲の人々にも感染を広げないという予防的観点からも、非常に重要です。周囲での流行状況や、麻しん風しんワクチンの予防接種をいつ打ったかなども教えてください。また、高熱と発疹で病院を受診する際は、できる限り前もって病院にそのことを伝えてください。(隔離室での診察が望ましいためです)

痛みを伴う発疹

帯状疱疹(たいじょうほうしん)の恐れがあります。特徴としては、皮膚の一部に集中して水疱の集まりや赤い発疹ができ、痛みや痒みを伴います。帯状疱疹は治癒した後も痛みの残ることがあり、注意が必要です。子どもの場合、帯状疱疹による痛み自体が少ないといわれますが、早期に治療したほうが後々の痛みを残しにくいため、早めに病院を受診しましょう。

関連記事: 「水痘・帯状疱疹とは―予防接種が定期接種に」

発疹が出たとき他に何をチェックすべき?

  1. 元気があるか、ぐったりしていないか
  2. 呼吸は正しくできているか
  3. 発疹は全身に出ているか、一部のみか
    発疹は時間とともに広がることがあるので、必ず服を脱がせて観察しましょう。
  4. 発熱しているか
    診断をつけるためには、特に熱と発疹の順番も重要です。たとえば、麻しんの場合は最初 に発熱がみられ、発疹は発熱後3~4日遅れて生じます。一方、風しんの場合は熱と発疹が同時に現れます。
  5. かゆみはあるか
  6. 発疹の形・場所膿は出ているか
  7. 皮膚がただれていないか
  8. 目や唇は赤くないか発疹がどこから出始めたか
    病気の種類によって発疹が最初に出る部分は異なります。どこから出始め、どこまで広がるのかをみておきましょう。

発疹で上記以外の重大な病気は何があるのか?

この他、下記のような症状がみられる場合は重大な病気の可能性を考えます。

  1. 粘膜病変を伴った発疹:重症薬疹など
    粘膜病変とは、皮膚の「粘膜」にも症状がでたものです。具体的には、口の中のただれ、肛門のびらん、潰瘍、目まわりのただれなどのがあります。粘膜病変を伴った発疹がある時は、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)などの重症な薬疹(薬に対するアレルギー反応)の可能性も考えます。粘膜病変があれば、早期受診をしてください。

    関連記事: 「スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群―重症薬疹とは」
  2. 熱と不定形紅斑:川崎病
  3. やけどのような発疹:ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
  4. 全身に広がる紫斑
    とても稀ですが、ウォーターハウス・フリードリヒセン症候群(髄膜炎菌の重症感染症)という病気の可能性があります。全身に紫斑が出るのが特徴です。紫斑に加え、発熱も起こります。
  5. 原因不明な紫斑ややけど跡
    また、原因不明あるいは非典型的な紫斑、やけどの跡がみられる場合は虐待の可能性を考えなければなりません。このとき最も重要なのは「誰がやったのか」よりも、虐待の可能性があるならば「子どもを守る手段を考える」(例えば入院して経過観察するなど)必要があることです。

*詳細は記事3『子どもの発疹は緊急受診が必要な病気のサイン? 感染症やアレルギーの可能性もある』もご覧ください

発疹ができて様子をみてよいのはどんなとき?

発疹以外に熱、息苦しさ、嘔吐や腹痛などの症状がなく、かつ子どもが元気ならば緊急性は低いと考えてよいでしょう。また、時間が経っても発疹が増えてこない・広がってこない場合も、夜間に慌てて病院を受診する必要はありません。ただし平日の診療時間には、一度かかりつけ医を受診してください。

発疹での受診のときはこれを伝えて!周囲の流行やワクチン接種歴が重要

受診前、病院側にはあらかじめ「子どもに発疹がある」ことを伝えておきましょう。発疹は、他の人に容易にうつるタイプの感染症(特に、空気感染する水痘(みずぼうそう)、麻しん(はしか)が原因で生じることがあります。ほかの患者さんに感染しないためにも、できる限り事前に伝えることが大事です。

その他、下記の事柄を併せて医師に伝えると診断がスムーズに進みます。

・周囲で流行っている感染症の有無

・(熱がある場合)熱と発疹が出てくるタイミング

・「いつから」「どこから」ブツブツが出てきたか

・発疹が出る前に、いつもと違うことをしたか(例:薬を飲んだ・外で草木にさわった)

・今まで薬や食べものでアレルギーを起こしたことがあるか

など

また、何らかの感染症を疑うときは、ワクチンの接種歴が必要になるので、受診の際には母子手帳を持参しましょう。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。